1945年8月6日午前8時15分に、広島の地に原子爆弾が投下されて、今日で76年が経過しました。
今朝、テレビ等で『広島平和記念式典』の様子を見守っておられた方々もいらっしゃることと思います。
人類史上初となる戦争での核攻撃がこの日本で行われました。
それにより、広島の地では56万人もの人々が被爆したとされており、
また、十数万人もの尊い命が失われました。
3日後の8月9日には、長崎市に2発目の原爆が投下され、約7万4000人が死亡しました。
いずれも、市内に住んでいた方々のおよそ3分の1の人数に相当します。
たった2発の原子爆弾で、20万人もの人々が帰らぬ人となったのです。
核兵器の戦争での使用は、76年前に我々の国に落とされたこれら2発のみ。
第二次世界大戦以降、核戦争を引き起こしかねない危機的状況は何度か迎えつつも、
核兵器の使用には至っていません。つまり、日本が世界で唯一の戦争被爆国ということになります。
さて、今年の1月に、世界では「核兵器禁止条約」が発行されました。
これは、将来的な核兵器の全廃へ向けた、核兵器を包括的に法的禁止とする初めての国際条約です。
昨年の記事にも書かせていただきましたが、
この「核兵器禁止条約」は、2017年に国連総会の場で賛成多数にて採択されたものです。
核兵器の開発や保有を含むあらゆる活動を、いかなる場合にも禁止しています。
ただし、この条約には「核保有国」も参加することができるため、アメリカなどの国々も参加可能です。
2021年8月の時点で、同条約に署名している国が「86か国・地域」、
批准(署名した条約を国で最終確認し国際的に宣言すること)した国が「55か国・地域」です。
その中に、核保有国は含まれていません。
また、アメリカの「核の傘」に守られている国々も同様に不参加となっています。
では、唯一の戦争被爆国である日本は...? 実は日本も、未だに参加していません。
野党各党は条約への参加を求めていますが、与党は依然として「反対」の立場を示しています。
今朝の『広島平和記念式典』において、広島市長の松井氏は、
「各国為政者がこの条約を支持し、それに基づき、
核の脅威のない持続可能な社会の実現を目指すべきだ」、
「一刻も早く条約の締約国となるとともに、第1回締約国会議に参加を」と述べました。
けれども一方で、菅義偉首相は、スピーチの中で「核兵器禁止条約」には一切言及しませんでした。
2017年以降、安倍前首相の時から一貫して同条約には言及しない姿勢を貫いているのですが、
これは、日本国民、特に「核なき世界」の実現を願い続ける被爆者の方々に対して不誠実だと思います。
それでも、昨日広島市内で行われた、同条約に対する日本の対応について与野党の党首らが議論する討論会において、来年1月に批准国が集まって開く最初の締約国会議に「オブザーバー」として参加するよう政府に求める声が与野党から相次いだことは、核兵器禁止条約参加への第一歩になるのではないかと、個人的には肯定的に受け止めています。
新約聖書のある著者は、困難な時代の中にあって次のような言葉を残しました。
「知恵のない者ではなく、知恵のある者として、
どのように歩んでいるか、よく注意しなさい。
時をよく用いなさい。今は悪い時代だからです。
だから、愚かにならず、主の御心が何であるかを悟りなさい。」
(新約聖書 エフェソの信徒への手紙 5章15~17節より)
また、主なる神の御心について、いにしえの詩人は次のようにうたいました。
「悪から離れ、善を行え。平和を求め、これを追え。
主の目は正しき人に注がれ、その耳は彼らの叫びを聞く。」
(旧約聖書 詩編 34編15~16節)
同じ個所でこの詩人は、
「正しき人」とは「命を慕い、日々を愛して恵みにまみえる人」だと述べています(13節)。
命を大切にし、一日一日を大事に生き、
常に与えられている恵みに感謝する人たちの世界、
それが、「平和な世界」なのではないでしょうか。
依然として世界は、核の脅威の中にあり、先の戦争の記憶は少しずつ失われつつあり、
核兵器禁止条約に参加しない強固な姿勢を貫いている国々もみられます。
けれども、その裏側では、多くの国々が核兵器禁止条約に署名・批准しており、
各地では反戦を求める人々の声が響き渡り、世界平和を願う人々が日々増えています。
実は、今は「悪い時代」でありながらも、
多くの「知恵ある者」たちの働きによって
少しずつ少しずつ「善い時代」に近づいているのかもしれません。
かつての過ちを真摯に見つめ、反省し、それらを今改善していき、
すべての人たちが平和に生きられる社会を、皆で実現しましょう。
私たちの願いを神が聞いてくださるように、神の思いに私たちも心を向けましょう。
(伝道師のほう)
核なき世界を願って76年
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