受難節 と 3.11

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先週の水曜日から、キリスト教の暦では「受難節」という期間に入りました。

受難節というのは、他にも教派によって「四旬節」や「大斎節」など様々な呼び方があるのですが、今回は「受難節」という名称を使っておこうと思います。

「イースター」(イエス・キリストが死から復活されたことをお祝いする日)までの40余日、教会では、イエスの苦しみと十字架上での死を覚えつつ、悔い改めの心をもって過ごしていくこととなります。

受難節の期間は「紫色」がテーマカラーとなります。「紫」というのは、キリスト教では、高貴な色であるとともに、"回心"や"悔い改め"を表す色としても理解されており、この時期には祭服や会堂の飾りなど様々なところに用いられます。本学のチャペルの講壇掛けも、ご覧のとおり「紫」に変えておきました。

紫の講壇かけ.jpg

無実であったイエスが十字架上で処刑されたのは、人間の心の弱さの象徴であった...。キリスト教という宗教が「十字架」というものをシンボルとして掲げているのは、イエスの死と復活を覚えるのと同時に、人間と言う存在がいかに小さく弱いかを表しているとも言えるのかもしれません。悔い改めの期間である「受難節」の日々を、自らを省みる時として過ごせますように。


ところで、今日は3月11日。2011年の今日、この日本を「東日本大震災」という未曽有の出来事が襲いました。今日で8年が経過したことになります。

地震によって引き起こされた津波は、東北の街を次々に飲み込んでいき、車や建物と共に、たくさんの尊い命をさらっていきました。

避難生活を余儀なくされている方々は、昨年よりも2万人以上減り、5万4000人と発表されています。けれどもこれは、自主避難者の人数を計算に含めないようになったからであり、正確な数字とは言えません。

原子力発電所の事故により、東北の地は放射能によって汚染され、人が住めない環境に変えられました。現在、避難生活者の人々を中心にして、国と電力会社を相手取り損害賠償を求めて集団訴訟が行われています。なお、放射線量が高い地域に住んでいた人々の半数は、もう故郷には戻らない(戻りたくても戻れない)と考えているそうです。

いよいよ来年に開催される予定の「東京オリンピック」。これは元々、承知の段階から「復興五輪」という大きなテーマを掲げ、世界に声高に呼びかけたはずでした。けれども、今となっては「復興五輪」という言葉を見聞きすることはほとんどなくなってしまいました。東北の復興とオリンピックの開催は、いつから別々のものとして考えられるようになってしまったんでしょうか。「東京オリンピック」とは、一体何のために開催されるのでしょうか...。

地震や津波は、人間の力ではどうすることもできません。
けれども、その後に起こった「原発事故」などの"人災"は、(上記の集団訴訟で判決が下されているように)あらかじめ予知できたはずです。また、あのような恐ろしい事故を起こしてしまったにもかかわらず、各地の原子力発電所は、何事もなかったかのように次々に再稼働されていっています(2018年度には新たに5基が再稼働され、現在9基が運転を再開しています)。

「東日本大震災」という出来事自体、時間の経過と、また毎年のように起こる各地の災害により、徐々に人々の記憶から忘れ去られようとしています。けれども、避難生活者の方々や、この先何十年何百年も収束することがないであろう放射能汚染、東北の復興を後回しにしている国の現状を想うとき、「東日本大震災」は、今も継続して起こり続けている出来事であると言わざるを得ません。

回心と悔い改めの期間である「受難節」、そして9回目の3.11を迎えている今日この日、いま一度、人間の力の弱さを自覚しつつ、本当に神さまの御目に適う生き方を目指して、歩みを進めていく決意を新たにしたいと願います。

私たち一人一人の心の目が開かれますように。
そして何よりも、被災された人々、避難生活をされている人々、復興や支援のために力を注いでおられる人々の平安を心からお祈りしております。

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このページは、キリスト教センターが2019年3月11日 10:50に書いたブログ記事です。

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