<06>図書館スタッフ: 2011年9月アーカイブ
『ふがいない僕は空を見た』 窪美澄著
普通に高校へ通う男子と、コミケで知り合ったコスプレ好き主婦との不倫を中心に、
その周辺の人たちが主人公となり5つの物語がすすむ連作短編集。
「女による女のためのR-18文学作品」なので、はじめ少々過激な場面も出てくるが、
一冊を読み通した感想は、ほろ苦い青春の物語だ。
持って生まれた人それぞれのどうしようもない"業"、
思春期のもんもんとした気持ち、やるせない想い、情熱、
冷めた気持ち、温もり、などがこの一冊にいっぺんに詰まっている。
そして、助産婦さんの母親、不妊治療をしている不倫相手の主婦、
妊婦の担任教師などが登場し、「性」だけじゃなくて「生」も
物語の中で絡んでくるのがポイントとなっているように思う。
<名古屋のスタッフ 春>
三上延
アスキー・メディアワークス、2011
(本書は図書館で所蔵していません。ご希望の方は、購入リクエストを)
三上延『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』(以下、『ビブリア古書堂』)は、アスキー・メディアワークスより、2011年3月に発行されたいわゆるライトノベルに属する小説である。ライトノベルとは、中高生を読者対象とした小説群を指す。昔のジュヴナイルとかジュニア小説というジャンルからの派生系と言えようか。
さて、この世にある本1冊ごとに、すくなくとも3つ謎が潜んでいる、と私は考える。まず、その本を書いた著者に、次にその本を発行した出版社に、3つ目はその本を読んだ読者に。『ビブリア古書堂』は、その3つめの謎を、北鎌倉のビブリア古書堂店主・栞子(しおりこ)とその店員五浦大輔(ごうらだいすけ)が解決する小説である。作品には、実在する本4点が登場する。そしてその本を所有すること自体が謎をはらみ、事件が起きる。
栞子は、その余りにもシャイな性格のために人と会話ができないが、なぜか本の話になると雄弁になる。一方、店員の五浦は、ある出来事から活字恐怖症におちいり、本が読めなくなってしまった23歳の元フリーターである。五浦が、北鎌倉のビブリア古書堂に勤めるきっかけになったのが夏目漱石(1867~1916)の『それから』。昭和31年刊行の同書に漱石のサインらしい書き込みがあり、そこから栞子の推理がはじまる。
つづいて小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』をあつかう第二話では恋をする身勝手な女子高校生が、クジミン『論理学入門』の第三話では過去のある男が、第四話では栞子自身が太宰治の『晩年』に絡まり、事件が発生する。
古書通しか知らないだろう「せどり屋」が登場したり、他の文庫にはないのに新潮文庫だけに栞ひもがついていることを知らされたり、ある男の過去を調べるために新聞記事データベースをつかったりと、図書館的な観点から見ても、楽しく読むことができる。
作者・三上延は、なぜこの小説を書いたのだろう。あとがきを読むと、作者の本好きがうかがわれる。しかし、マーケティング的に見た場合、ライトノベルの読者層に、夏目漱石や太宰治が受けるだろうか。もちろん、それらを読んでいなくても、『ビブリア古書堂』をおもしろく読むことはできる。おそらくは、ライトノベルの一般的な読者にとっては、漱石も小山清もクジミンも太宰も、アンデルセンさえ「謎」のひとつなのだろう。いや、ひょっとすると、若い読者層のなかの一部、相当な「本」好きな読者に向けたメッセージなのかもしれない。
作品の随所に登場人物にまつわる秘密がちりばめられていて、シリーズ化の意図が感じられる。実際、2011年10月には、続刊が発行されるとのことだ。どうも、コアな読者が栞子さんにとりつかれたらしい。この先、作者は、現在の読者とともに作品を成長させようとしているのかもしれない。
続編のさらにその次が書かれるには、新しいバイプレーヤーが必要になる。栞子のキャラクターが花開くような、新しい個性を宿した人物が注入されれば、魅力的なシリーズになりそうな予感さえする。もし、そのような物語を書いてくださるのなら、ネタを提供しますが、三上様。
(瀬戸のスタッフ りんたろう)
こんにちは。りゃまです。
暑かった夏も終わり、季節の変わり目となりました。
こんな時は体調を崩しやすく、気を付けなければなりませんね。
そんな時オススメしたいのが、
日常生活で気軽に実践できる「中医学」の「養生」というものです。
「中医学」とは、古くから中国に伝わる医学のことで
東洋医学または漢方とも呼ばれます。
また「養生」とは、まさに文字通りの意味ですが
自分の体や 季節の特徴をよく理解し、それに見合った生活や食事をすることで
病気を未然に防いだり、症状をやわらげていくものです。
おおまかに言うと、
「心・肝・脾・肺・腎」など、体にあらわれてくる諸症状を
「暑・寒・燥・湿・風・熱・緩・緊」などの状態に分け、
それらのバランスを整えることで健康がもたらされるという考え方です。
調べていくと、自分の体質や弱いところが分かってきて、
おのずと対処法も見つかっていき大変便利です。
案外、体やその仕組みについて分かっていないことが多くて
自分のことなのに・・・と反省しきりです。
みなさんも、この機会にセルフチェックしてみませんか?
ここでオススメしたい本をご紹介します。
「漢方の目で健康を考える」 「実用中医薬膳学」
中医学の基本概念から日々の養生法まで、系統立てて書かれています。
この中で、私が最も驚かされたのは、
「旬のものを旬に食べるのがよい」という意味の深さです。
これまでは、「そうするのが1番おいしいからだろう」
ぐらいにしか思っていませんでした。
ところが、そればかりではないのです。
例えば、夏野菜。
トマト、キュウリにスイカ、ナス・・・
確かに、暑い夏にはとてもおいしい食べ物ですね。
けれども、おいしいだけではなく、
なんと体を冷やす効果まであるのです!
これで、人は、自然とクールダウンできているのですね。
ですから、逆に、冷え症や胃腸の弱い方々にとっては、
取りすぎに気を付けなければならない食材とも言える訳です。
季節に合わせた効能を持つ「旬のもの」。
自然って、不思議ですね。
せっかくなので、秋に向けての養生法を書いておきます。
これからおいしくなる「栗」や「きのこ」もチャートインしていますよ!
「シナモン」入りのあたたかい紅茶や、カフェオレなども飲みたくなる季節ですね。
自分の体に合わせて、ぜひ参考にしてみて下さい。
心も体も健康に、ステキな秋をむかえましょう!!
【秋に向けての養生法】
◇夏に消耗した体力を癒し、冬に向けて体力をつけていくこと
・涼しくなるので質のよい睡眠を取る。
・軽く体を動かし、体力を養う。
(適度な運動は、ストレス発散にもなり、一石二鳥)
◇食養
・甘味のある食材は、夏場に弱くなった脾胃を補い健やかに保つ
(山芋、じゃがいも、かぼちゃ、きのこ類、
湯葉や豆腐、卵、太刀魚、ごま、ぶどう、栗)
・酸味には「収れん」作用があり、汗や下痢などを抑える
(梅干、あんず、ざくろ、酢、梅酒、あんず酒)
・「体を温める」効果のある食材で、冷えを解消する
(良質の鶏肉、豚肉(モモ肉など赤身のある部位)、鮭、
人参、にんにく、もち米、シナモン)
(瀬戸のスタッフ りゃま)
去年、平城遷都1300年でにぎわう奈良へ行ってきました。
とても楽しかったので奈良時代に興味をもち、万葉集を手に取るようになりました。
万葉集ってとても素朴です。
百人一首などの後世の歌と比べて技巧が少ないといいますか、ゴロが悪いといいますか
表現方法も歌の内容もどちらかというと直截的でわかりやすいです。
我が背子を 大和へ遣ると さ夜ふけて 暁露に 我が立ち濡れし
・・・あの人を山跡に帰し見送ろうとして夜も更けて暁の露に私は立ち濡れたことよ
この歌、恋愛の歌かなって思いませんか?
でも、恋愛の歌じゃないんです。
弟を思って姉が詠んだ歌なんです。とても情け深いですよね。
素朴で、情け深く、季節の移ろいに敏感で・・・なんだか奈良出身の友人を思い出してしまいます。
やっぱり奈良時代から続く環境が彼女のような素敵な人を育てるのでしょうか。
ちなみに彼女は職場恋愛中。
万葉集は歌の一つひとつに番号が付いているので
自分の気持ちに合った歌を探し出して「万葉集 ○○番」と書いた紙をそっとカレに渡したのかな?
なんて妄想してみたりします。
(実際はもっと現実的な方法でした)
また万葉集の通し番号は、みんなの前では言い難いけれど友人には伝えたいという時にも便利です。
あの人臭い・・・というときは「3842番」
この人信用しちゃダメというときは「3836番」と、
こんな感じで使います。
他にもいろいろな歌があるので、勉強の合間に万葉集を眺めてみてください。
通し番号を使った内緒話だけでなく、何気ない会話に万葉集を織り交ぜられたら素敵ですね。
(瀬戸のスタッフ はち)
基本的に、運動してカラダを動かしたり、肉より魚、魚より野菜と食に気を遣ったりなどどうやら「カラダにいい」事が大好きな私( 笑)
学生の頃から、友達がファッション誌に夢中になっているのに、私は「健康本」を愛読していたりと気が付いた頃から「健康志向」でした。
恥ずかしながら、実行し継続していることは数少ないのですが「カラダにいい」と思う本に出会うと自然と手に取ってしまいます。
☆☆そしてまさにこの本も☆☆
毎日の食事でスッキリ「カラダ」の症状が解消される!?なんて一石二鳥じゃぁないですか??その上、楽しい漫画でわかりやすく解説してくれます。
残暑の厳しいこの季節。
「疲れに効く食べものとレシピ」なんてオススメですよ。
(名古屋のスタッフ りん)
みなさん、こんにちは。
だいぶ気温も下がってきて、過ごしやすい時期になりましたね。
こんな心地良い季節がずっと続けばいいのにーっ!! と
寒いのが大嫌いな私は思うわけです。 ^_^;
さて今回は、定番の推理小説の紹介でも。
【アガサ・クリスティ】は、みなさんご存じですよね?
登場する有名な探偵といえば、ポアロ & マープル。
だけど私が紹介したい小説には、この探偵達は出てきません。
が、、しかし、、、
有名どころの探偵が出てこなくても、
内容を全く知らなくても、
きっとタイトルだけは1度は聞いたことがあるんじゃないか、という
『そして誰もいなくなった』です。
実際私も、長ーーーい間タイトルだけしか知らない状態でした。
で、ちょっとクリスティを掻い摘んで読みだしたときに、これも読んでみたんです。
その場(密室状態)に居合わせた登場人物全員が、次々と誰かに殺されてしまって、
タイトル通り、誰もいなくなってしまうんですよ。
おかしいですよね?全員が殺されているって。最後の人は誰にどうやって殺された???
犯人は外部の人間だったとか、どうにか逃げ出したとか、勿論そんなんじゃーないですよ。
「あー、なるほど。こういうオチだったのね~。」といたく感心した覚えがあります。
これから食欲の・・・じゃなくて、読書の秋です!!
本でも読んでみたいけど、何を読もうかな~ なんてことを考え中のアナタ!
こんな「タイトルだけ知ってる本」とか「内容をザックリとしか知らない本」とかを
手に取ってみるのはいかがでしょうか?
(瀬戸のスタッフ : かりんとう)
「シュガーな俺」
平山瑞穂/著 新潮社
「糖尿病なんて、私がなるわけないじゃない。
だって、そんなにおデブちゃんぢゃないし~~」
という方。
細くたって、
甘いもの好きじゃなくたって、
健康的な生活を心がけていたって、
なるときゃなるんです、糖尿病。
33歳のサラリーマン・片瀬喬一が突然見舞われた
激ヤセ、喉の渇き、倦怠感の原因はなんと糖尿病!?
著者の実体験をもとに書かれた糖尿病闘病小説。
この1冊で糖尿病患者の生活の全てがわかります。
いつか糖尿病を発症してしまうかもしれない日に備えて、
この国民病について楽しく学んでみませんか。
(栞)
ファンタジーの世界では、いわゆる"選ばれた子ども"が、望むと望まざるとにかかわらず
使命、あるいは試練をかかえて生きていくことを余儀なくされる。
特殊な力を与えられて。
舞台は平安末期の日本。
安定していた貴族の世の中が崩れだし、かつてない戦乱の時代が始まろうとしている頃。
武士として生きることに挫折した孤独な少年の笛の音が、たぐいまれな才能を持つ
少女の舞と合わさった時に、人の生死や未来をも変えてしまう不思議な力が生まれた。
その力を利用しようと、時の権力者、後白河上皇が二人に近づき・・・。
主人公の少年と少女がどんどん惹かれあい、ともに生きる道を探し求める一途な恋にも
引き込まれるが、少年が出会った人々の話を聞き、反発したり、迷ったり、葛藤したり
しながら、ひとつずつ自分で答えを見つけていく過程がとても好きだ。
ああ、ちゃんと気がついたね、って言ってあげたい気持ちになる。
そして、登場するキャラクターの中で一番のお気に入りはカラスの「鳥彦王」。
(鳥彦王好きにはこの結末はちょっと切なかったりするかも。)
きっと誰でも、好きなキャラクターや好きな台詞が、必ず見つかると思う。
と、いうところで、最後に書影を貼ろうとして衝撃を受けた。
これ。
なんというラノベ仕様。うーむ、なかなか手に取るにはハードル高い・・・。
確か自分が読んだときはこんなふうではなかったはずだが・・・。
そうそう、ハードカバー版はこれ。こっちで読んだのだ。これなら全然抵抗ないのに。
(萌え系の表紙に惹かれて読んだのではない、という主張。というか言い訳。)
いいや、たとえキラキラな表紙でも、勇気を出して(?)読んでみて、気に入ったら同じ著者の
「勾玉三部作」を是非。
さらに時代をさかのぼった古事記の時代の日本が舞台の『空色勾玉』から始まる
こちらも素敵な歴史ファンタジー。超おすすめ。
(瀬戸のスタッフ くり)