スタッフ: 2022年7月アーカイブ
今回は、1999年に起きた「東海村臨界事故」についての本を紹介します。
核燃料加工施設で行われたずさんな作業により、
ウラン溶液が臨界に達し「裸の原子炉」が出現してしまいます。
ここで発生した大量の放射線を浴びた作業員の方は、
放射線により「生命の設計図」である染色体が破壊され、
徐々に体の機能を失っていきます。
それでも懸命に治療を続けた医療スタッフを追った記録です。
目に見えず匂いもなく、触れて痛みもない放射線。
「放射線(放射能)は恐い」と思っていても、
具体的に何がどのように恐いのか知らない人が多いと思います。
ぜひ一度手に取ってみてください。
(なごやの図書館スタッフ 金木犀)
こんにちは、もくもくです。
緑がきれいな季節になってきましたね。今回はそんな「緑」、植物についてのお話です。
植物は人が近づいて来るのを「見ている」。さらに自分の位置、重力の方向も「知り」
葉がちぎられたことを「記憶する」という。
勿論、人のそれとは異なりますが、驚くほど発達を遂げた植物の感覚を、
研究結果を踏まえて本書は詳しく解説してくれます。
動物は暮らす環境を、自ら選ぶことができます。
植物はより良い環境に移るということが出来ないぶん、
生き残るために、変化する周囲の状況に敏感になり
複雑な感覚機能と調整機能を進化させる必要がありました。
感覚というと、ついファンタジーのように植物が、痛みや感情を持つように
考えてしまいがちですが、「植物に脳はなく、苦しむこともない」と遺伝学者であり
植物学の教授でもある著者は擬人化にクギを刺します。
植物と私たちは、どう見ても違う生き物だけど、一部に同じ遺伝子があるのだそうです。
20億年前に枝分かれし、それぞれが長い時間をかけて進化したという
はるか遠い「親戚」について考えるのも、面白いのではないでしょうか。
(名古屋の図書館スタッフ:もくもく)
スタッフさんにお勧めされて読んでみたくなった本です。
『夏の庭』
小学生の男の子たち3人組の夏の出来事
初めて葬式に行った子
初めて"死体"を見たその子の話に
人が死ぬってどういうことだろう?
お化けって本当にいるのだろうか。
誰もがいつかは死ぬということはわかっていてもそれがどういうことなのか。
人が死ぬところを見てみたい
三人は、もすぐ死にそうなおじいさんを観察することに。
その人の最後を見てやるんだ
そんな思いで三人は、そんなに仲良しって感じではなかったと思うんだけど
その夏、三人は、協力してこの見張り計画を実行するのです。
ある日の新聞記事を見ながら、主人公(この物語を書いている設定)は
「まるで同じ日が永遠に続くみたい」という感想を書いています。
確かに、明日も同じようにやってくる
そんなつもりで生きている人は多いと思います。
人は生まれたら、余命のカウントはスタートするのです。
死に向かって生きています。
わかっているのに、明日は生きていると信じている。
人間ってある意味、楽天的。
だからこそ、死に向かっても生きていけるのかもしれません。
そこに真の希望を見つけることができる人は幸いです。
さてこの子たちは、この夏の計画、課題を終えるころ
死は彼らにとってどんなものになっているでしょうか。
途中、小学生にとってはどぎつい話も聞きますが、そのことによっても
死を理解すること、そして
いのちの大切さを考える良い体験になったのではないかと思います。
子供にも大人にもおすすめしたい本です。
紹介してくださった方に感謝して、
あたなにもおすすめしたいと思います。
(図書館スタッフ:小豆)
2019年第11回日経小説大賞を受賞して作家デビューした湊ナオ。
名古屋の某大学出身ということで親近感を覚えて手に取った受賞作を紹介します。
五輪開催で沸き立つ東京を舞台に設計事務所で働く弟と、型破りな芸術家の兄が織りなす物語。
故郷の名古屋の給水塔の見える家での日々も印象的に描かれています。
『東京普請日和』
全くタイプの違う二人の間に流れる微かな緊張感。
結構ドロドロした話になりそうな出来事もさらっと描かれ、不思議と心が温かくなる心地よさを感じました。
小説が書かれた時点とは異なる開催となった五輪。
コロナなど思いもよらなかった世界に思いを馳せます。
読んだ後、給水塔の見える道を通るたびにこの物語が浮かぶようになりました。
【図書館スタッフ:フエルトうさぎ】
『レ・ミゼラブル』で有名なフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴー。
子どもの頃、小学生向けに書かれた『ああ無情』を読んで感動し、以後本が好きになりました。
私の中では読書経験のはじめの一歩として忘れられない作家です。
そのユーゴーが1829年に書いた『死刑囚最後の日』。
死刑の判決を受けてから断頭台に立たされる最後の瞬間までの、
一人の男の苦悶を一人称で語っています。
当初発表されたときは無名作家の作品として名を伏せ、
その後1832年にユーゴー作と公表する長い「序」が発表されました。
この序で死刑制度廃止を訴えています。当時死刑は大勢の人々の前での公開処刑。
断頭台の切れ味が悪く悶絶する場面などが書かれていて残酷な処刑の様子が目に浮かびます。
日本には今も死刑制度があります。
法学部の資料室には関連の本も数多ありますので、いろいろな角度から考えてみるのもおすすめです。
※ヴィクトル・ユーゴー『死刑囚最後の日』は青空文庫からすぐに読めます。タイトルをクリックしてください。
(図書館スタッフ:フエルトうさぎ)
こんにちは豆太です。
今回は皆様の先輩(名古屋学院大学卒)の房野史典さんの作品を紹介しますね。
お笑いコンビ「ブロードキャスト」のツッコミ担当でもあります。
13歳と書いてありますが、気にすることはありませんよ。
"本書は戦国時代の「戦」をわかりやすく説明した本です"なのでどんな年齢の方にでも
読んでいただける内容となっています。
現代語訳でかみくだいていて、年号を飛ばしながら、歴史用語にちょっぴり説明を入れた、
戦国ストーリーを知ってもらうための解説本。いわゆる戦国歴史入門書になっています。
内容も有名なものばかりで戦国時代を知らない方でも映画・テレビ等でなじみのある話が目白押しです。
読んでるうちにそうだったの、こんな話だったの、この人誰なの、と興味や疑問も湧いてくると思います。
なぜタイトルが「13歳」かという話ですが、作者曰く、13歳は中学校に入学する年齢です。
人間関係が広がり、これまでになかった喜び、戸惑い、達成感、挫折、様々な角度の感情を知ることになったと記憶しているそうです。
「もうスピードで自分を形成し始める時期」未来へ活かすため、"早めに"歴史の流れを知っておくのはいかが?この想いの象徴が「13歳」という数字になった現れたそうです。
そんな気持ちで登場人物はどんな人なのか。その人たちの間に何があったのか。そのあとどんな行動をとったのか。
そういうストーリーを知って初めて、歴史を学ぶ意味が出てくるような気がします。
歴史好きの人、嫌いな人、いろいろあると思いますが一度読んでみてはいかがでしょうか。
名古屋図書館スタッフ:豆太
「尾張名古屋は城でもつ」とはよく言われます。名古屋城と言えば金鯱とか本丸御殿
が有名ですが、皆さんも城内のことは、あまりご存知ないのではないでしょうか。
東門から入って通路を西に向かうと茶店の裏側(西側)に天守閣を望み、ひっそりと建つ
立札があり、その裏には石碑が建っております。石碑には「尾張勤王青松葉事件之遺跡」
碑とあります。そして立札には「慶応4年(1868年)1月、前藩主で、藩の実権を
握っていた徳川義勝が佐幕(江戸幕府存続)派の藩士 14人を処刑した。義勝は勤王
(倒幕)派で、家中の佐幕派を一掃したとされる事件で青松葉事件と呼ばれる」との石碑
に関わる説明が書かれています。
この青松葉事件を題材にした歴史小説が「冬の派閥」です。名古屋市出身の作家、
城山三郎が書いた作品です。
幕末の徳川幕府においては、最後の将軍、徳川慶喜の大政奉還とその後の蟄居、隠居
だけが、テビドラマ等にも取り上げられ、注目されがちです。しかし、日本中に巻き起
った明治維新の激震は尾張藩においても同様に起こり、尾張藩主 徳川義勝もまた大い
なる渦中にあったのです。彼は当初から勤王(尊王)の立場に立ち、徳川御三家という
もう一つの立場ながら、新政府側につき藩内をまとめて行きます。その過程でこの事件
は起きるのですが、尾張藩はこれによりこの地において、戊辰戦争のような大きな内戦
は起こさず、平和裏に維新を成し遂げます。しかしながら、藩主によるこの粛清事件は
藩内の空気を重くし、そして引きずり、藩主自身の功績もあまり語られることなく、新
しい時代を迎えても活気に欠け、藩全体として天下(中央)への人材の輩出も少ない一因
となったようです。
物語の後半では、徳川義勝の配慮により、佐幕派の人々が遥か北海道に渡り、新天地
での開拓に新たに取り組んでゆく姿が描かれています。
(しろとり図書館スタッフ 東空)
皆様こんにちは、勝山道です。
この記事を読んでくださっているそこのあなた、突然ですが「歴史」はお好きでしょうか。
当の私は、残念ながらあまり好きではありません。興味もなければ成績も悪かった、という印象ばかりが残っています。
なんの自慢にもなりませんが、私筋金入りの「歴史」アレルギー。意識的にか無意識的にか、あらゆるジャンルで「歴史」を避けまくっています。何がこうさせたのか今となっては分かりませんが、とにかく「歴史」が一切身につかないまま今日を迎えております。
しかし人間とは変わるもの。学校という環境から解き放たれるや否やその環境の尊さに気づくわけです......隣の芝生は青く見えるとも言います。
とはいえ今から学校に入りなおすのも不可能ではありませんが現実性が低く、個人的に勉強というのも難しい。興味のない分野ほど勉強すべきところですが、興味のない分野の勉強など苦行もいいところです。
そこでどうするかというと、本を読むのです。それも"きっちりかみ砕かれた分かりやすく楽しい本"を。
......ということで、"きっちりかみ砕かれた分かりやすく楽しい本"を本日は紹介させていただきます。
『面白すぎる!日本史の授業 : 超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす』
著者は河合敦と房野史典。後者はなんと名古屋学院大学卒業のお笑い芸人。そのうえ本まで出していらっしゃるのですから頭が下がります。
本著は「超現代語訳」とある題の通り、読みやすさを主眼として作られた日本史の歴史書となっています。歴史研究家の河合氏と歴史好き芸人の房野氏が掛け合うような形で、現代における日本史のあれやこれやを解説していく構成なのです。
いつのまにか鎌倉幕府が1192年じゃなくて1185年だと言われていると思ったら実はまた違うとかなんとか、歴史とは考証が進むにつれて変化していくものです。
......上記のような変化に代表されるように、歴史という堅そうな言葉と裏腹にアバウトなところのある歴史学に入っていくには実にうってつけな一冊ではないでしょうか。
そんな『面白すぎる!日本史の授業 : 超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす』はしろとり3階図書館に所蔵されております。
ちなみに、今回紹介した本以外でも『13歳のきみと、戦国時代の「戦」の話をしよう。』『超現代語訳戦国時代 : 笑って泣いてドラマチックに学ぶ』など房野氏の著書が所蔵されておりますので、ご興味のある方は是非併せてご利用ください。
それでは失礼いたします。
(しろとり図書館スタッフ:勝山道)