戦争のこと

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かなり前に、若者向けに作られた『アウシュビッツの手紙』(平和博物館を創る会編)という写真集を見ました。64ページの薄い本でした。

切られた髪の束がたくさん集められた写真と、髪の毛から毛布や服地が作られたという説明に衝撃を覚えました。囚人からは私物がすべて奪い取られ分類されて倉庫に納められたそうです。

たくさんの靴、たくさんのブラシ、たくさんの眼鏡...山のように積み上げられたそれらの日用品を見たときに、遺体が山積みになった写真よりも強い恐怖を感じました。

実感としてこれらの持ち主から奪い取られた日常が伝わってきたからでした。

この本では、「ドイツでは高校生達にこの博物館の展示を見せて戦争について考えさせている。日本ではどうなのか」との問いが投げかけられていました。

 

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最近、アウシュビッツでの収容体験のあるヴィクトール・E・フランクルが書いた『夜と霧』を読みました。ホロコーストの本では有名ですね。こちらは1977年に作者が新たに手を加えた新版です。

自身が精神分析学者であった作者が淡々とその体験を語り、とても冷静に人間を見つめています。

戦時下で人間がどれほど残酷になれるか、そしてそんな過酷な状況下でも人間の善意がなくなりはしないことを伝えています。

新版はイスラエル建国後4度の中東戦争を経験した後に書かれているため、作者の思いが垣間見られる内容の異同があるとのことでした。

 

また、ドイツでは戦後ナチズムについてどのように伝えているのかのレポートもあります。

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『ナショナリズムを陶冶する ドイツから日本への問い』

陶冶するという言葉が難しいのですが、陶器を造ることと鋳物を鋳ることから転じて、生まれついた性質や才能を鍛えて練り上げることだそうです。

ドイツではナチスの残された遺構を博物館にするなど若い世代にナチズムについて伝え続け、ナチス政権下での多くの市民の無抵抗に対する罪も問われるなど、社会全体で検証し教訓を生かそうとしていると感じました。

 

私が人体実験をしていた731部隊のことを知ったのは大人になってからでした。童話作家の松谷みよ子が戦争経験者から聞き取った『軍隊』には日本人の口から語られた戦時中の実話が集められています。日本は、戦争で原爆を落とされた被害者のような捉え方をしていましたが、そうではないことを知りました。

日本では先の戦争について次世代につないでいるのか疑問に感じています。

 

ウクライナの街があっという間に廃墟になっていく映像に心が痛んだ昨年。

平和のもろさを感じる今、戦争について少しだけ考えてみませんか?

 

※『アウシュビッツの手紙』(平和博物館を創る会編)、『軍隊 : 徴兵検査・新兵のころ・歩哨と幽霊・戦争の残酷』(松谷みよ子)は公共図書館で閲覧することができます。

【図書館スタッフ:フエルトうさぎ】

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