写楽女(しゃらくめ)
こんにちは豆太です。
今回は浮世絵にまつわる本を紹介します。
『写楽女』
タイトルの通り写楽ですが、今までは写楽を主人公に書かれた小説は数多くあります。
しかし本作品は写楽ではなく、お駒という女中の視点で物語が進みます。
寛政六年の春、日本橋通油町にある地本問屋の「耕書堂」は錦絵を求める客で賑わっていた。
女中として働くお駒はそんな店の様子を誇らしく思いながら、買い物に出ようとしたとき、
店の中に入って行く一人の男を見かける。その男は写楽と名ずけられた新しい絵師であった。
五月興行が始まると同時に、「耕書堂」の店頭に写楽の役者絵が並ぶと、江戸の町に衝撃が
走った。賛否入り混じる評判の中、店主の蔦谷重三郎に呼ばれたお駒は次の興行で出す写楽の
絵を手伝うこととなる。そしてあと二人 鉄蔵、余七も写楽工房に加わる。
しかし写楽の大判大首絵はその後の興行でもさっぱり売れず、和泉屋の豊国に負ける
こととなる。豊国はのちの喜多川歌麿である。
その工房の中での四人がそれぞれの葛藤を繰り広げながら時が過ぎ、
絵や戯作を描くことに人生を懸ける男たちの苦悩と挫折が訪れる事となる。
そしてその間の写楽に対するお駒の儚く愛しい日々が見事に表現され、
切なくつつましい写楽とお駒のお互いへの想いに強く胸を打たれる作品です。
共に天才写楽と才覚の違いを強く抱き、挫折して己の道を選んだ二人の素性は
鉄蔵が葛飾北斎になり『富嶽三十六景』を描き、富士山を書かせたら日の本一となる。
また余七も同様に戯作者として十返舎一九となり『東海道中膝栗毛』を書き開花します。
この小説は六章からなる短編で大変読みやすく、女性ならではのタッチで描かれています。
是非読んでみてください。
(名古屋図書館スッタフ:豆太)
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