名作の中の言葉遊び
ごきげんよう、スタッフのかえるまんじゅうです。
皆さんは、本や映画、ドラマなどで主題とは全然関係ないところが気になってしまったり、記憶に残っていたりすることはありませんか?
肝心のストーリーはさっぱり覚えていないのに、一つの台詞だけやけにはっきり覚えていたり、登場人物の些細な仕草が気になったり。
私にとっては、太宰治の『人間失格』の中のある言葉遊びがそうです。
こちらにそのルールを引用します。
「名詞には、すべて男性名詞、女性名詞、中性名詞などの別があるけれども、それと同時に、喜劇名詞、悲劇名詞の区別があって然るべきだ、たとえば、汽船と汽車はいずれも悲劇名詞で、市電とバスは、いずれも喜劇名詞、なぜそうなのか、それのわからぬ者は芸術を談ずるに足らん、喜劇に一個でも悲劇名詞をさしはさんでいる劇作家は、既にそれだけで落第、悲劇の場合もまた然り、といったようなわけなのでした。」(以上、作品本文より引用)
このあまりにも有名な作品を初めて読んで以来、主人公が友人と、この悲劇名詞・喜劇名詞のあてっこをする場面だけが妙に記憶に残っているのです。
あらすじさえもう一度読み返さないと紹介できないのに、この言葉遊びのルールだけは覚えています。
あらすじの紹介も無く、ごく一部分についての思い出語りだけで、作品の紹介としてはかなり邪道なものかもしれません。
もちろん学問や研究を目的とした時にはふさわしくない読み方ですが、
私自身は、これもひとつの読書体験として結構気に入っています。
読書とは、本と自分との一対一のやりとりを醍醐味とする行為です。
みなさんが、様々な作品との出会いを通じて自分だけの読書体験を得ることができますように。
※太宰治『人間失格』は青空文庫からすぐに読めます。タイトルをクリックしてください。
(なごやの図書館スタッフ かえるまんじゅう)
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