美しさとは何ぞや?
あなたにとって美しいものと言えば何でしょうか
東京タワーか金閣寺か、あるいはありのままの自然か、それとも美徳か、卓越された魂か...
美しさとは何ぞや?
戦前から戦後までの激動の時代を、作家として歩んだ坂口安吾は考えました
生きることは堕ちること、堕落することだ
と唱えたことで戦後日本社会に衝撃を与えた『堕落論』
この、以前紹介した坂口安吾のエッセイですが、
『堕落論』に表れている彼の思想は他の著書においても読み取ることができます
その中でも面白いのが『日本文化私観』
安吾が持つ日本の美感について語られていますが
そもそもこのエッセイを書こうと思った大きな理由があるのです
当時来日していたある外国人がいました
彼は日本の建築物や文化に触れた後、日本の美について日本文化私観というタイトルで本を書きました
それをみて安吾は思いました
これは真の美しさではない
この外国人のいう美は、実際私達の生活から遊離していて観念にすぎないと
安吾の持つ美観とは、
今現在生活していくのに本当に欠かせない、実際的なものこそ真の美しさがある
とのこと
つまり...
美しさのための美しいもの
なんてのは真の美ではないんです
安吾による比喩を使えば
「法隆寺よりは停車所を」です
法隆寺はたしかに美しいです
しかし多くの人は生活の中で法隆寺よりかは停車所を利用し、役に立てているはずです
停車場には美しさのかけらもありませんし
美を創ろうとしてつくったものではないですね
ただ生活の中で利用するだけの存在です
しかしそこに真の美しさがあるのです
安吾は例えば、小菅刑務所、ドライアイス工場、入り江に休んだ駆逐艦‥
なんかに惹かれ、美しさを見出します
それらには美しさのための美しさが無く、必要なものだけがあり、必要だから必要な分だけつくられたものですね
美というものの立場から付け加えた一本の柱も鋼鉄もなく、
ただ必要なものが必要な場所にあるだけ
真に必要なものは絶対につくられるし、無くなりません
美しさのためにあるような、言わば飾りにたいして本当に美しいといえようか?
美しさのための美しさ、をぶった切るこの一冊
我々が普段持つ美感に訴えかけてくる気がします
あなたにとって美しいものとは何ですか?
それは本当に真の美しさといえますか?
安吾の訴えを知って、もう一度考えてみてください
青空文庫からも出ているので、Kindleでも読める素敵なエッセイです
学生サポーター: あっきイ
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