絵本の棚 第2回
『きょだいな きょだいな』 『三びきのこぶた』 『したきりすずめ』
今回は3作品を紹介します。
まず、『きょだいな きょだいな』(長谷川摂子作 降矢なな絵 福音館書店)
子どもは大きな物が出てくれば喜びます。
普段の生活で使われている物が、それこそ「きょだい(巨大)」化して登場するのが、この絵本です。
「あったとさ、あったとさ」で始まるリズミカルなフレーズは、読んでいても心地よい響きを感じます。
最初に登場するのはピアノ。
「あったとさ あったとさ ひろい のっぱら どまんなか きょだいな ピアノが あったとさ」と、
広い野原に巨大なピアノが登場し、そこへ「こどもが100にん やってきて ピアノの うえで おにごっこ...」
たくさんの子どもたちがピアノで鬼ごっこしているのです。
このように「きょだいな」物が出てきて、奇想天外な展開になるところがおもしろいですね。
個人的には、「きょだいな桃」が登場してくるページがおもしろいですね。
巨大な桃をパカーンとわると、たくさんの桃太郎がぴょんぴょん飛び出すのです。その絵の圧巻なこと。
読み進めば進むほど、きっと子どもたちは、この世界に吸い込まれていくことでしょう。
そして、最後に巨大な扇風機が登場して、子どもたちは飛ばされてしまいますが...。
心温まる場面に、ほっとします。
次に授業で学生が読み聞かせをした作品を2つ紹介します。
『三びきの こぶた:イギリスの昔話』(瀬田貞二やく ; 山田三郎え 福音館書店)
おそらく題名を聞いて知らない人はいないのでは。しかし、知っていた話と少し違っているかもしれません。
それとも忘れてしまっているのかもしれません。
学生が絵本を選んだ理由として挙げたのは、三匹目の子ぶたを誘い出すために、
オオカミが誘惑する場面でした。オオカミの誘いに乗るまいと、機転を利かせるところ、
そのやりとりがおもしろかったとのことでした。確かにこの場面は忘れていたところかもしれないし、
リライトされた子ども向けの絵本では割愛されているかもしれませんね。
改めて読んでみてはいかがでしょうか。
『したきりすずめ』(広松由希子文 ; ささめやゆき絵 岩崎書店)
昔から語り継がれた昔話の定番のひとつですね。
それにしても、「舌を切る」から始まって、おじいさんが雀の宿に行き着くまでに、
さまざまな試練が与えられるのですが、おもしろおかしい反面、考えてみるとなんとも残酷な展開です。
そもそも昔話は基本的に残酷な話の展開が多いものです。
最後に教訓を与えるという説話の要素を考えると、しかも語りとなると、昔の人たちにとっては、
このくらいの表現になってしまうのかなと思います。
さて、『したきりすずめ』の教訓はと言えば、「欲張ることはいけないこと」。
今の人たちには耳の痛い話かもしれません。
さて、どちらも有名な昔話です。昔話は様々にリライトされているので、
これぞ正統派はなかなかありません。
「時代の要請」「社会情勢」「価値観」等によって昔話は変容していきます。
同じ昔話をいくつか並べて読んでみるのもいいでしょう。
「その昔話は、知っているからいいや」と通り過ぎないで、是非手にとって読んでみてください。
ちなみに「したきりすずめ」は図書館に数冊配架されていました。
【スポーツ健康学部 滝浪常雄】
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