島旅、しませんかー『原色日本島図鑑』
先日、長崎県の五島列島が舞台の旅番組を見ました。世界遺産をめざす教会群や旧跡、美しい風景とそこに暮らす人々を紹介するものでしたが、頭ヶ島天主堂が出てきたとき、昔訪ねた時のたくさんの思い出がよみがえってきて、しばしウン十年昔に戻り感慨にふけりました。そう、今はあまり行けませんが、島旅が大好きでした。
気候がよくなり、ふらーりとどこかに出かけたくなる季節ですね。街歩きも山歩きもいいですが、島旅にはなかなか捨てがたいものがあります。
このあたりでも、愛知県なら日間賀島、佐久島、篠島、三重県なら賢島、菅島、神島、答志島といったところがすぐに思い浮かびます。
佐久島はアートの島として有名で、おひるねハウスは以前CMで流れていました。1日、ゆるゆるとアートを探しながら歩くのもいいですね。
篠島でお勧めは今の季節。シラス漁の最盛期で、島のあちらこちらで天日干しをしています。島内でも食べることができますが、袋一杯の釜揚げシラスを買い、帰りの定期船の中で混じって茹で上げられているタコやエビの稚魚(魚?)を探して食べたのも懐かしい思い出です。今は選別の技術が進み、そういったものはほとんど混じっていないそうですが。
神島は鳥羽から行ったのですが、神島―神の島―伊勢神宮―三重県と勝手に思っていました。この島は三重県に属してはいますがいちばん近い陸地は渥美半島。それもハンパな近さではないのです。鳥羽市側の菅島よりもずっと伊良湖岬の方が近いのです。目の前に伊良湖岬が見えたとき、本当にマサカと思いました。
島に行くときは海を渡ります。この時のぱーっと胸のすくような解放感が好きです。反射する光、磯の香り、船の揺れ、それらが海の向こうの土地への期待を膨らませます。ま、それは海が凪いでいるときの話ですが、荒れていても、島に着いた時の『アーやれやれ、着いたー・・・』というのも解放感ではあります。
多くの場合、定期船に乗っているのはたいてい地元の人だから、着岸した途端にぱーっといなくなってしまう。この取り残され感がまたいい。そしてなにより、どの島にも独特の風が吹いています。地続きではないから吹く風、この風にあたるのが何とも言えずいい。
島への風に誘われた時、また、お出かけできないけど島の風に吹かれたい時、手に取ると一瞬にして島に浸れるのが『原色日本島図鑑』。佐渡島、八丈島、淡路島あるいは江の島といったおなじみのところから、住人1人、面積1㎢そこそこの島まで、日本の島443島が掲載されています。有人島は全部載っているとのこと。著者が全島訪ね歩いた島の紹介とともに、「原色」というだけあって、全部の島の写真が掲載されているのがすごいです。眺めるだけで日本島一周です。
島の歴史、名所旧跡、名物料理とかを拾い読みをしていくうちに、タラソテラピーなんていうのを見つけると、「あ、行ってみなくては」と、また別の楽しみも広がります。「人口:2人」とか、「アクセス:定期航路なし」というのを見ると想像が大きく膨らみ、行くことができなくても近くまでは行きたい!と思うのはヘンでしょうか。
「大島」という名前の島がたくさんある、というのも改めての発見です。そして、有人島の数は圧倒的に西日本に多い、ということもわかりました。海の島ばかりでなく、湖(琵琶湖)にも島あり。そして、産業の衰退で人口が0になった島が多いという現実も。そこからまた人が住むようになった島があるということも教えてくれます。
行ったことがない島が圧倒的に多いにもかかわらず、わずかな数の行ったことがある島の思い出が次々とあふれ出てきて、幸せな時間を過ごさせてくれるのもこの本の不思議な魅力です。
小さな島へ行くと住人でない人が歩いているだけで目立ちます。さっきあそこにいたでしょうとか、あなたたちが歩いているのをだれそれから聞いた、とよく言われました。帰りの船でよほど危ういと思われたのか、乗船場のオジサンが柔道大会に本土に行く中学生に私たちを託してくれたこともありました。それとなく注意をしてくれていたということでしょうか。ちょっと迷惑でしたが。
食べるものはたいていおいしかったし、感動する風景にもたくさん出会いました。半面、交通機関がなくて(あるいは島にはタクシーは1台で、出払っていたりして)半日ぼーっと海を眺めて港にいたことや、観光客はあまり来ないので(来るのは釣り人で、あとは来ても海水浴客というところも多い)地図がなく、放牧場に迷い込み牛に追いかけられて泣きそうになったことも。でも、それはそれでいい(今だから言えるけど)。
島旅に行くと本当にいい風にあたれます。しつこいようですが、この本を手に取るだけでそんな風に吹かれる気がします。まぶしいくらいの光の季節に、海を渡ってみませんか。
(瀬戸スタッフ パトリシア)
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