甘い香りのする本
『流しのしたの骨』江國 香織 著
小さい頃から、食べものの登場する本がすきだった。 『ぐりとぐら』のおっきなカステラ、 『エルマーのぼうけん』でワニのしっぽにくくりつけたたペロペロキャンディー、 『ふしぎなかぎばあさん』がカギっ子に作ってあげるフライパンいっぱいのハンバーグ・・・etc 食いしん坊のわたしは、ストーリーよりもおいしそうなご馳走のシーンがいつまでも心に残っている。 さて『流しのしたの骨』のお話。 ちょっと怖いようなタイトルだけど、ホラーでもなんでもない。 3姉妹と1人の弟がでてくる風変わりな家族の物語だ。 でもどこの家族も他人から見たら、ちょっとくらいおかしなところはあるわけで。 だから、こんな家族もあるんだろうなあと、少しだけ他の家庭を覗き見しているような気分になる。 個人的には、主人公の三女 こと子の恋人 深町直人がとても好きだ。 そしてこの小説には、なんといっても美味しそうな食べ物たちがたくさん登場する。 小川軒のレーズンウィッチ、洋菓子舗ウエストのドライケーキ、さゝまの最中、精養軒のマドレーヌ。 実在するお店のお菓子やメニューがでてくるので、 ますますどんなお店なのか、どんな味なのかが気になってしまう。 そこで東京旅行の際に、銀座の老舗フルーツパーラー千疋屋に行ってみた。 物語の中では、こと子と恋人と弟の律くんの3人で千疋屋に訪れる場面がでてくる。 3人は、それぞれ、3色ババロア、メロンパフェ、グレープゼリーを頼んでいた。 わたしが頼んだのはフルーツパフェ。 ああ、ここにあの小説の中の3人も来たんだなあと思うと感慨深くて(実際は来てはいないのだけど)、パフェの美味しさもひとしおだった。
(名古屋のスタッフ 春)
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