ドラマに登場する図書館
10月は、テレビ局にとって番組の改編期に当たる。この時期、各局は趣向を凝らしたドラマを用意し、視聴者にあの手この手でアピールしている。
テレビ朝日系列では、10月15日から『秘密』が始まった。第1話のストーリは――。妻と娘がバス事故に遭遇する。妻は命を落とし、高校生の娘は一命を取り留める。が、意識がもどった娘の体には母親の魂が宿っていた。娘(しかし心は妻)と夫との秘密の生活がはじまる。
娘役に志田未来(17)、母親役に石田ひかり(38)、夫は佐々木蔵之介(42)が演じる。
東野圭吾『秘密』 文藝春秋社、1998年
原作は、1998年に刊行された東野圭吾のロングセラー小説。1999年には広末涼子主演で映画化された。このとき、小学生だった娘の設定を高校生に変えており、今回のドラマもこの設定を踏襲している。2007年にはリュック・ベッソン制作でリメイクもされた。
小説はまさに東野作品の入門に最適と言える作品で、刊行当時に面白く読んだ記憶がある。すでに2回映画化されている作品であり、ドラマ制作者もそれなりの意気込みでとりくむだろう、と今回、第1回分を見た。
娘役は、高校生の姿のまま母親を演じるという難しい演技を要求される。演技派の志田未来ならそれができるかもしれないと期待したが、無残にも打ち砕かれた。娘のまま母親の人格を表現するという設定で、どのように視聴者を説得するかがドラマの肝になるはず。しかし、そこに力が感じられない。
ドラマの出来不出来はさておき、図書館で調べ物をするシーンがあった。夫役の佐々木蔵之介が、『二重人格』などのタイトルの図書を書架からとりだし、亡くしたはずの妻が娘の体を借りてこの世に現れた謎を調べようとする。図書館的には、「医中誌」か「メディカルオンライン」も使ってほしいところだが、さすがに無理というものだろう。
画面に登場した図書館は広く、巨大に見えた。「全国ロケ地ガイド」で調べると、その図書館は首都大学東京(旧東京都立大学)であることがわかった。
このデータベースでは、地域別にロケ地を調べることもでき、愛知県は67件が登録されている。たとえば、『官僚たちの夏』(TBS、2009)に登場した在米日本大使館は、豊橋市公会堂が使われている。
映画『秘密』では、"秘密"の解釈が原作と微妙に異なっており、論議を呼んだ。もしかしたらドラマ『秘密』では、原作にも映画にもない新しい"秘密"が用意されているかもしれない。残念ながら、映画『秘密』のDVDは図書館にありません。興味がある方は、原作を読んでからドラマのつづきをどうぞ。
(りんたろう)
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