<06>図書館スタッフ: 2012年10月アーカイブ
『ハムレット』 ウィリアム・シェークスピア/著
10月29日(月)の中日新聞夕刊「紙つぶて」、読んでみましたか?
『ハムレット』について面白い記事が掲載されています。
「 いったいどの季節に設定されているのか?? 」
読めば寒い季節だということは伝わってきていたので、
ただ単純に冬だろう、とずっと思っていました。
が!そんなに単純なものではなかったようです。
最初の場面で登場する衛兵"マーセラス"。
彼の名前がヒントです。
"マーセラス"は、ラテン名で聖者マルケルスを意味し、
その祝日は10月30日なんだそうです。
つまり、翌日は10月31日ハロウィーンで...
と、暦を舞台の日にちに当てはめてゆくと、
死者である父王がハムレットの前に現れるぴったりな
日取りだと読み取ることができるのです。
当時の観衆たちにとっては、"マーセラス"の名前で
すぐにそこまで了解できたよう。
世代の差を感じます。
もう少し詳しく知りたい方は、ぜひ中日新聞にあたってみてください。
(栞)
『不自由な心』 白石一文/著
全部で5編の短編が収められた作品集。
すべての作品に「不倫」というテーマが流れ、タイトルにもなっている
最後の「不自由な心」へとつながってゆきます。
人はどうして一人の相手を愛し続けることができないのか?
そもそも、どうして人を愛するのか?
生きることとは?
そうしたことについて考えさせられます。
個人的な感想としては3つ目の「夢の空」が好きです。
それと、4つ目の「水の年輪」も。
いずれも決してハッピーエンドではありませんが、
大切な人と巡りあえる幸せをほんのり感じることができます。
両方ともすでに不倫相手と別れていて、それでも相手のことが自分の人生
にとってかけがえのない存在だった、と思っているからかもしれません。
やっぱり不倫は心情的にちょっと・・・という感じなので。
だから、中でも人を好きになる純粋な気持ちが感じられる作品に惹かれたのかも。
(栞)
『森崎書店の日々』 八木沢里志/著
菊池亜希子と内藤剛志の主演で、映画にもなりました。
東京の神保町にある、ちいさな1軒の古本屋さんが舞台となっています。
失恋のせいで、恋も仕事もうまくいかなくなってしまった貴子。
その痛手を癒す間の短い期間を、おじさんが経営する古書店で過ごします。
最初は周囲の人にも、たくさんの本たちにも心を開くことができませんが、
ふとしたきっかけから、彼らのあたたかい気持ちに触れることになるのです。
一人、殻に閉じこもっていた貴子が、本がきっかけで次の一歩を踏み出してゆく。
そんな成長の物語です。
自分は一人ぼっち、と思ってしまうことも、時にはあるけれど、
まわりにはあたたかく見守ってくれる人たちがいるんだ、と
改めて感じさせられました。
心がちょっと落ち込んでいるときに手に取ってみてもいいかもしれません。
とっても短いお話で、文庫版では、行方知れずだったおばさんのお話
「桃子さんの帰還」も収められています。
心がほっこりする短編をぜひお楽しみください。
(栞)
10月から○年ぶりに、電車通勤をしています。
それまで自家用車で、ドアtoドア、もちろん座ったままで楽チン!
だったので、結構へとへと、やっと少し慣れてきたところです。
こんな時は、元気の出るお仕事小説が読みたいなぁと思い、
見つけたのがこちらです。
舞台は小さな、というより、弱小、零細デザイン事務所"凹組"(ぼこぐみ)。
オフィスは1Kのボロアパートで、社員はたったの3名。
天才肌で変人の黒川、律儀で丁寧な仕事が取り柄の大滝という巨漢の男二人と、紅一点の
新米デザイナー、浦原凪海(ナミ)。
いつもはスーパーのチラシや、エロ雑誌のレイアウトなどの「イケテナイ」仕事ばかりの
凹組に大きなチャンスがやって来ます。
老舗遊園地のリニューアルプランの最終コンペに参加。キャラクターデザインが採用され、
気鋭のライバル会社QQQと組んで仕事をすることに。
ところが、QQQの代表 醐宮(ゴミヤ)純子は、黒川と大滝にとっては因縁浅からぬ間柄で・・・。
現在の「凹組」が凪海の視点で、10年前の設立当時の「凹組」が大滝の視点で、交錯する
ように描かれていきます。
登場人物がみな結構個性的で、一癖も二癖もあるけれど、何故か憎めない。
仕事に対する姿勢、求めるやりがいも人それぞれで、かみ合わなかったり、すれ違ったり、
ぶつかり合ったりしながら、不器用に奮闘する姿にとても励まされました。
ちょっと最後はうまくおさまり過ぎかな、という感じもしますが、ご都合主義上等。
素直に、そうであって欲しい、ホントに良かったね、と思いたい。
とてもさわやかな気持ちで読み終えることができました。
明日への活力をもらった気分です。ありがとう。
(瀬戸→名古屋のスタッフ くり) ・・・よろしくお願いします。
かわいらしい題名に惹かれて、読んでみました。
主人公の名前も、「 栞 」なので紹介してみます。
「喋々喃々(ちょうちょうなんなん)」 小川糸/著
著者については、「食堂かたつむり」で
ご存知の方も多いかもしれません。
映画にもなってますし。
この著者の本、ほのぼのした表紙やタイトルの本に惹かれて
手に取ることが多いのですが、
なかなか複雑でシビアな部分も実は多かったりします。
タイトルの「喋々喃々」の意味、知っていますか??
大辞泉を引いてみると、
「 小声で親しげに話し合うさま。
また、男女がむつまじく語り合うさま。 」
とあります。
でもでも!!
この本、フリンの話なんです。
出会ってから、一年。美しい日本の季節が一巡り。
そこで、そっと、でも親しげに会話を交わす二人はフリンの関係。
それでも、背景に広がる東京下町の季節のうつろいや、
二人でとる豪勢ではなくても旬の食材を使ったおいしい食事。
また周囲で主人公の「 栞 」を見守るあたたかい隣人たち。
フリンの話。
でも、読んでて心がほっこりしてきます。
好きな人と一緒にすごす。
それだけで感じる幸せを、一緒に感じることができます。
二人の関係には共感できないところも多々ありますが、
そこに目をつぶって読んでみると、
「 人を好きになるってステキだなぁ 」
と、しみじみ感じることができます。
ちなみに、実際の東京下町が舞台となっています。
( どこかは読んでのお楽しみ♪ )
作中に登場した、お店や路地、神社やお寺、
一度足をのばしてみたいです。
本には、手書きの地図もついてます。
その地図を手に、私も好きな人のぬくもりを感じながら、
歩いてみたいです。
(栞)