ロビンソンクルーソーに学ぶ

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ロビンソン・クルーソー』上下 デフォー作
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この物語は、主人公ロビンソンがイギリスの港を出港し、いくつもの海を越え、多くの敵を倒し、何度も遭難や難破を繰り返し、ついには無人島で一人ぼっちで20年以上に渡ってサバイバルし続ける、という冒険劇の古典です。
この話の筋は誰でも知っていて、海洋冒険で、見知らぬ土地や海で敵と戦ったり、サバイバルをしたりと、昔から少年向けに何度も翻訳され、書かれてきました。
しかし、この話はただの児童向けの単純な冒険譚ではありません。
ロビンソンの行動を注意深く観察してみると
なぜ青年ロビンソンは海へ出ることになったのか
遭難したときにどんなことを考えたのか
何度失敗してもなぜ航海を続けてしまうのか
当時世界の覇権を争っていた"イギリスの人間であるロビンソンは未開の地"で何を見たのか
何度も死にかけ、絶望を味わったロビンソンはどうして精神を保つことができたのか
生きるために必要なものをすべてひとりで調達しなくてはならない未開の地で、文明人のロビンソンはなにを思ったのか
など、ロビンソンのいわば、内面を見ていくと、そこには高度に文明化され、合理化された社会に住むいかにも近代人的な考え、ふるまいであることが分かってきます。

イギリスの中産階級で育った、放浪癖のあるロビンソンに、父親は、今の中くらいの身分がいかに幸福かを説く。貧しくて苦しむこともなく、偉い地位について、妬まれたり、欲望の虜になってしまったりすることもない、その最も災難を受けにくい中くらいの身分を維持するために法律家を薦めている。しかしロビンソンはその忠告を無視し何度も外の世界へ旅をし、反抗する。いかにも現代の親子という感じですね。
航海に失敗するたびに、親に反抗したことを後悔して、しかしそれでも冒険をやめられない。
何度ピンチに陥っても立ち直り、そのつど成長していく。が、好奇心もより高まっていく。
一度成功すると、その味が忘れられず、儲けようとあれこれ考え、未開の地で手に入れたものを都市で売って大もうけするという大航海時代の船乗り商人の欲望そのままに、最初に得た少しの儲けでは満足せず、どんどん手を広げていく。
ギャンブルをやめられない心理そのものです。
その結果せっかく財産を築き上げたのに、危険な航海に挑み、沈没。仲間全員が死に、一人だけ無人の島に取り残されるはめに‥。
これ以上ない絶望を味わったロビンソンだが、残された無残な船の残骸から役に立つものは無いかと運んでくる。そこには、衣食住にはなんの役にも立たなそうな、聖書が。
しかし、ロビンソンは無人島で生活していきながら、この聖書を読み、徐々に信仰深くなっていく。
なぜ私だけが生き延びたのか。
それまで神に見放されたと思ってきたロビンソンは、考え方が変わり、自分だけが生き残ったことを不幸中の幸いであると、神に感謝を告げる。いくつもの困難のときに彼は、聖書をじっくりと読み、思慮深く行動するようになっていく。困難な状況だからこそ、聖書に書いてあることが彼に現実感を与える。まるで自分にむけて書かれたものであるかのように。
ロビンソンの気持ちになってみると、なるほど聖書はこう読めば良いのか、こういうときに読めば良いのか、とこちらに教示されているかのようです。
文明人から未開人に転落したロビンソンは、土地を耕し、種を植え、島の木を使って簡単な住まいを作り、衣服をこしらえ、動物を狩り、いろんな調理法を考え生み出し、島の地形や地理を調べ、脱出方法を考える。さらに日記をつけ、自分で暦を創り出し、島の季節を注意深く観察し、運よく下界を通るかもしれない船を辛抱強く見続ける、というまるで人類最初の人間であるかのように、初期設定を入念に行う。こうしてロビンソンは、文字通り生きるために必要なことをすべて自分で調達しこしらえ、そこには自立した人間、真の意味で自立した人間の姿が見られます。
かつて靴職人の姿を見ていたロビンソンは、それを思い出しながら自分で靴を作り出そうとするものの、それがいかに困難であるかを痛感する。たった一つの小さなボートを造り上げるのに何年も費やす。
近代文明の中で暮らしていたロビンソンは、いかに近代文明人が一つの職業に縛られているか、いかに自分の職業、自分の専門以外のことに無知、無頓着である社会かを知るのです。

ロビンソンクルーソーの生きる姿は、まさに現代人というものを表している気がします。
現代社会で生きていくうえで、このロビンソンクルーソーから学べることはとても多い。
デフォーの書いた『ロビンソンクルーソー』は、イギリスの文学史の中で、近代小説の出発点として位置付けられています。
最初の小説。
なるほど、読んでみるとその意味がよくわかりました。しかしよくできた寓話でもあります。

図書館サポーター あっきー


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