マンガを読んでいるときに、我々が読んでいるもの

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 「マンガとはルビのある漢字」である。

独自のマンガ観を持たれている、養老先生の言葉です。養老孟司先生とは、解剖学者であり、脳科学者であり、虫取りであり、文学や哲学、歴史から自然科学まで、日本人論から、日常的エッセイまで、ありとあらゆることを勘定に入れて、いろんなことをいろんなところに書きまくっておられる、おじさんです。

マンガをもっと読みなさい

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タイトル通り、先生はマンガを読めと言っています。なぜならマンガは脳に良いから。

我々が、マンガを読んでいるとき、いったい脳はどのような処理をしているのだろうか、と。

それは日本語の特徴というものを考えなくてはならない。日本語の特殊性は、外国語を考えると見えてくる。

たとえば中国語の場合、「重」という漢字の読みは、一つしか与えられていない。同じようにアルファベットでも、「D」は、「ディー」としか読まない。「dog」は、「ドッグ」としか読めない。どちらも多少方言による違いがあるが、どの方言でも読み方は一つ。

では、日本語の「重」はどうか。ご存知の通り、「重」は、じゅう、ちょう、おも、かさ、え‥‥と複数の読み方を持っている。

つまり、中国語や西洋語、というか、世界のほとんどの言語は、入力「D」に対して出力「ディー」というように、一つの入力に対し一つの出力と確定している。一方で日本語の「重」には、複数の出力をいれなくてはならない。

コンピュータをつくるとき、普通は文字の音声が入力も出力も一つでいいはずですが、日本語に対応したキーボードではソフトを変えなくてはいけない、ということです。コンピュータの処理がより複雑になる。「たいしょう」と入力して、対象、大将、対照、大勝、大正、大賞‥と色んな変換が出てくることを考えたらわかりますね。ここのところが外国人にはなかなか理解されないらしい。

要するに日本語というのは、漢字を読むときと、カナを読むときでは、別々の処理をしなくてはならない。我々が普段日本語を読んでいるとき、その複雑な処理を脳がしているのです。

そのとき脳の中を覗いてみると面白いことが分かります。漢字を読むときの脳の中の場所と、カナを読むときの脳の中の場所が違っていて、離れているのです。ということは、外国人が文字を読んでいるとき、使うのは脳の一ヶ所で済むが、日本人は二ヶ所使わなくてはならない。

脳が故障を起こしたとき言語障害が起きることあるが、その場合、カナは読めるが漢字は読めないとか、漢字は読めるがカナは読めないという症状になることがある。(両方が壊れてしまうことは少なく、あったとしたら大きな故障ということになるから、もう文字を読むどころではない。)新聞の文字を追っていっても、漢字のところだけは読める。だからなんとなく意味はわかるというように。

ディスレクシアという言語障害があります。日本ではあまり聞きなれませんが、外国では割とよくある障害です。日本人には少ないのですが、それはもしかしたら日本語の特徴に理由があるのかもしれない、と僕は思います。

そして、この日本語の構造がそのまま反映されているのが、「マンガ」というわけです。


マンガの中身をよく見てみると、マンガの中の絵が「漢字」、吹き出しの中の文字が「ルビ」という構造になっている! 「山」という漢字の起源をたどると、本当の山の形を図にしたもの。もともとは漢字は絵を文字化したものですね。忘れがちですけど。

日本語の学習でルビがふってある漢字を読んでいくことは、マンガを読んでいるのと同じ。逆にマンガを読むことが学習、とくに言語の学習になっているのではないかと思います。さらにいえば、マンガのコマ割りは、右上から左下読むように構成されているから、日本語の文章を読むときと同じ目線の動きになっています。

マンガがいまや、世界中に日本の文化として広く知らされ読まれているのは、こういう多くのものを養うことができ、そしてもちろん楽しめるからです。もはやサブカルチャーではなく、メインカルチャーといっても良い。

マンガの世界というのは、言葉だけの世界にはないものがあって、それは現実の感覚。我々に強くリアルな印象を与える絵。それは目から入る。それに加え、ギャーとかフッフッフッ、というような擬音語という耳から入る音。マンガというのは五感を使って我々を楽しませてくれるものです。一方、言葉だけの世界というのは概念の世界になる。だからその世界にばかりいると現実感覚がなくなってしまう。

マンガを読むことはこのように我々を養い、楽しませてくれるものなのです。マンガばかり読んでいるからバカになる、というのは嘘です。

 

図書館サポーター あっきー



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