本にまつわる話: 2012年10月アーカイブ
刈谷市美術館に開催中の猪熊弦一郎展「いのくまさん」に行ってきました。
猪熊弦一郎さん(1902-93年)は、ニューヨークや、パリ、ホノルル、日本などを
拠点として活動された洋画家です。また百貨店の三越では、現在も猪熊さんデザインの包装紙と紙袋が使われています。
猪熊さんの作品は、色使いもデザインもみていると気持ちがハッピーになるものばかり。「とり」や「ねこ」、他にも動物モチーフの絵もたくさんあり、なごみました。
会場は、詩人の谷川俊太郎さんのことばが案内してくれました。その元になっているのがこちらの絵本。
『いのくまさん』
谷川俊太郎著
鑑賞のあとは、美術館のすぐおとなりにあるお茶室で、
展覧会をイメージしたおまんじゅう「ねこさん」とお抹茶をいただきました。
かわいい!!
でもパクパクっと食べましたよ。
猪熊さんが少年期を過ごした香川県丸亀市にある
「MIMOCA丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」については。
こちらの本にすこし紹介されています。
(なごやのスタッフ 春)
図書館には、マイクロ資料と呼ばれる資料が保管されている。これは、雑誌などを写真撮影しフィルムなどに焼き付けたもので、元の紙の状態と比べると何十倍もスペースを圧縮することができる。本学では、このマイクロ資料を2000件以上所蔵している。
マイクロ資料を閲覧するためには、マイクロフィルムリーダー(MR)という機器を使う。フィルムをMRに装填し、1コマずつ閲覧していく。図書なら目次を見て特定のページを開くことが可能だが、MRの場合はコマを進めたり、巻き戻したりして、ページを表示させる。画面上でページをめくるように本が読める電子書籍が普及しようとしている現在、このMRの使い勝手は、残念ながらお世辞にも良いとは言えない。
従来、マイクロフィルムは、100年以上の耐久性があると言われてきた。しかし、近年、その劣化が懸念されるようになってきた。ビネガーシンドロームと呼ばれる現象で、フィルムの表面が酸化し、閲覧が不可能になるというものである。マイクロ資料は、一般に湿度管理した書庫で保管されている。それでも、いずれ媒体変換、つまりフィルムからデジタルデータに保存し直す必要があると考えられる。というのは、フィルムの劣化に加え、MRなどの機器が今後どこまで生産されつづけられるのか不確実だからである。マイクロ資料が保存されていても、MRが故障し部品が入手できなければ、結果的に資料が閲覧できなくなってしまう。
マイクロ資料は、印刷物などを画像としてフィルムに焼き付けている。この画像をスキャナで読み取りデジタル化すれば、パソコンで処理が可能となる。しかし、事はそう簡単ではない。パソコンに接続できるMRでは、専用ソフトによりMRの画像をPCにデジタル保存できる。つまり、媒体変換が可能となる。しかし、そのためには、1コマずつ変換処理をくり返さなければならない。MRを発売している会社に問い合わせたところでは、自動処理は可能だが、フィルムのコマの中心がずれることがあり、目視での点検が必要とのことだった。最後までスキャンした後にコマのずれや抜けが発見されたら、その修正作業は実にやっかいなものになる。つまり、マイクロ資料の媒体変換は、膨大な時間が必要となることが判明した。
このような悩みは、歴史資料をあつかう図書館や研究者共通のものであったようだ。最近になって、ようやく有用な方法が現れた。その方法は、マイクロフィルムを一定の間隔でスキャンしデジタル化するリボンスキャニングと呼ばれる技術である。この方法でスキャンすると、画像の途中に切れ目が生じるため、これをソフトウェアでつなげてパソコンに表示する。まさに逆転の発想でマイクロフィルムの自動媒体変換を可能にしたシステムと言える。
リボンスキャニングはコマ落ちなくマイクロフィルムをスキャンするための技術で、媒体変換後にパソコンで閲覧するためには専用のソフトウェアが必要となる。国際マイクロ写真工業社エコデジ事業部が提供しているVFRというビューアソフト(無償版)では、パソコン上でフィルムを巻き取るようなイメージで画像データを閲覧できる。まだ有償版は公開されていないのでその機能は想像するしかないが、もし電子書籍のように画像を1ページずつめくって読めるようなユーザーインタフェースが実装されればマイクロ資料の利用者にとって大きな朗報となるだろう。エコデジ事業部さん、期待しています。
(瀬戸のスタッフ りんたろう)