<06>図書館スタッフ: 2023年4月アーカイブ
奴隷解放に命をかけたハリエット・タブマンの物語を読みました。
児童書ですが、ショッキングな内容でした。
南北戦争より少し前、まだ自由州と奴隷州と別れていたアメリカでの話です。
そんな時代に生まれたハリエットは、6歳で働きに出されます。
上手に働けなくて、ひどい扱いを受けて、戻されること数回、それでもなんとか仕事ができるようにはなりましたが、彼女の心には自由州へ行きたいという思いがどんどん大きくなっていきます。そんな中、奴隷制度に反対する人との出会いを通して、自由州、北への道が開けます。多くの人の助けを得ながら、ついに北にたどり着いた彼女ですが、残してきた家族のこと、同じ黒人たちのことが気になります。やがて、彼女は、奴隷たちを助ける秘密組織『地下鉄道』の方々と協力してたくさんの奴隷たちを北へ導くことになります。そのことから、彼女は黒人たちのモーセと呼ばれるようになりました。南北戦争の時には、北軍の助けもしました。
※モーセ:ユダヤ民族をエジプトの地から救い出した人物の名前 (参:『聖書』出エジプト記)
南北戦争が終わって奴隷開放宣言がなされても、それですべてが解決というわけではありません。現代にも続いている問題も山積みです。
彼女の物語を通して、今も残る問題についても知ることができると思います。
★『自由への道-奴隷解放に命をかけた黒人女性 ハリエット・タブマンの物語 』
の所蔵館(県内)は『愛知県図書館 横断検索 愛蔵くん』で調べることができます。
★しろとり図書館にもハリエットの関連図書あります。
以下2冊、探してみました。
最近読んでる、『海嶺』や『音吉伝』とほぼ同じ時代の実話です。それぞれの生涯を思うと胸が痛みます。
人はどこから来てどこに行くのか、今、そんなメッセージを発しているような物語ですね。
(図書館スタッフ:小豆)
皆様こんにちは、勝山道です。
この記事が更新されている今は「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」の時期でしょうか?
実際、それより少し遅れているくらいの時期かなと思っています。
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。改めて。
そんな皆様も新入生でない皆様も、大学ってどうですか?
大学というものに対してだけでなく、物事の内側を外側から理解するのって難しいことです。
そのうえ、大学とはちゃんと難しい。
そう、大学には勉強と部活だけでは済まない、高校まででは今一つ培えない部分の難しさがあります。なにせ、いきなり知らないシステムに晒されるわけですから。
理解したころにはもう遅い、が頻発するワケです。
私なんぞは大学一年生前期の講義を適当に組んでしまい、そこそこ時間を持て余していました。なにがしかで時間をつぶせるならまだしも、友達もいなけりゃ家に帰るほどでもない。
1限と3限の講義を取ったら、2限も取ったほうがいいですよ......。
授業の形式も高校までと勝手が違ったりするかもしれませんね。そういうちょっとした難しさが結構出てきます、大学。
例えば、今のカリキュラムだと高校までの授業内で議論を交わすことは珍しくないかもしれませんが、私は大学で初めてちゃんとした議論じみたことをやったので、結構面喰いました。
複数人の中で意見するのは難しい。黙っていても議論が進行していれば尚更。そんな姿を含めて評価されたりされなかったりするワケです。難しい!
そんなこんなで「理解」と「議論」、大学で急に出てくる難しさって色々ありますけどこの辺りがベターかなと。
......というところで、「理解」と「議論」について成程!となった小説を最近読みましたのでご紹介させていただきましょう。
著者は品田遊。別名義にダ・ヴィンチ・恐山などがあり、主にライターとして多方面に活躍されている方です。
作品の概要ですが、題にある通り「反出生主義」という考え方についての議論が主です。
そもそも、皆様は反出生主義をご存じでしょうか。私は本著を読んで初めて知りました。
説明すると長くなるのですが、「生まれてこなけりゃ苦しむこともなかろうに、生まれてきちゃったのがいけないんだよな!じゃあもう産むなよな!最終的には人類滅びてよし!」という感じ。めちゃくちゃ乱暴な言い方ですが。
へ~こういう考え方もあるんですねえ知らなかったです、という調子で読み進めていたのですが、そんな適当でも読み進められるくらい難しくないところが、本著の良いところ。
考え方自体はかなり難しいんです。なのに、読むのは難しくないんです。すごいです。
本著はひたすら議論、つまり会話の形式で進んでいくため、まず地の文というものがほとんどありません。
その会話も専門用語はほとんど用いられず、反出生主義を主張する一人に対して複数人が持論を述べていく形で掘り下げられていくため、自然と段階を踏んで議論が展開されていきます。
反出生主義に属さない各々の持論はそれぞれ異なりますがそれぞれ普遍的なものであり、読者としては共感しやすいのはこちら側でしょう。
ただ、反出生主義を否定する話づくりでもないのが本著の面白いところ。
これ以上は、実際にお読みになっていただければと思います。
あえて付け加えるなら、面白いので非常におススメです。
そんな『ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語』はしろとり図書館3階に所蔵されています。ご興味あります方は是非お立ち寄りください。
それでは失礼いたします。
(しろとり図書館スタッフ:勝山道)