オススメ本: 2012年3月アーカイブ
ジョナサン・サフラン・フォア著/近藤隆文訳
先日、映画館で大泣きしてしまった映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』。
アメリカのニューヨークで穏やかに暮らすひとつの家族が、
"ある日"を境に、悲しみのどん底に突き落とされてしまう。
ある日・・・それは2001年9月11日。
その日、ワールドトレードセンターにいた父親トーマスは、
テロ事件によりこの世から消えてしまう。
家族を大きな愛で包んでくれていた父親を突然亡くし、
日常が一変してしまった母親と息子のオスカー。
悲しみの中、オスカーは父親のクローゼットから一本の鍵を見つける。
この鍵は、お父さんが残してくれたメッセージに違いない、と思ったオスカーは、
その鍵が開くはずである"鍵穴"をひとりで必ず見つけだす決心をする。
鍵穴を見つける調査とちいさな旅・・・それは父親からメッセージだけではない、
怖がりだった少年オスカーがたくさん人たちと出会い、発見する冒険だった・・・。
オスカーは、自閉症気味でアスペルガー症候群のような性質を持ち合わせる少年。
そのとても繊細な目線に、何度も胸が詰まりました。
そして物語には、何度も明るい光のような希望が見え隠れします。
人はどんな悲しみの淵にいても、きっとちいさく笑ったり、些細なしあわせを
感じ、そこから再生できることができるんだと、思わせてくれた映画です。
実はまだ原作は読んでいないので、これから読む予定です。
きっと映画よりも、登場人物たちの詳しい心情が描かれているはずだと
思うのでたのしみです。
(なごやのスタッフ 春)
小学生のころ、初めて辞書で調べた単語はなんだったんだろう、忘れてしまったけれど、
確か宿題だったので次の日みんなで答えを出し合ったのですが、
その中で、私が調べていった意味を先生が気に入ってくれたことを今でも覚えています。
「お、それがいいね。」と言ってくれた。
たまたま私が持っていた辞書にだけ、載っていたフレーズだったのでしょうかね。
あたり前なんだけど、辞書によってそれぞれ書いてあることが違うんだなぁと
その時思ったのです。
辞書って、どうやって作ってるんだろう。どんな人が書いてるの?
考えたこともなかったんだけれど、そうですよね、誰かが書いてるんですよ。それは当然。
三浦しをん著 『舟を編む』
出版社の辞書編集部を舞台に、国語辞典編纂に情熱を傾ける人々の、汗と涙の日々を描く
職業モノ小説です。
(日々、というより年月といった方がいいのかな、だって企画から完成までなんと15年程
かかってるんですよ!)
帯にはこうあります。
【辞書】言葉という大海原を航海するための船。(素敵!)
【辞書編集部】言葉の海を照らす灯台の明かり。(素敵!)
【辞書編集者】普通の人間。食べて、泣いて、笑って、恋をして。
ただ少し人より言葉の海で遊ぶのがすきなだけ。(絶対少しどころじゃないし)
とにかく熱い、半端じゃなく熱い人たちです→辞書編集者。
熱意をもって真剣に仕事に打ち込むことの素晴らしさを実感しました。
意外にも格好いいんじゃないの、などと思ったりもして。
(それに比べて自分、もっと本気だそうよと思わず反省...。)
そして、辞書完成までの気の遠くなるような作業量に、これは絶対好きな人じゃないと
やっていけないなと思いつつ、「仕事とはいえそこまでするか?」「無理。自分には
向いてない。」と最初は引いていたメンバーも、いつの間にかその熱の中に引きこまれて
いくところがまたいいんですよね。
堅苦しいイメージで、道具みたいに思っていた辞書が、こんな風に作られていると思うと、
見る目が変わってきます。なんだかいとおしい感じ。
最近はなんでもパソコンで検索してしまうので、滅多に辞書を引かなくなっていましたが、
(図書館にいるのに。そばにあるのに。)いろいろな辞書を引き比べてみたくなりました。
試しにどんな単語にしようかな。(やっぱりアレですか。アレですね。)
きっと誰もが紙の辞書を引いてみたくなるはずです。
もちろん、国語辞典を何種類も持っている人は少ないと思いますので、是非図書館で。
ウワサの「新解さん」こと『新明解国語辞典』の最新版も、もちろんありますよ。
紙の手触りまで、お確かめください。
(瀬戸のスタッフ くり)