管理人: 2012年12月アーカイブ
『なくしたものたちの国』 角田光代/著 松尾たいこ/絵
最近、あるきっかけで瀬戸に所蔵されている角田光代さんの作品を
一気に取り寄せてみました。
これはその中の一冊。
イラストレーターの松尾たいこさんとのコラボ本です。
松尾たいこさんといえば、やさしい色合いで風景や動物、子どもたち
が描かれたイラストで知られていますよね。
そんな松尾さんのイラストをもとに、5編の物語が生まれました。
主人公・雉田成子の物語。
8歳まではいろいろなものとお話ができた。
17歳、気付かぬうちに恋していた初恋の人と疎遠になった。
33歳、超弩級の恋に落ちたために、自分を失くした。
38歳、電車の中に、娘を忘れた。
なくしたもたちに会いに行った。そして、記憶をなくしていった。
成長してゆくにつれて、さまざまなものと出会い、別れ、失ってゆく。
でも、そうした自分の元からなくなってしまったものたちは
消えてしまったのではなく、「なくしたものたちの国」に行って、
いつかまた会うことができるのではないか。
そんな物語です。
人は生まれ、成長し、そして死を迎えます。
でも、それは決して恐ろしかったり、悲しかったりするものでは
ないのではないか。
いつか最期を迎えたとき、「なくしたものたちの国」で
大切な人やものが自分を待っていてくれるのではないか。
「なつかしくなるね」
作中では、この言葉が繰り返されます。
成長することとは、今までのすべてのことが懐かしくなること。
そして、その先でみんなが自分を待っていてくれるはず。
そう思うと、年齢を重ねることが楽しみになります。
(栞)