私の元からなくなったけれど...
『なくしたものたちの国』 角田光代/著 松尾たいこ/絵
最近、あるきっかけで瀬戸に所蔵されている角田光代さんの作品を
一気に取り寄せてみました。
これはその中の一冊。
イラストレーターの松尾たいこさんとのコラボ本です。
松尾たいこさんといえば、やさしい色合いで風景や動物、子どもたち
が描かれたイラストで知られていますよね。
そんな松尾さんのイラストをもとに、5編の物語が生まれました。
主人公・雉田成子の物語。
8歳まではいろいろなものとお話ができた。
17歳、気付かぬうちに恋していた初恋の人と疎遠になった。
33歳、超弩級の恋に落ちたために、自分を失くした。
38歳、電車の中に、娘を忘れた。
なくしたもたちに会いに行った。そして、記憶をなくしていった。
成長してゆくにつれて、さまざまなものと出会い、別れ、失ってゆく。
でも、そうした自分の元からなくなってしまったものたちは
消えてしまったのではなく、「なくしたものたちの国」に行って、
いつかまた会うことができるのではないか。
そんな物語です。
人は生まれ、成長し、そして死を迎えます。
でも、それは決して恐ろしかったり、悲しかったりするものでは
ないのではないか。
いつか最期を迎えたとき、「なくしたものたちの国」で
大切な人やものが自分を待っていてくれるのではないか。
「なつかしくなるね」
作中では、この言葉が繰り返されます。
成長することとは、今までのすべてのことが懐かしくなること。
そして、その先でみんなが自分を待っていてくれるはず。
そう思うと、年齢を重ねることが楽しみになります。
(栞)
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 私の元からなくなったけれど...
このブログ記事に対するトラックバックURL: https://blog.ngu.ac.jp/mt/mt-tb.cgi/2930