オススメ本: 2012年2月アーカイブ
吉田修一著
誰かとの"めぐり会い"は、ふしぎなもの。
出会った時は気が付かなくても、後で驚くような運命を感じることがあります。
あの出会いがなかったら、現在の自分はここにいなかったはず、と。
それは、出会いじゃなくても、"出来事"だったりすることもあります。
どん底だったあの出来事があったからこそ、今の自分になれたことに
気づくことがあったり。
『平成猿蟹合戦図』は、いろんな登場人物がでてきます。
歌舞伎町で働くバーテンダー、九州から来た子連れのホステス、ホスト、
クラブのママなどの夜の世界に生きる人たちから、有名なチェロ奏者と
そのマネジャー、冤罪の父を持つ女の子、東北で1人暮らしをしているおばあちゃん・・・。
彼らがめぐりめぐって出会い、そしてある"ひき逃げ事件"が彼らを結び付け、
物語は思いもしなかった方向へと向かいます。
はじまりは、生活感のないゆるい若者たちの登場に、
この先物語はどうすすんでいくのだろうと思っていたら、
途中からジェットコースターのごとくの展開で、目が離せなくなり一気にラストへ。
手に汗握るところあり、途中ほろりとするところあり、
最後には思わず拍手を送りたくなるような痛快な気持ちで読み終えた一冊です。
(なごやのスタッフ 春)
はい。私はリラックマに夢中です♪
家の中はもちろん、職場の机回りも
パソコンの壁紙やふせん、卓上カレンダーやメモ帳などなど
リラックマグッズがあふれています。
本当はフィギュアを持ってきて飾りたいのですが、さすがにそれは断念しました。
ちなみに、1年前の今ごろは、「カピバラさん」にはまっていました。
そのころ、もったいなくて使えなかったマウスパッドとひざ掛け。
今では、瀬戸のスタッフのかりんとうさんとりゃまさんが大事に使ってくださっています。
もういらないから捨てる、と言ったのを二人がもらってくださいました(涙)
私は、好きになるのも褪めるのも一気なのです。
そんな、数あるリラックマグッズのなかで、いちばん好きなのはこれ。
「リラックマ生活」シリーズ
「あなたは十分がんばっているよ」「今のままのあなたが素晴らしい」などの
大きなお世話的自己肯定本は生理的に受け付けない私ですが、
「まぁいいではありませんか」
「頼られる重みもわるくありません」
「これまでもこれからも ワタシはワタシですよ」などなど
リラックマからのメッセージすべてに添えられた可愛いイラストが、
の~んびり・ほんわか・ゆるゆる~の気分にさせてくれます。
最後に、一年でいちばんきびしい季節の今、
必死でがんばっている就活の学生さんや受験生たちへ
「それが正解ですよ 自分で考えたんですから」
by リラックマ
( 瀬戸のスタッフ ・ うぱこ )
栗田明子著
米国のエドガー賞の候補作として、東野圭吾の「容疑者Xの献身」が選ばれました。
エドガー賞は、アメリカ探偵作家クラブが前年に出版された作品から選ぶものです。この賞は、エドガー・アラン・ポーにちなんで命名され、ミステリー界ではもっとも権威がある賞といわれています。受賞作は2012年4月26日に発表される予定です。
ご存知のとおり「容疑者Xの献身」は、2006年の直木賞受賞作。日本では有名な作品です。英語への翻訳は、Alexander O.Smithによって行われ、2011年、北米で出版されました。英文タイトルは、The Devotion of Suspect X です。
さて、私たちが海外の小説を読むと、表題紙の裏などに"Japanese translation rights arranged with xxx company Ltd. through Japan UNI Agency Inc., Tokyo."と書かれていることがあります。このJapan UNI Agencyは海外の著作権を日本の出版社に仲介した代理店です。翻訳書の出版には、出版社以外にこのような代理店が必要なのです。もちろん、日本の出版物を海外で出版する場合も同様です。
従来、日本では海外の出版物の翻訳は盛んに行われてきましたが、国内の出版物を海外に紹介することには積極的ではありませんでした。栗田明子さんは、1970年代から日本の著作を海外へ紹介する仕事をつづけてきた方です。彼女の著書『海の向こうに本を届ける』は、著者の個人史でありながら、著作権輸出の業界史ともなっています。
日本人の著作を海外の出版社に紹介するのは、ビジネスを超えて異文化との交流することを意味しています。一冊の小説が翻訳され、海外の読書人に渡るまでに、もうひとつのドラマが隠されていることが本書から伝わってきます。たとえば、吉本ばななの『キッチン』の英訳では、先方の編集者からプロットの変更を求められたことがあるそうです。栗田さんは言下に断ります。「私たちはモノを売っているのではなくて、日本の文化を海外の読者に知ってほしいと思っているのよ」という言葉に、彼女の信条が表れています。
The Devotion of Suspect X がエドガー賞を受賞すれば、日本のミステリの大きな可能性を示すことになります。東野作品だけなく、他の小説も海外に紹介される契機となるからです。出版社や翻訳者も、そしてこの小説に可能性を見いだし海外に著作権を輸出した代理店も、大いにこの賞に期待していることでしょう。『海の向こうに本を届ける』を読んでいると、日本の小説が世界を賑わす日も近いと思えてきます。
(瀬戸のスタッフ りんたろう)