砂漠に出る前のオアシスの時代
今年の春巣立っていった、学生サポーターののだめちゃんの"伊坂幸太郎特集"、
まだまだ続く...!? となったままだったので、勝手に引き継ぎ。
『砂漠』 伊坂幸太郎
大学の法学部に入学して出会った、男女5人の大学生活を描いた青春小説―
であるのだが、恋愛のときめきも、学業の苦労も、就活の試練も全くと言っていいほど
書かれていない。
それなのに、ものすごく学生生活の匂いがする。
新歓コンパから始まり、合コン、麻雀、ボウリング、犯罪に巻き込まれそうになったり、
超能力があったりなかったり。
あとから思えば、限りなくアホらしい、無益なことに一生懸命になる熱。
何の足しにもならないしょーもないことほど、面白くてむきになれる時代。
そして、その時間を一緒に積み重ねていく仲間がいるということ。
これこそ、学生時代のキモだと思う。
正しい道だけをまっすぐに効率よく進むより、一見無意味に思える寄り道をした方が
見えてくるものがきっとある。
社会という砂漠に踏み出す前のつかの間のオアシス―学生時代。
小説の最後、卒業式で学長が言ったセリフにはっとさせられる。
「懐かしがるのはいいが、あの頃はよかったなどと逃げるようなことは絶対考えるな。
そんな人生を送るな。」
ああ、すでに何度か思ってしまってるかも。学生の皆さんはこれからだから頑張って。
自分の学生時代はずいぶん遠くに過ぎ去ってしまったけれど、まさに真っ只中の学生さん達に接する毎日を過ごしていると、いろいろと感慨深い。
平日の真昼間に友人と延々おしゃべりしていられる、なんてことも学生時代だからこそ、
会話OKのラーニングコモンズとはいえ勉強しないんだったら他でお願いしたいんだけど、
なんてイライラせずに、少しは大目に見てあげようかな、などと思わず心が広くなったり...
なんてことはまるでない。
(瀬戸のスタッフ くり)
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