9月15日,学位記授与式が名古屋キャンパスのチャペルで行われました。その折の挨拶を掲載します。
残暑の日差しが厳しい中,ここに39名の学部生と7名の大学院生が,名古屋学院大学を卒業・修了していきます。大学を代表して,心から皆さんのご卒業・修了をお祝いしたいと思います。
ここでは,主として学部の卒業生に贈る言葉を述べさせて頂きます。
皆さんの卒業時期が,春学期末の9月というのは,大方の日本の大学生たちのそれに比べれば,まだまだ稀なケースです。この時期に卒業となった理由が,意図したものである人もいれば,「不本意にも」という人もいるでしょう。
理由はどうあれ,この時期に卒業していく皆さんは世の中のマイナー集団であるのは間違いありません。しかし,それを卑屈に感じる必要は全くありませんし,それどころか「幸運であった」と考えて良いと思います。
その理由は,こうです。
当然のことですが,人はそれぞれ違います。どんなに仲の良い友人であろうとも,どんなに愛情深い親であろうとも,自分はその友人にも,親のコピーにはなれません。そのため,本来,自分の人生や歩む道は自分で考え,自分で決めなくてはなりません。
しかし,私たちは,たいして考えもしないで,ついと大人が定めたレールや,大きな流れに安穏と乗っかって,なんとはなしに歩んでしまいがちです。そうしてしまうのは,何も考える必要もなく,楽だからです。
ところが,この時期に卒業する皆さんは,少なくても大きな河の流れに身を任せてはきませんでした。やむを得ず,世間の流れに乗れなかった,という場合もあるでしょう。
しかし,それでも,卒業までの時間に,世間平均と比べれば半年,あるいはそれ以上の長さを要してきました。そしてその間に,皆さんは,否応なく「自分は何者だ」と考え,「自分は,既に他の学生とは違う道を歩んでいるのだ」と自覚した筈です。自分は自分だ,他の何者でもない,そして自分の道を歩まざるをえないと,覚悟した筈です。
若い時期の1年や2年の遅れは,年長者からみれば,そして,間違いなく皆さんも歳を取ったときにそれが判ると思いますが,たいした遅れでも何でもありません。それどころか,多感な青春時代に,孤独と戦いながら,自らの生き方,人生の処し方を真剣に考える機会を得たことは幸せであったと言えるでしょう。
自らを真摯に見つめ直す時間を得ることができたこの時間と経験は,皆さんの今後の人生において,大いに意味深いものになる,そう確信しています。
「君たちはいま,自分の生き方を,自分で決める時期に差し掛かっている」。これは私の言葉ではありません。19世紀半ばに,世界的に流行したサミュエル・スマイルズの『自助論:セルフヘルプ』にある言葉です。『自助論』は,「自らを助ける論」と書きます。日本では「天は自ら助くる者を助く」と訳されました。
他の学生たちよりに比べ,自らを見つめ直す時間をより多く持ち,そして自らの意思で己の道を切り拓こうとしている皆さんに,この言葉を贈りたいと思います。
スマイルズは,「成功に必要なのは,実は才能ではなく,勤勉である」。また,「人間の優劣は,その人がどれだけ精一杯努力したかで決まる」とも述べています。
精一杯努力すること,一生懸命にやること。これは,現代の若者たちにとって「格好悪い」ことのように受け止められがちですが,とんでもありません。「一生懸命」は「すばらしく格好良く」て,「価値あること」なのです。自らを助けるために,一生懸命に努力してください。
さて,2011年9月は,皆さんにとっては言うまでも無く,世界の多くの人たちにとっても,記憶に残る時となるでしょう。ニューヨークの貿易センタービルに旅客機が突入した「9.11世界同時テロ」から10年,本年3月の「3.11東日本大震災」から半年が過ぎた時期です。いずれの出来事も,世界を混沌の闇に引き込んでいく契機となり,今でも世界はその闇から抜け出ていません。
こういう時期だからこそ,私たちは名古屋学院大学の建学の精神『敬神愛人』をしっかりと胸に刻まなくてはならないと思います。私たち人間は,傲慢になってはいけない。自らが及ばぬものがあるのだから,神を敬うように,自然や他者に配慮しなくてはならない。他者を愛し,気配りできれば,自分の住む周辺はもちろん,世界全体が平和に住みやすくなる,ということだと思います。
名古屋学院大学を卒業していく皆さんは,是非とも,この機会に『敬神愛人』に思いを馳せて頂くとともに,これを自らの座右の銘として,人生訓として,一生この金言を胸に抱き続けて欲しいと思います。
「敬神愛人」を建学の精神に掲げる名古屋学院大学は,卒業後もまた,皆さんが私たちの貴重な仲間であると考えています。
世界的な大不況のさ中にあって,卒業はするもののまだ就職先が決まっていないという方がいるかもしれません。どうぞ遠慮なく,本学のキャリアセンターをご利用ください。
また,就職後には,改めて慣れない分野の資料を探したり,勉強せざるを得なかったり,という場面も出てくるでしょう。どうぞ,遠慮なく本学の図書館をご利用ください。私たちは,喜んで皆さんの役にたちたいと考えています。
『敬神愛人』の精神を尊重し,そして「天は自ら助くる者を助く」と信じて,豊かで明るい人生を切り拓いていってください。他の人より少し長い時間を大学生として過ごし,孤独にさいなまれながら,真摯に自らと向き合った皆さんです。必ず,それが出来るものと信じています。
皆さんのご健康と,ご活躍をお祈りしています。
卒業,おめでとうございます。
2011年9月15日
名古屋学院大学 学長 木船久雄
残暑の日差しが厳しい中,ここに39名の学部生と7名の大学院生が,名古屋学院大学を卒業・修了していきます。大学を代表して,心から皆さんのご卒業・修了をお祝いしたいと思います。
ここでは,主として学部の卒業生に贈る言葉を述べさせて頂きます。
皆さんの卒業時期が,春学期末の9月というのは,大方の日本の大学生たちのそれに比べれば,まだまだ稀なケースです。この時期に卒業となった理由が,意図したものである人もいれば,「不本意にも」という人もいるでしょう。
理由はどうあれ,この時期に卒業していく皆さんは世の中のマイナー集団であるのは間違いありません。しかし,それを卑屈に感じる必要は全くありませんし,それどころか「幸運であった」と考えて良いと思います。
その理由は,こうです。
当然のことですが,人はそれぞれ違います。どんなに仲の良い友人であろうとも,どんなに愛情深い親であろうとも,自分はその友人にも,親のコピーにはなれません。そのため,本来,自分の人生や歩む道は自分で考え,自分で決めなくてはなりません。
しかし,私たちは,たいして考えもしないで,ついと大人が定めたレールや,大きな流れに安穏と乗っかって,なんとはなしに歩んでしまいがちです。そうしてしまうのは,何も考える必要もなく,楽だからです。
ところが,この時期に卒業する皆さんは,少なくても大きな河の流れに身を任せてはきませんでした。やむを得ず,世間の流れに乗れなかった,という場合もあるでしょう。
しかし,それでも,卒業までの時間に,世間平均と比べれば半年,あるいはそれ以上の長さを要してきました。そしてその間に,皆さんは,否応なく「自分は何者だ」と考え,「自分は,既に他の学生とは違う道を歩んでいるのだ」と自覚した筈です。自分は自分だ,他の何者でもない,そして自分の道を歩まざるをえないと,覚悟した筈です。
若い時期の1年や2年の遅れは,年長者からみれば,そして,間違いなく皆さんも歳を取ったときにそれが判ると思いますが,たいした遅れでも何でもありません。それどころか,多感な青春時代に,孤独と戦いながら,自らの生き方,人生の処し方を真剣に考える機会を得たことは幸せであったと言えるでしょう。
自らを真摯に見つめ直す時間を得ることができたこの時間と経験は,皆さんの今後の人生において,大いに意味深いものになる,そう確信しています。
「君たちはいま,自分の生き方を,自分で決める時期に差し掛かっている」。これは私の言葉ではありません。19世紀半ばに,世界的に流行したサミュエル・スマイルズの『自助論:セルフヘルプ』にある言葉です。『自助論』は,「自らを助ける論」と書きます。日本では「天は自ら助くる者を助く」と訳されました。
他の学生たちよりに比べ,自らを見つめ直す時間をより多く持ち,そして自らの意思で己の道を切り拓こうとしている皆さんに,この言葉を贈りたいと思います。
スマイルズは,「成功に必要なのは,実は才能ではなく,勤勉である」。また,「人間の優劣は,その人がどれだけ精一杯努力したかで決まる」とも述べています。
精一杯努力すること,一生懸命にやること。これは,現代の若者たちにとって「格好悪い」ことのように受け止められがちですが,とんでもありません。「一生懸命」は「すばらしく格好良く」て,「価値あること」なのです。自らを助けるために,一生懸命に努力してください。
さて,2011年9月は,皆さんにとっては言うまでも無く,世界の多くの人たちにとっても,記憶に残る時となるでしょう。ニューヨークの貿易センタービルに旅客機が突入した「9.11世界同時テロ」から10年,本年3月の「3.11東日本大震災」から半年が過ぎた時期です。いずれの出来事も,世界を混沌の闇に引き込んでいく契機となり,今でも世界はその闇から抜け出ていません。
こういう時期だからこそ,私たちは名古屋学院大学の建学の精神『敬神愛人』をしっかりと胸に刻まなくてはならないと思います。私たち人間は,傲慢になってはいけない。自らが及ばぬものがあるのだから,神を敬うように,自然や他者に配慮しなくてはならない。他者を愛し,気配りできれば,自分の住む周辺はもちろん,世界全体が平和に住みやすくなる,ということだと思います。
名古屋学院大学を卒業していく皆さんは,是非とも,この機会に『敬神愛人』に思いを馳せて頂くとともに,これを自らの座右の銘として,人生訓として,一生この金言を胸に抱き続けて欲しいと思います。
「敬神愛人」を建学の精神に掲げる名古屋学院大学は,卒業後もまた,皆さんが私たちの貴重な仲間であると考えています。
世界的な大不況のさ中にあって,卒業はするもののまだ就職先が決まっていないという方がいるかもしれません。どうぞ遠慮なく,本学のキャリアセンターをご利用ください。
また,就職後には,改めて慣れない分野の資料を探したり,勉強せざるを得なかったり,という場面も出てくるでしょう。どうぞ,遠慮なく本学の図書館をご利用ください。私たちは,喜んで皆さんの役にたちたいと考えています。
『敬神愛人』の精神を尊重し,そして「天は自ら助くる者を助く」と信じて,豊かで明るい人生を切り拓いていってください。他の人より少し長い時間を大学生として過ごし,孤独にさいなまれながら,真摯に自らと向き合った皆さんです。必ず,それが出来るものと信じています。
皆さんのご健康と,ご活躍をお祈りしています。
卒業,おめでとうございます。
2011年9月15日
名古屋学院大学 学長 木船久雄
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