モンスターカレンダー

« 2024年2月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29

目的と日程
 2016年1月21日(木)から1月28日(木)の8日間,外国語学部のモロー教授とともに米国に出張しました。目的は名古屋学院大学と国際交流や交換留学制度の協定を結んでいる協定校を訪問し,これまでの協力支援に感謝を述べるとともに,将来に向けた相互の事業強化を図るためです。
 具体的な訪問先は,①Pacific University(オレゴン州ポートランド近郊),②North Central College(イリノイ州シカゴ近郊,Naperville市)そして③Coe College(アイオワ州Cedar Rapids市)の3大学です。いずれも,現在,本学の学生を交換留学生として受け入れ,同時に名古屋学院大学へ彼らの学生たちを派遣している大学です。名古屋学院大学が国際交流協定を結んでいる大学の数は,世界に85ほどありますが,その中でもこれら3つの大学との関係は歴史も長く強い絆で結ばれているといって良いでしょう。
 出張の日程は次の通りです。初日の1月21日(木)に中部国際空港から羽田経由でサンフランシスコに向かい,そのまま飛行機を乗り継いでオレゴン州ポートランドへ向かう。そこで投宿。翌1月22日(金)にPacific Universityを訪問し,土曜・日曜にシカゴへの移動。1月25日(月)にNorth Central Collegeを訪問。翌1月26日(火)は午前中にシカゴからシーダーラピッズに飛び,午後にCoe Collegeを訪ねる。そして1月27日(水),早朝の飛行機でシーダーラピッズを離れ,テキサス州のダラスフォートワース空港から成田そして名古屋と乗り継いで,1月28日(木)の夜19:45に中部国際空港に帰還。寒い冬に,わざわざ寒い場所を選んだような出張です。

協定大学の印象
(1)Pacific University
 Pacific Universityが位置するオレゴン州は,1年の半分は雨が降っている,と言われる地域です。訪問当日は名古屋よりも温かく,雨も降らず,それどころか太陽も顔を見せていて快適な気候でした。広大で,緑溢れるキャンパスは,芝生は青々としているし,樹齢2000年と言われるメタセコイアの大木も生息。その幹や枝はびっしりと苔に覆われています。毎日オゾン浴をしながら学ぶ空間です(これは瀬戸キャンパスと同じか)。アメリカの田舎町にある大学の例にもれず,街全体が大学,大学が街そのものという印象です。普通の民家かと思しき建物が大学の一つの施設であったりして,ヘェ~と驚かされました。
 学生のほぼ全員がキャンパス内の学生寮で居住し,図書館や大学施設ほぼ24時間利用可能な状態です。俗世間と隔絶した学習空間は,日本人留学生にとって最初のカルチャーショックであるかもしれません。
 留学生受け入れや送り出し業務を行っているスタッフの中に,印象深い日本人のAtsukoさんが居ました。表情豊かで明るく快活。テキパキとかつ親身になって留学生の生活・学習全般の支援をしている彼女を,本学からの留学生も「大変良くして貰っている」と評していました。感謝。
(2)North Central College
 North Central College(NCC)はイリノイ州シカゴから電車で40分のNaperville市にあります。Naperville市はシカゴ郊外にありながら,安全なベッドタウンとされ,人口増加を続けています。しかし大陸内部にある街ですから,寒いときには零下20度にもなるそうです。訪問当日はそれほどの寒さではありませんでしたが,道路脇には雪が残り,キャンパスツアーの途中にも雪が舞っていました。
 ここでも,国際交流を担当するスタッフの皆さんからとても丁寧なおもてなしを受けました。中でも,国際プログラムのディレクターをしているキンバリー女史には驚嘆させられました。なんと彼女は,3人目の子供の出産を1週刊後に控え,前に大きくそり出たお腹を抱えながら,私たちに半日付き合ってくれたのです。雪が残る歩道を,私たちよりも速く歩いていました。この逞しい女性に深く感謝。
 NCCでは学長,副学長とも面談する機会がありました。3,000を越える大学がひしめくアメリカにあって,大学間競争は厳しい。大学改革と新機軸の構築が急務であることなどが語られ,事情は日本と同じかなぁと感じたものです。キャンパス内には新しいセンターの建設工事が進められていました。アメリカの大学にあって学長がなすべき第一の仕事は,こうした新事業を進めるための寄付金集めである,と明言されていたことが印象的です。
(3)Coe College 
 アイオワ州Cedar Rapidsはシカゴから飛行機で約1時間のところにあります。このあたりは麦とトウモロコシの産地で,朝食に使われるシリアルで有名な食品会社「クウェーカー・オーツ」の基幹工場があり,その大きな看板が目にとまります。
 飛行機を降りると辺り一面が銀世界。今回の訪問先の中では最も寒い場所であり,最も寒いタイミングとなりました。空港まで出迎えてくれた国際プログラム・ディレクターのアン・ドレクサーさんは,毎年のように名古屋学院大学を訪問してくれているので,私自身も顔なじみです。キャンパスまでの運転はお母さんのバーバラさん。この方も,本学とCoe大学との交換留学プログラムを長きにわたり支えてくれた功労者です。ほんわか温かい時間が持てました。
 しかし,キャンパス内は雪で覆われ,雪と風の中を進むキャンパスツアーは苦役に近いものがありました。感心したのはキャンパス内の室内運動場です。四季や天候に関係なく利用できるように,大規模倉庫とも思しき巨大構築物の中に陸上トラックやテニスコートが入っているのです。雪景色の戸外から窓を通して見える室内温水プールでは,外の寒さに関係なく,何人かの学生たちが悠々と泳いでいました。キャンパス内は,地中に埋められたパイプを通じて温水や蒸気が供給され,それが面としての暖房を担っているということです。流石,エネルギー費用の安いアメリカです。
 Coe大学からは夕食会へのお招きを受けていたのですが,モロー先生は参加し,私は欠席しました。私はというと,日本を出る前に罹った風邪が日ごとに悪化し,Coe大学訪問の日には,咳や鼻水だけでなく,ほとんど声も出ない状態だったのです。この状態を英語で言うと「I lost my voice.」。一つ学習しました。モロー先生によればディナーは美味で楽しい時間であったそうです。残念!

NGU留学生たちの様子
 今回3つの大学を訪問し,現在本学から派遣されている学生5名と,本学に留学し既に帰国しているアメリカ人学生3名,合わせて8名の学生たちと面談する機会がありました。
 本学からの学生たちは,皆,元気でそれぞれの留学生活を楽しんでいました。もちろん,淋しさを感じる時,不満に思うこと,思うようにいかないストレス,そんな話も口に出ました。しかし,総じてアメリカの大学生活に積極的に取組んでいる姿勢を感じさせてくれました。異国で不安やストレスを感じながらも,逞しく学ぶ本学の学生たちの姿を目の当たりにすると,彼ら彼女らへの愛しさが募ります。健気に頑張る幼子を見るようで,不思議と目頭が熱くなるのです。
 中には,学部の正規授業を3科目履修していて,その予習に毎回4時間かけていく,こんなに勉強したのは生まれて初めてだ,と吐露する学生もいました。その努力や経験は決して無駄にならない,将来の糧だ,と私。一生懸命にやっている姿,頑張っている姿は,本当に美しい。見る者を楽しくしてくれますね。
 一方,名古屋学院大学に留学経験を持つアメリカ人学生たちは,一様に「NGU(Nagoya Gakuin University)の経験は貴重なものであった,NGUの国際センターのスタッフが親切でとても世話になった,楽しかった,名古屋にもう一度いきたい」と語っています。そして,JETプログラム(注)を利用して日本で1年以上生活したい,と言います。その内の一人は,既に日本領事館での面接試験も終えて,合格発表を待つばかりとのことです。再会の日は近い。

 今回の協定校訪問では,どの大学でも私達をとても温かく迎えてくれました。それは,訪問校が比較的本学と強い関係を維持している大学であるということも関係しているのでしょう。しかし,「おもてなし」は日本固有のものではなく,形を変えこそすれどこにでもある,そんな印象も持ちました。今後もこの良好な関係を維持していきたいと思います。
 

(注)JETプログラム:The Japan Exchange and Teaching Program。外国語の指導助手(ALT)などを行う外国青年を招聘する日本政府の事業のこと。

新年の挨拶
 明けましておめでとうございます。
 この年末年始は大変温かな陽気でした。それは,明るい未来と希望を予感させるようでもあり,地球温暖化の顕在化のようでもあり,さらにこの陽気が景気に影をもたらしそうで,なんとも不気味でもありました。いずれにしても,年末年始の休暇は,皆さまにとって鋭気を養い新たな抱負を抱く良い機会になったことと思います。
 私自身もこの休暇を使って,一週間近く,普段できない実家の庭掃除に励み,しっかりと気分転換ができました。そして新年を迎え,初詣では学生のため大学のためにしっかり働くぞと,改めて決意した次第です。初詣先で引いた御神籤は「凶」と出ましたので「今日が最悪,これからは好転するのだ」と確信しています。

着実に歩を進める
 さて,昨年は8学部11学科体制のスタート年でした。2016はその2年目です。各学部の教育・研究・集会貢献の活動が安全に巡航速度で歩を進めることができるよう努めて参ります。今年4月には,学生の数が昨年に比べ200名ほど増えます。法学部の150名と子供スポーツ教育学科の50名の増分です。大学院まで含めれば全学生数はほぼ6,000名となり,名実ともに中堅規模の大学となります。
 新学部・新学科は開設2年目を迎え,既存の学部もそれぞれに希望と課題を抱えて新たな船出です。とりわけ,法学部は開設4年目・完成年度を迎え,第1期生たちが就職活動に直面します。彼ら彼女らが希望する進路を実現できるように,効果的でキメ細かなサポートをしていきたいと思います。
 一方大学の経営面では,今年は昨年と違い安定的で着実な歩を進めることができる年だと言えます。昨年は理事会メンバーの改選や多くのベテラン教職員の勇退がありました。そして,新たな理事長と事務局長を迎え,また,新学部・新学科の開設に合わせて,教員・職員ともに多くのニューフェイスを迎えた年でした。加えて,事務局組織の改変とともに,大幅な人事異動が行われました。しかし2016年は,そうした人事に関わる大きな変化は想定されていません。
 こうした点からも2016年は腰を落ち着けて,教育改革や業務改善に取り組むことができる年であると考えています。私たちは「敬神愛人」の精神を携え,強い意志と創意工夫をもって課題解決に努め,従前以上に名古屋学院大学は素晴らしい大学であると評価されるよう,励んで参ります。関係する皆さま方には,どうぞ倍旧のご支援・ご鞭撻のほどよろしくお願いします。

学ぶ申年
 新年の挨拶なので,今年も干支を話題にして締めたいと思います。今年は申年(さるどし)です。中国では猿は機敏で聡明な動物とされ,申年は躍動の年とも言われるそうです。しかし日本では,猿にちなむ格言にあまり芳しいモノはありません。「猿知恵」,「サルまね」,「猿も木から落ちる」。「犬猿の仲」といったものもあります。また「猿年は騒ぐ」といって,ワサワサ落ち着かない年であるといった説もあるようです。
 しかし「猿まね」「猿知恵」も決して馬鹿にしてはならない様に思います。「学ぶ」は「まねる」ことから始まるわけですから,私たちも内外の動向に注意深く目を凝らして,良いこと素晴らしいことであれば,それを積極的に取り入れていく「学ぶ」姿勢が必要であると思います。もちろん,その際には単に猿まねではなく,私たちに適合したアレンジが必要でしょう。良いモノであれば,それは広く世界に普及し一般化されユニバーサル化されていきます。
 高崎山の猿は暖をとるために温泉に浸かります。火を恐れないのは人間だけかと思えば,人間を真似て焚き火にもあたる猿もいます。温泉に浸かり焚き火にあたるという行動は,猿の世界でもユニバーサル化されつつあるようです。もっとも,湯に浸かる猿は「歳老いたメス猿」だけだそうですが。何故かって?「湯に婆猿」。・・・・・お後が宜しいようで。失礼いたしました。
 改めて,明けましておめでとうごザル。どうぞ皆さん,本年もよろしくお願いします。

2016年1月

認定式の様子
  地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)の一環として進められている「まちづくりマイスター認証制度」に基づき,初めての認定証の授与式が行われました。式典の場所と時間は,名古屋キャンパスでは希館5階会議室で11月18日(水)12:40~13:10,瀬戸キャンパスでは希望館4階会議室で11月19日(木)13:00~13:30でした。対象となった学生は名古屋キャンパス25名,瀬戸キャンパス6名,合わせて31名。いずれも"初級"の「まちづくりマイスター」で,副賞記念品としてNGUグッズのトートバックも贈られました。
 昼休みおよび午後の短い時間を利用しての認定式は,家本博一社会連携センター長の趣旨説明を兼ねた挨拶から始まり,一人ずつ認定証を手渡し,その後に学長挨拶,演習担当教員の激励の言葉,杉山課長による「地域縁結び隊(仮称)」結成の案内,そして集合写真の撮影で終了となりました。まちづくり関連の演習を担当された先生方からは,誕生したばかりのマイスターたちに温かい励ましのお言葉を頂戴しました。
 杉山課長の「地域縁結び隊(仮称)」結成の案内では,マイスターの誕生に合わせさらに地域貢献活動を進めていく計画が紹介されました。マイスターたちには引き続きこうした活動にも参加して貰い,社会と接点を持ちながらさらに自身を磨いて欲しいと思います。

まちづくりマイスター制度とは
 ところで,「まちづくりマイスター制度」とは何でしょうか?大学COC事業と同時に発足したばかりの制度ですから知らない人が多いかと思います。説明しましょう。
 この制度の目的は,①学生たちにまちづくりに必要な知識や能力を修得するよう奨励すること,②認定を受けた学生たちは,まちづくりに関する一定の学修課程を修了した者であると外部に向けて証明すること,です。科目等履修生として学外の社会人が一連のまちづくり関連科目を履修しているケースもありますから,こうした方々にはマイスター認定証はまさに単位修得証明書とも言えましょう。
 マイスターには初級と上級が用意されています。
 初級まちづくりマイスターは,それぞれのまちづくり分野(①地域商業,②歴史観光,③減災福祉の3分野)ごとに認定され,認定条件は講義科目(座学)と演習科目の両者の単位を取得することです。具体的には,初級まちづくりマイスター《地域商業》では「地域商業まちづくり学」と「地域商業まちづくり演習」の単位を,初級まちづくりマイスター《歴史観光》では「歴史観光まちづくり学」と「歴史観光まちづくり演習」の単位を,初級まちづくりマイスター《減災福祉》では「減災福祉まちづくり学」と「減災福祉まちづくり演習」の単位取得が求められます。
 また,"上級"まちづくりマイスターの認定条件は,初級マイスターを得た後に,授業科目「上級まちづくり演習」の単位を取得し,さらに関連する外部資格を取得することです。外部資格として,《減災福祉》の分野では「ボランティアコーディネーション力検定3級」または「災害ボランティアコーディネーター養成講座修了」などがあげられています。「"上級"マイスター」の認定条件に外部の資格修得を求めるのは,この制度の客観性・信頼性を担保しようというものです。

マイスターに認定された学生たち
 さて,今回「初級マイスター」に認定された学生たちは31名でした。その分野別内訳は,《地域商業》4名,《歴史観光》19名(うち瀬戸6名),《減災福祉》12名です。中でも商学部2年生の浅井勇人君は,なんと3つの分野全てを制覇したマイスターの猛者です。
 講義科目は通常の授業曜日(月~金)に行われますが,演習科目は現地見学や調査といったフィールド活動もあるため,土曜・日曜に実施されることもあります。そうした中で3つのまちづくり分野を全て制覇するというのは,相当に大変であったと思います。もっとも大学にとっては,大学が提供している教育サービスの機会を最大限に利用してくれているということですから本望です。浅井君は「時間のやりくりは大変だったけれど楽しかった」と言っています。
 また,瀬戸キャンパスで認定を受けた学生たちは,いずれも《歴史観光》マイスターで理学療法士を目指すリハビリテーション学部の学生たちでした。彼らは「このコースで学んだホスピタリティの精神を理学療法士として今後の人生に活かしたい」と語っています。患者さんと向き合う際には,観光の世界と同様に温かい「おもてなし精神」が不可欠であることを認識しているのです。
 地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)で展開されているプロジェクトは,いずれも地域への社会貢献活動を組み込みながら,学生たちの社会人基礎力(チームで働く力,前に踏み出す力,考え抜く力)の涵養を目指す教育プログラムです。これまで以上に多くの学生がより多くのプロジェクトに参加して,自身の成長のつなげて欲しいと思います。そして,新たなマイスターが溢れんばかりに誕生することを期待しています。

入学式
 2015年4月1日(水),2015年度の入学式が行われました。
 ここ数日の温かい天候で大学周辺の桜は,今を盛りに満開です。朝から小雨が降っていましたが,雨の勢いは花弁を落とすほどではありません。式後には,満開の桜を背景に入学の記念撮影をする新入生同士やご家族の姿がたくさん見られました。
 新入生の皆さん,ご入学おめでとうございます。名古屋学院大学の教職員一同は,入学された皆さんの確かな成長と,輝かしい未来を切り拓くために全力で支援することをお約束します。大学で学ぶこの4年間を実り多いものにするために,大学が提供する教育サービスを大いに活用し,自らの教養と人間の幅を広げ,人格陶冶に努めて下さい。

巨大電子看板の登場
 さて,今回は入学式の話だけではなく,入学式の当日に初めて学内公開された巨大電子看板を紹介したいと思います。 
「電子看板」は,「デジタル・サイネージ(digital signage)」というのがその業界では一般的だそうですが,液晶ディスプレイなどを用いた映像表示装置のことです。単なる「看板」と異なるのは,静止画や文字だけでなく,動画や音声も一緒にして情報を送ることができる道具だということです。要するに,駅や病院などの公共施設や大型商業施設,ビルの壁面などに懸かっている大型ディスプレイと思って頂ければ良いかと思います。
 その巨大ディスプレイが,名古屋キャンパス曙館1階のキャンパスホールに登場しました。その大きさは,55インチ型テレビを縦に2台,横に4台,合わせて8台並べた代物ですから,高さは約1.5メートル,横幅が約5メートルになります。横に長い変則的なディスプレイですが,対角線の長さは505インチです。同じ場所に設置されていた従来のディスプレイ装置は60インチ程度でしたから,それに比べたら圧倒的な存在感です。

情報コンテンツと教員・学生たちの頑張り
 入学式当日に合わせた大型電子看板のお披露目には,商学部・経営情報学科の伊藤昭浩先生・山口翔先生,そしてお二人のゼミ生たちの涙ぐましい貢献無くして語れません。大学紹介の動画コンテンツ作製のために,ゼミ生たちは,春休み返上で,チームを組んで(照明・録音・撮影等)重い機材を抱えながら,あちこちに撮影・録音の取材に出かけて行きました。取材後には,映像を短い動画にまとめたり,テロップ(文字)を入れたり,音楽をつけたり,とパソコンと格闘する編集作業が加わります。この編集作業もまた,労働集約的で膨大な時間を要するものです。
 学生たちは,取材を通じて大人や外部の人達と交わり,忍耐強い作業を重ねながら目に見える成果物を作り上げていく。そうした過程で,ICT関連の技術を身につけるだけでなく,コミュニケーション能力や課題解決能力を身につけて行くのでしょう。これは,アクティブラーニングやPBL型授業の一つのモデルに違いありません。
 こうして出来あがったコンテンツが,今回,大型電子看板から流されました。ご覧になった方はお判りでしょうが,仕上がりは,どこかの広告代理店に頼んだような質の高いモノでした。私自身は,事前に動画の被写体にもなりましたし,「Project 758」を通じて先生方やゼミ生たちの日頃の活動も見ているので,彼らが持つ情報デジタル関連の知識やスキルの高さは承知していました。しかしそれでも,今回,出来あがった映像コンテンツを見せられると,改めて彼らの情熱や技術水準の高さに感動せずにはいられませんでした。
 言うまでも無く,発信する情報コンテンツをプロ並みの仕上がりにするためには,教員お二人の寝食を忘れた指導の努力が欠かせません。実際,入学式の前日も彼らは徹夜で作業をしていたそうです。「ちゃんと寝ていますか?」。それが,お二人の先生と顔を合わす際に,私が交わす挨拶の定番となっています。どうぞ,お身体大切に。

これからの予定
 この電子看板を通じて,教育サービスを担う各部署の活動,クラブやサークルの活動,イベント案内など,時期に合わせた情報を順次発信していく予定です。学生たちの皆さん,教職員の皆さん,ディスプレイから流れる情報内容はもちろん重要ですが,そのコンテンツを作製しているのが本学の学生たちであり教員であるという事実,裏方の存在にもご配慮いただきますよう,お願いします。
 なお,巨大電子看板の本機材は,文部科学省補助金「私立大学等教育研究活性化設備整備事業(2014年度)」を通じて設置されました。文科省と納税者にも感謝します。

シンポジウムの趣旨 
   2015年2月26日(木)に「熱田ブランド戦略キックオフ・シンポジウム」が熱田区と名古屋学院大学の共催によって熱田文化劇場小ホールにて開催されました。時間は同日の13時30分~16時の3時間半。
 この「熱田ブランド戦略」プロジェクトは,熱田区長の宮木哲也さんの発案によって2014年度にスタートしました。熱田区ゆかりの歴史や文化を発見・開発し,それを区内外に発信することを通じて,熱田区のイメージをより高めることを狙いとしています。そのキックオフのイベントとして今回のシンポジウムが用意されました。
   名古屋市と包括的連携協定を結んでいる名古屋学院大学は,COC事業(地(知)の拠点整備事業)の一環として,今回の熱田区のプロジェクトにも積極的に参加しています。「熱田ブランド戦略」を議論する区役所内に設置された委員会には,商学部から濱先生と佐伯先生が検討メンバーとして参加しています。また,濱先生のゼミ生(チーム・オラクル)たちは熱田の魅力発見のための調査研究を進めてきました。さらに,伊藤先生と山口先生のゼミ生たちが展開している「Project 758(なごや)」は,文字通り熱田区の観光資源をキャラクター化し,それを全国に発信しようとしています。

シンポジウムの構成
   さて,シンポジウムです。全体は,①基調講演,②事例紹介,③調査研究成果報告,④パネルディスカッションから構成されています。①基調講演は石原武政先生(流通科学大学特別教授,大阪市立大学名誉教授)にお願いし,「地域活性化の課題」というお話をうかがいました。②事例紹介では,伊勢神宮「おかげ横丁」の企画・運営にあたる橋川史宏社長(有限会社伊勢福代表取締役)から「おかげ横丁らしさの本質」というお話をしていただきました。
 そして③調査研究成果報告は,名古屋学院大学・濱ゼミナールのチーム・オラクルのメンバー5人が「地域ブランド」に関わる調査結果をプレゼンしました。プレゼン内容は,(1)熱田区民を対象としたアンケートによる住民意識や行動パターン,(2)地域資源に関する学生と地域住民との意識の比較分析,(3)まちづくり先進地域の事例紹介,(4)調査から導き出した熱田ブランド創出のポイント等でした。
 最後の④パネルディスカッションでは,「熱田ブランド戦略の構築に向けて」をテーマに熱心な議論が展開されました。ご登壇いただいたパネリストの皆さんは次の通りです。
  司会 上田幸則氏(名古屋学院大学商学部准教授)
  パネリスト
    石原武政氏(前掲)
    橋川史宏氏(前掲)
    宮木哲也氏(熱田区長)
    安井友康氏(宮商事株式会社代表取締役社長)
    田中智麻氏(名古屋学院大学経済学部講師)

興味深い言葉
 ここでは,パネリストから示された興味深い言葉の幾つかを拾ってみましょう。
○熱田は歴史的にも文化的にも,極めて豊富な観光資源が実際に存在している(貝塚,古墳,遺跡,宿場,etc.)。
○熱田は,名古屋城の城下町とは違う生い立ちと文化がある。
○熱田の地は熱田神宮(神宮サマ)と共に生(活)きてきたし,これからもそうだ。
○観光客の目的や期待は一様ではない。とりわけ訪日するアジア人と欧米人とでは目的が異なり,訪問場所も異なる。
○観光資源の候補としてリストアップされたものが,現代人にとって価値があるかどうかは別問題だ。現代人にとって価値あるものに翻訳していく必要がある。
○心の交流が無いと「地域づくり」は持続しない。それは住民同士でも,住民と観光客との間でもそうだ。
○観光客にとって,存在するものが見物対象だけであり,感動をもたらさないのであれば,その観光地は廃れていく。
○ブランドは信頼の証であり,作り手の心意気である。

 本学は,これからも熱田のブランドつくりに協働していきます。しかし,それは容易なものでないでしょう。関係する各人それぞれが一層学び,深く考え,工夫をしながら,相当の情熱を傾けなくてはならないのだろうと思います。まさにキックオフです。

 

日経BP杯とスケジュール
 2015年1月10日(土),商学部の3年生ゼミを対象としたゼミ対抗の研究発表会が行われました。この発表会は日本経済新聞社(日経)の出版子会社である日経BP社の冠を頂き,優秀作品に対して同社から賞状やトロフィーが贈られます。当日は,『日経ビジネス』誌編集部長の西頭恒明氏と日経BPマーケティング社の小泉正明氏にご来学いただき,研究報告に対する講評や励ましを頂戴しました。
 さて,当日のスケジュールは午前中が予選,午後は日経BP社の西頭部長の基調講演,そして予選を勝ち残った6チームによる決勝戦,その後に懇親会と続きます。決勝戦の成績発表はこの懇親会の中で行われました。

発表会の様子
 午前の予選では,20チームが4つの分科会に分かれて研究成果を発表し,投票により決勝戦に進む6チームを選びます。商学部の先生によれば,各チームは中間発表会(昨年11月)を経験していること,その際に指摘された問題点や検討課題は今回の発表までに解決・克服しているはず,とのことでした。先生たちにとっては,2か月間にどれほど研究が進化したのかという点も興味の種だろうと思います。
 私自身は都合により午後の決勝戦の報告を聞いただけですが,いずれも力作・労作揃いという印象でした。商学部は学部全体で学生たちに高度な情報処理スキルを習得させようと取り組んでいることもあって,いずれもパワーポイントの上級テクニックを駆使したプレゼンでした。
 研究内容や成果のレベルは,そのまま卒業論文になるような立派な代物ばかりです。文献調査にとどまらず,自ら現地に足を運んで調査を重ね,現状分析を深めているもの。個別具体的な企業の視点から,市場調査(アンケート調査)を行い損益計算のシミュレーションを踏まえて市場参入の是非を論ずるもの。地方自治体の行政組織と連携しながら,地域の課題克服を目指した提案とその実験,等々。私自身,いくつかの報告には思わず「ほほぉ~」と声をあげてしまいました。

少人数教育
 学生たちの研究をここまで高めていくのには,指導された先生方が相当の時間と労力を費やしたに違いありません。懇親会での会話,審査結果の発表に沸き立つ学生と教員の姿。そうした様子に学生と教員との一体感が伝わってきました。
 教育とは,つまるところ学生と教員との協同作業であり,そこに強い信頼関係がなければ,大きな成果は期待できない。よく言われるように,教育の手法や小道具を形ばかり真似しても,使い手の情熱や魂が入らなければ効果は上がらない,ということでしょう。
 かつて,日本の大学はどこでもマスプロ教育が常態化していました。収容人数が1,000人を超える大教室を複数抱える大学も珍しくありませんでした。しかしいまどき,そんな大学は珍しいでしょう。現在,名古屋学院大学で「最も大きな教室」のサイズは,収容人数が280人です。ゼミに限らず,講義科目でも少人数で行う授業が増えてきました。少人数の方が教育効果が高いと考えられているからです。
 しかしそれでも,私たちは改めて次のことを自問しなくてはなりません。ゼミや少人数クラスの授業の中で,私たち教員は学生と一対一で真剣に向き合い,顔が見える教育をやっているだろうか? 学生と信頼関係をしっかり築き上げているだろうか? 少人数クラスに見合った目配せが本当にできているのか? 期待通りの成果が得られているのだろうか?
 学生たちと真剣に向き合う商学部の先生たちの姿を見て,そんな思いに駆られました。研究発表会に参加された学生のみなさん,教員のみなさん,お疲れ様でした。

受賞チーム
 なお,最終成績は以下の通りでした。
【グランプリ】
○未来ガジェット研究所(三輪ゼミ)「東南アジアにおけるクールジャパン」
【準グランプリ】
○ヘルメス(濱ゼミ)「家庭用A3プリンターの認知~ブラザー社製品の普及に向けて~」
○Team T(伊藤ゼミ)「SNSを利用した減災まちづくり―大学生が進める災害対策プロジェクト―」
○アンビシャス(濱ゼミ)「成熟期・衰退期における戦略―カルビーの鮮度管理を例に―」
○MKW(佐伯ゼミ)「愛知県の起業支援制度」
○オラクル(濱ゼミ)「小さな結婚式の名古屋進出」
【奨励賞(日経ビジネス賞)】
○金のなる木(清水ゼミ)「軽自動車の女性ユーザー開拓を目指した販売促進戦略の提案」
○ゴジラ(山口ゼミ)「"ペンギン男子"を如何に飛込ませるか」
○ポイフル(佐伯ゼミ)「コメダ珈琲とスターバックスから学ぶホスピタリティ」
○Team I伊藤ゼミ)「コンテンツツーリズムをもちいた地域活性化」
○レーヴ(濱ゼミ)「青果物卸売業の存在意義~生き残る方向性~」
○もしもしファミリー(上田ゼミ)「スーパー銭湯―スーパー銭湯のマーケティング―」

新年ご挨拶
 新年,明けましておめでとうございます。本年が皆様にとって良い年でありますよう心からお祈り申しあげます。また,本年も倍旧のご指導・ご鞭撻のほどお願いいたします。
 さて,年末年始の休暇はいかがお過ごしされたでしょうか?この休暇が皆さんの鋭気を養う絶好の機会になったことと信じます。私自身は,普段できない実家の庭掃除に励み(しかも一週間近くも),大いに気分転換ができました。そして新年を迎え,学生のため,大学のためにしっかり働くぞと,改めて強く決意したところです。

変革期を迎えた名古屋学院大学
 さて2015年は,名古屋学院大学の未来を左右する正念場の年であり,大変革の年であると認識しています。創立50周年を祝った昨年をバネに,今年は新たに現代社会学部・国際文化学部そしてこどもスポーツ教育学科が開設され,学部全体で8学部11学科体制がスタートします。
 また,新学部・新学科の誕生に伴い,母体となった経済学部,外国語学部,スポーツ健康学部もそれぞれリニュアルされ新たな船出を迎えます。さらに,法学部は開設3年目を迎え,在学生たちの就職や進路を具体的に視野に入れたキメ細かな指導が本格化します。商学部やリハビリテーション学部もこれまで以上に魅力溢れる学部に進化します。
 いずれの学部も最大顧客である学生たちの満足度を高め,絶え間なく教育改革を進めて参ります。私自身は勿論ですが,教職員一人ひとりが大学の魅力を高めるために行動していきたいと思います。建学の精神「敬神愛人」を改めて強く意識し,それを具現化し実践して参ります。

変動期のヒツジ年
 ところで,今年はヒツジ年です。ヒツジは穏健で従順,平和的なイメージがあります。しかし歴史を紐解くと,そのイメージとは異なり,ヒツジ年には思いのほか大きな社会変動があることを知らされます。
 例えば,前回のヒツジ年の2003年には,中東を今の混沌とした世界に変えてしまったイラク戦争がありました。また,前々回のヒツジ年の1991年には湾岸戦争が起きました。奇しくもこれら二つの戦争に対峙したアメリカ大統領は,親子二代のパパ・ブッシュとブッシュ・ジュニアでした。さらに,同じ年の年末にソビエト連邦が崩壊し,米ソ冷戦が終結します。
 一方,日本国内ではこの年に,株や土地といった資産価格が大暴落し,景気の大転換期を迎えました。バブル崩壊です。その後に続く長い低成長期が「失われた20年」と呼ばれるものです。
 2015年のヒツジ年に戦争や経済危機など起きて欲しくはありません。しかし現実には,そうした混乱を引き起こしそうな不安要素が存在することも否定できません。何とはなしに「嵐の前の静けさ」のような無気味さを感じているのは,私だけではないと思います。そう思っていた矢先に,パリでイスラム過激派によるテロが起きました。

ウールのセーターのように
 もしかして今年は,予期せぬ大事件があるのかもしれません。しかしそういう中にあっても,私たちは個々の学生と向き合い,彼ら彼女らが確実に成長し,社会にとって有為な人材となって巣立っていくよう確かな教育を進めて参ります。
 冬場にウールのセーターが私たちを温かく包んでくれるように,私たちも「敬神愛人」の温かさで学生たちをくるみ,麗しい(ウールわしい)年にしたいと思います。
 本年もどうぞよろしくお願いします。

影島香代子さんを迎えて
 5月28日(水)午後1:30~14:45に,法学部主催の講演会がクラインホールでありました。演題は「コミュニケーション力の流儀」,講師は影島香代子さん。影島さんは静岡放送や名古屋テレビの局アナを経て,現在はフリーのアナウンサーです。数多くの番組や取材インタビューの経験と自ら体得したアナウンスの訓練法に基づいて,他者とのコミュニケーションを深めるコツや技法を,実演を混ぜながら熱心に語ってくれました。
 プロのアナウンサーが語る「コミュニケーションの流儀」とはいかなるものか? 阿川佐和子の『聞く力』の類のことか? はたまた「正しい言葉の使い方教室」か,などと想像しながら,私も聴衆の一人に加えて貰いました。
 大学教員も人前で喋ることが仕事です。研究し論文を書くことは「喋ること」と離れますが,教室での講義や社会人向けの講演,さらには学会発表も「喋り」仕事です。プロのアナウンサーに学ぶことは相当ありそうです。
 講演会の司会は法学部の山内教授。遠藤法学部長の挨拶の後に,影島香代子さんがステージに上がりました。
 『人は見かけが8割』。そんな本が店頭に平積みされベストセラーになったのは数年前のことです。人に見られ人前で喋るのが仕事のプロのアナウンサー。容姿やファッションもさることながら,声も第一印象を形成する大きな要素です。「皆さん,こんにちは」の第一声は,明るいハキハキしていて元気創造の源のようです。聴衆の掴みは,拍手の仕方指南と列ごとに競わせる拍手の大きさ。なぁ~るほど。こうして聴衆に肉体作業をさせ,ステージに意識を集中させるのだな,と感心。

講演内容のつまみ食い
 さて,講演で語られた話術の技法をつまみ食いしてみましょう。
【話し手の姿勢】
 まずは,声を出すための正しい姿勢から。会場に集まった法学部の1年生と参加していた教職員の全員が椅子から立ち上がり,胸を張って姿勢を正します。この時,両腕は真っ直ぐ下に下ろし身体の側面にピタッと当てる。それから腕は下ろしたままで,両手の手の平だけを前方に向ける。すると,肩が自然と後ろに引かれ胸が張り,綺麗な姿勢ができる。だから,スッとした綺麗な立ち姿を作るには,こうした手順を踏むと容易にそれができる。フムフム,なるほどねぇ~。
【声の出し方】
 次に声の出し方。これは腹式呼吸の練習から始まります。お腹に貯めた空気を喉の声帯に当てるようにして声を出す。腹式呼吸は出来ても,この声帯への空気の当て方というのがなかなか難しい。正しい「アイウエオ」の発声法も教えて頂きましたが,これはさらに高度なテクニックで,正直,腹判りしていません。
【発声練習】
 そして次は,正しい音を出しながらしっかり口の周りの筋肉を動かす発声練習。「アッ,エッ,イッ,ウッ,エッ,オッ,アッ,オッ」,「カ・ケ・キ・ク・ケ・コ・カ・コ」,「サ・セ・シ・ス・セ・ソ・サ・ソ」,「・・・・」とア行からワ行まで順々に進める。この発声練習が済むと,結構,口の周りの筋肉が弛緩し,口角も上がっているような気になるので不思議です。この発声練習は「ほうれい線」を消す効果もあるらしい。
【早口言葉】
 さらに早口言葉の練習。ここまで来ると,会場はハチの巣をつついたように喧噪です。そして学生の何人かが代表選手としてチャレンジし,最後は影島さんの模範演技。さすがに影島さんの早口言葉はよどみなく,プロとアマの差は歴然です。
【その他】
 この他にも「さすがにプロだね」と感心させられら技法の幾つかは次のようなものです。
 ①マイクの持ち方:マイクは下の方を持つとバランス良く綺麗に見える。今やカラオケで誰もがマイクを持つ時代。そこでは,マイクを口に銜えるがごとく接近させ,マイクの上の方を持ちがちです。ところが,立って話をする時のマイクの持ち方として,これはNG。この場合は,マイクの下の方を持ち正面を向く。すると,確かに綺麗な絵になるのです。ハハァ~ンと,感嘆。
 ②力点を置く言葉:同じ文章でもどの言葉を強く言うかで,聞き手の捉える意味が変わってくる。日本語は抑揚の言葉だから,どの単語を強調するかで,意味の捉えられ方が異なる。そりゃあ,そうだ。
 ③注意を集めるための間:私語で会場内が騒がしくなってきた時,聴衆の注意を話し手に向ける方法として「黙る」。これは「間を採る」とも言いますね。
 私も大講義室の授業で,「私語が五月蠅い」と思った時はこの手を使ってきました。しかも私の場合はさらに意地悪で,最後までお喋りしている学生に自分の視線レーザーを照射します。ロック・オン! じぃ~と黙り続けていると,潮が引くようにやがて教室内は静かになります。そして,視線レーザーを集めていた学生が喋るのを止め,その学生が視線をこちらに向けた時に言うのです。「そうです,君です。よほど面白い話があるようだから,ボクにも他の学生にそれを教えてくれよ」と。
 「間を採る」「間を置く」というのは,慣れない内は勇気が要ります。「間を採る」とは,話すことを期待されている人間に沈黙を強要することです。喋るのが仕事なのに,その真逆の行為をするのですから,実行に躊躇しがちです。でも,実際にこの技法を使い,その使い方に慣れてくると,「黙り」が静寂形成に有効な手段であることが判ります。
 ④コミュニケーションに必要な観察眼:初対面でもスムーズなコミュニケーションを運ぶために,対峙した相手の5つの「良い点」を見つける。こうした訓練を続けていると,いつの間にか観察力や質問力が高まってくる。そうですよね。
 ⑤映像を実況する:アナウンサーが行うライブ中継の如く,見えるもの,感じるものを声に出して言い続ける。これは「喋り続ける,言葉をつなげる」訓練ですが,即座に状況に相応しい単語を選び出す能力の開発には,こうした不断の努力が必要なのでしょう。

 こんな風にして約1時間半の講演が終わりました。講演後も何人かの熱心な学生がステージ周辺に集まってきて,影島さんを質問攻めにしていました。

講演の効用
 ところで,今回の講演はプロのアナウンサーにコミュニケーションの技法を教授して貰おうというのが目的でした。今回の主たる聴衆は法学部の1年生でした。しかし,今回の話の内容に最も相応しい聴衆は,教員や就職活動を控えた3年ではなかったか,と思いました。コミュニケーション技法は,プレゼンテーション技法に通ずるものがあるようです。姿勢,発音,発生,言葉の使い方,間の取り方など,教員や面接を控えた就活生こそ会得すべきスキルでしょう。
 また,その道のプロの話を聞くことは,本を読むのと同じで必ず何か新しい発見があると思います。私自身の経験でいえば,その講演テーマに大して関心が無い場合でも,講演を聞いた後には「学ぶこと,多かったなぁ~」と思うことが多々あります。話を聞いているうちにそのテーマに興味が湧くようになったり,これは自分が抱えている問題にも応用できそうだぞとヒントを得たり。そんな経験をするのは私ばかりではないから,講演会に人が集まってくるのでしょう。
 ですから,学生諸君もたとえ興味関心が薄いテーマでも,積極的に講演の場に脚を運んで欲しいと思います。自分を刺激し自分を磨く機会になり,必ず良いことが待っていると思います。


ニコニコ生放送の現場
 黄金週間の最中4月30(木)18:00~19:30。名古屋学院大学の曙館606室を放送スタジオに仕立てて,インターネットテレビ・ニコニコ生放送で「プロジェクト758(Project758)」の第1回放送が配信されました。番組中の視聴者数,書き込み数はともに全国から約1万を数えました。
 放送内容は,熱田区名物「蓬莱軒(ほうらいけん)
のひつまぶし」をモチーフとしたアニメ・キャラクターの創作工程です。出演者は,商学部の伊藤ゼミと山口ゼミの学生さんたち,プロの声優・洲崎綾(すざき あや)さん,熱田区長の宮木さん,木船(ちょこっと挨拶だけ)です。役回りは,司会者役の学生2名,キャラクターの構想を練る学生12名,コメンテイター役の洲崎綾さん。宮木区長は熱田区の紹介と「ひつまぶし」の食べ方指南が役どころです。
 番組制作の裏方を担うカメラ(6台)・照明(2台)・音声(長マイク2本)・ミキサー,タイムキーパー,ディレクター,モニター担当等も全て伊藤・山口ゼミの学生たちです。出演者・制作スタッフ全員が「この番組を首尾よくやるぞ!」と団結しているのは,傍で見ていてもヒシヒシと感じます。現場は,本番10分前からピーンとした緊張感。洲崎さんまでも「なんだか緊張してきたぁ~」と言っていました。
 現場を見て最初に感じたことは「恐るべしProject758」です。これは凄い。驚きです。古い歴史的資産を抱える熱田区の紹介に,真逆の現代的アニメキャラクターを用いる。まずこのマッチングに感心させられる。さらに,二つのゼミの学生たちがタッグを組んで熱田区の観光資源をモチーフとしたアニメのキャラクターを作る。その制作過程を生放送で全国配信する。しかもそのキャラクターに命を吹き込むためにプロの声優さんが参戦。そうした制作現場を学生だけで取り仕切る,というのですから。少なくても小生の発想の範囲ではありません。
 もちろん,この仕掛けの裏側には伊藤・山口両先生の並々ならぬ御苦労があることは想像に難くありません。ご苦労様です。お疲れ様です。また,現場にはこの3月に卒業した伊藤ゼミの先輩学生も応援に駆けつけていました。これまたエライ!

Project758とは
 ところで,「Project758」と聞いても馴染みの無い人が多いと思います。一体これは何だ,と。これは,本学が2013年度から文部科学省の財政支援を受けて進めている「地(知)の拠点整備事業」の取組みの一つです。商学部経営情報学科の伊藤ゼミと山口ゼミは,共同して「歴史観光まちづくり」に資するプロジェクトとして,このProject758を展開しているのです。 758という数字は「なごや(名古屋)」を表します。
 Project758では,5つのフェーズから地域資源をキャラクター化して,情報発信をしようと活動しています。フェーズ1では,ゼミ活動等で学生たちが地域を調査し観光資源の発掘を行います。フェーズ2ではインターネット放送を通じて視聴者参加型のキャラクター創作,フェーズ3は「マルチメディア表現」等の授業内でキャラクターを完成させる。フェーズ4は専門家の参加を仰いでキャラクターをレベルアップします。これには,①プロのイラストレーターによる本格的な画像仕上げ,②プロの声優によるキャラクターの「声」の獲得,があります。フェーズ5は地域の魅力を,創作されたキャラクターを含み,新しい視点で紹介するホームページの掲載です。ホームページのURLは
http://p758.jpですから,関心のある方は,是非,このサイトにお立ち寄りください。ホームページでは,①アーカイブ,②4コマ漫画,③ニコニコ生放送(ニコニコ動画),④ADV(ゲーム),⑤キャラクターを用いたドラマ,⑥Q&A,が展開される予定です。

アニメーション・キャラクター
 アニメーション・キャラクターは既に3体が完成をみています。①白鳥ユリ(名古屋国際会議場がモチーフ),②陵やまと(白鳥古墳がモチーフ),③白鳥しおり(白鳥庭園がモチーフ)がそれです。4体目となる今回のキャラクターは「蓬莱軒ひつまぶし」がモチーフです。名前は決まっています。「莱(あかざ)まひつ」。
 世間には,いわゆる「ゆるキャラ」が溢れ食傷気味です。Project758が創り出すのは「ゆるキャラ」ではなく,可愛く理知的なアニメーション・キャラクターで,しかも動いて喋る。そのうち歌を歌いだし,ヒットチャートに名を連ねるかもしれません。さらにドラマは映画化されるかもしれません。
 伊藤先生には,「48体作って『AKB48』にして欲しい」と伝えています。『AKB』はAtsuta Kawaii Beautyの略称です。ネット上でAKB48総選挙を行い,ステージのセンターを決める。どうでしょうか?

地(知)の拠点整備事業の狙い
 このProject758は,ゼミを核としたプロジェクト学習の一つです。このプロジェクトを通じて,学生たちは地域を調査し,観光資源となりそうなもの自ら発掘します。それを潜在的な観光客にアピールするために,チームでキャラクターを創り,ドラマを創り4コマ漫画を構想するわけです。
 だから当然ながらその過程で,役所の人達,地域の語り部,イラストレーターや声優,メディアに関わる人達など,様々な人達と接触する機会を持つことになります。また,チーム活動であるから,意見の食い違いや見解の相違を乗り越えて,一つのものにまとめ上げていかなくてはなりません。そのため,プロジェクト学習の要諦である課題発見・解決型の能力,調査・探査力,コミュニケーション能力,想像力,チームワーク力などを身につける格好の機会となります。
 地域を教材としながら地域に貢献する。まさに,「地(知)の拠点整備事業」の狙いとするところではないかと思います。Project758に直接参加する学生たちには,大いなる成果を期待しています。また,本ブログを読まれた皆さんも,是非,一度先のURL(
http://p758.jp)を覗いてみてください。そこでは,この文章で示した以上の驚きと感動が待ち受けていることをお約束します。

 2014年3月8日(土),午後2時から浜矩子先生(同志社大学大学院ビジネススクール教授)を講師に招いて,今年度最後の公開講演会をクラインホールで開催しました。浜先生の登壇は今回が2回目で,前回は昨年の3月8日でした。つまり1年ぶりの浜節を聞く機会となりました。
 今回も,参加者の事前登録は講演会の案内を公開した即日に満杯となり,多くの方々の申し込みにお断りを言わざるを得ませんでした。応募したのに席が確保できなかった方々には,心よりお詫び申し上げます。

開演の前に
 講演開始時間は午後2時。浜先生が名古屋キャンパスに到着したのはそれよりも1時間半ほど前です。時間的余裕を持って現地に到着するのが浜スタイル。今日も髪は紫,御召し物の色も紫です。全身パープルで,高貴なオーラがメラメラと燃えていました。
 1年ぶりの再会に,懐かしさのあまり思わず握手。前回の講演会が昨日のことのように思い出されます。講演前には1時間余の雑談時間を持つことができました。これは主催者の特権で,講演テーマとは離れた四方山話を楽しむことができる時間です。もっとも今回は,グローバル時代における大学像に関する話題が中心でしたが・・・。

講演の内容
 さて,講演内容です。今回の講演タイトルは「国々はグローバル時代をどう生きるか―国境なき時代への対応―」でした。前回の講演は,安倍政権が発足してから3ヶ月,「アベノミクス」という言葉も新鮮な響きをもっていた時期でした。それから1年が経過し,アベノミクスの実像も姿を現しました。そういうタイミングでの経済評論です。
 以下は,講演内容のエッセンスです(文責:木船)。

(1)グローバル時代に咲く「あだ花」
 ヒト・モノ・カネが国境を越えて動くグローバル時代にあって,従来では考えられない現象や行為が派生している。時代の「あだ花」である。仮想的世界から生まれたビットコインやリッチスタンがそれだ。ビットコインはネット上の仮想通貨,リッチスタンは仮想の「金持ち国」を示す。そこに住まう人間がリッチスタン人であり,彼らはキャピタルゲインにより巨額の富を持ち,租税回避地に住居を移して,既存国家に意味を見出さない。
(2)グローバル時代を生きる反解答
 あだ花も生まれるグローバル時代に国々はどのように生きるべきか?その反面教師(反解答)として安倍政権の経済運営(アベノミクス,成長戦略)がある。何故,安倍政権の経済運営が反解答か?それは,①人間不在(人間に目が向いておらず)であり,②時代不適合(グローバル時代との親和性が欠如)であるからだ。
 ①人間不在:安倍政権の「成長戦略」は,経済効率ばかりを追求し,人間を後ろに追いやっている。経済活動は人間固有の営みであり人権の礎であるべきものなのに,安倍政権の「成長戦略」は人間と経済を対峙させている。
 ②時代不適合:安倍政権の成長戦略は,富国強兵,世界制覇戦略の思想が色濃い。グローバル時代は誰も(どの国も)一人では生きていけない時代であり,「淘汰と共生」が共存する時代である。そういう時代にあって世界一を目指す戦略は間違っている。
(3)グローバル時代を生きる模範解答
 では,この時代に生きる国家の模範解答はどのようなものか?掲げる言葉は①「シェア(占有率)からシェア(分かち合い)へ」であり,目指す場所は②「多様性と包摂性(包容性,抱き合える力)」に富んだ世界だ。
 ①シェアからシャアへ:一昔前のように市場占有率を競い市場を奪い合うのではなく,互いに応分の負担や便益を分かち合う生き方を目指すべきだ。
 ②多様性と包摂性:目指すべき国家や地域の有り様は,多様性も包摂性も富んだ姿だ。X軸(横軸)に「多様性」,Y軸(縦軸)に「包摂性」をとって,国家の姿を類別してみよう(図1参照)。従来の日本は図1の第2象限にあったが,グローバル時代には図1の第1象限を目指すべきである。

講演を終えて
 資料は何一つ持たない。聴衆を飽きさせないよう時折ジョークを入れる。でも理路整然としているから論理は追い易い。終了時刻はぴったり予定どおり。相変わらず,浜先生は超一流のスピーカーでありパフォーマーでした。
 今回は,前回のアンケート調査結果を踏まえて,事前に質疑応答時間を20分間とることにしていました。予想通り何人かの質問者の手が上がり,それぞれの質問にも丁寧に答えて頂きました。参加者の満足度は,昨年にも増して高いものになったと思います。
 講演終了後の雑談の中で,オフの過ごし方が話題になりました。浜先生のご趣味は,演劇鑑賞とのこと。芝居も経済も人間の生きざまを投影したもの。芝居にみる人間心理の読み解きは,人間が行う経済活動の謎解きと近いものがあるそうです。だから,両方面白い。きっと浜先生は,命ある限り経済評論をしているに違いないと思います。
 今回も地域連携センターの教職員の方々には,準備段階から当日の運営までご尽力を頂きました。記して感謝申しあげます。ご苦労様でした。ありがとうございました。

多様性と包摂性(浜矩子講演2014の参考図).jpg