★Bridge★No.30 宇野 民幸 先生
スポーツ健康学部 宇野 民幸(うの たみゆき)先生です。
宇野先生は、「算数科教育法」など、教職・算数に関連する科目を担当されています。
現在、こどもスポーツ教育学科は2年生が最高学年ですが、
3年次の「初等算数」、4年次の「算数科教育実践論」や「教職実践演習」も担当される予定です。
それでは、先生の思いをご紹介★
■■■ どんな思いをもって、授業(ゼミ)に臨んでいらっしゃいますか? ■■■
ゼミはまだ始まっていませんが、授業やゼミを通して、自分が感じたことや疑問に思ったこと、迷ったことがあったら、それを表現できるようになって欲しいと思います。
これは、教員相手にだけでなく、仲間同士でも、相手が誰でもかまいません。
そのためには、教員がどんな方法を見せれば、そんなきっかけになるだろうかと考えています。
例えば、次回の授業では、私が履修生のグループ分けを行い、「どんなグループ分けにしたでしょうか?」ということを考えてもらおうと思っています。
単純に男女混合で『あいうえお順』分けしてあるグループもあれば、『出身地別』に分けてある場合もあります。
自分たちでグループ分けをすると、なかなか積極的にグループを作ることができず、じゃんけんやクジ引きで決めることが多いのではないでしょうか。その方がコンセンサスがとりやすいですし。
でも、グループ分け1つにしても、小学校の先生方は色々考えてこられたと思うんです。
その都度の配慮で、同じ部活のメンバーを集めたり、仲の良すぎる子たちを離してみたり・・・
ですから、学生には、『言われて答えが分かる』のではなく、様々なきっかけを与えることで、自らの気づきと表現に繋がる体験をさせたいと思っています。
「これなら自分たちで、別の案を考えられる!」という姿勢で、自らの発想を積極的に形にしてもらえると、そこから本当の問題点を考えられるようになると思いますので。
■大人の想像を乗り越えていく子どもたちに~教材作り~
算数科教育法では、疑問を持つきっかけを与えるような授業を心掛けています。当たり前と思ってきたことを、「あれ?考えてみると、なぜだろう?」と考え直すヒントになったらいいな、と思います。
例えば、「数字」について。
私たちは、「0,1,2,3・・・」という形の、ある意味殺風景で面白みのない数字を使っているのですが、これはなぜでしょうか。
この数字の形でなかったら、どんなものになると思いますか?
算数科教育法の本に、子どもに「数字」をつくらせた資料があるんです。
これは、子どもが作った数字で、顔の中に目や鼻を書き加えることで表わしています。これが「55」です。
大人だと、耳一つ一つが25なのかな、と考えるのですが、耳2個で突然「50」なんです(笑)
子どもって面白いですよね。
子どもって、こうやって、大人の想像を乗り越えていくんです。
これは「100」です。
これだと、例えば「300」という数を習ってなくても、表現できますよね?
勉強していないのに、簡単に「300」が書けちゃうんです。
子どもの発想って、こんなに自由で、こんなに面白い。
こういった資料に触れることで、教員をめざす学生が、子どもの視点に気付いてくれたら良いな、と。
こんな資料を自分でも準備して授業をすると、またそのさらに上を、子どもたちは乗り越えてくれると思うんですよね。
ですから、子どもに対して使える教材...学生たちが、将来"教材作り"をするときに、参考になるものを提供したいと心掛けています。
■子どもたちが初めて触れる世界の、難しさと面白さを体感する
「なぜ、10進法が使われていると思いますか?」と聞くと、半分くらいの学生はすぐわかりますが、考えてもよく分からない学生もいます。手をグーパーしながらヒントを出したりしてね(笑)
そう、たぶん指の数が10本で、ここに「10」があるから、10進法なんじゃないかと思います。
でもそうすると、もし世界が昆虫の世の中だったら、6進法だったかもしれませんよね?
1,2・・・5の次は、10になって、位があがると100になるわけですが、
これって、何という名前(数詞)で呼びますか?
「じゅう」でも「ひゃく」でもない。
結局、それを命名しないといけないと気付くわけです。
学生に名前を付けさせてみると、恥ずかしがりながらも「りょく」とか「りゃく」とか、「6」と絡めてうまいこと言うわけです(笑)
「むし」なんていう案も出て、一番良さそうなものを、授業では統一名称で呼ぶルールにするんです。
分かりやすく10進法で考えてみましょう。
「0~10」までは、全部新しい名前ですね。
そのルールを使って、「99」までは読むことができますが、「100」は、読めませんよね?
この数字を読むためには、「ひゃく」という、新しい名称を作り出す必要があります。
大人は慣れ親しんで「100」と言っていますが、この"当たり前"に見える「位取り」につまずく子どもがいます。
数学で習う『n進法』を小学校で使うわけではないですが、こんな風に考えると、
「あ、こんなに難しいんだ」と自分たちで体感できますよね。
学生には、子どもにとって「何がどう難しいのか」体感してほしい。
自分たちの感覚で、リアルに「楽しさ」や「難しさ」を実感してほしいんです。
■■■ 先生のお薦め本 ■■■
今回は、"今、学生に読んで欲しい本"のご紹介です!
『 市民科学ブックス 人間の顔をした科学 』
七つ森書館 高木 仁三郎 著
この本をお薦めする理由として、宇野先生は、こんなことを仰っていました。
『東日本大震災が起こって、福島の原発が問題になる前に、東海村JCO臨界事故という原子力事故があったんです。
原子力発電の工程においてバケツで作業をして、被爆による死者重傷者が出て、二次被爆者も含めて多くの被爆者を生んだ大きな事故になりました。福島の原発問題は知っていても、こちらは知らない学生が多いのではないかと思います。また、当時の報道を見て事故を知っている私たちの記憶からも、時と共に薄れていってしまいがちです。
この本には、まるで福島の原発ついて書かれているのではないかという原発問題が、専門の立場から書かれています。でも、この本自体はそう難しすぎず、読みやすいと思いますので、学生のうちに参考に読んでみてもらいたいと思います。』
■■■ 今日の一枚 ■■■
今日の1枚は、 " 先生の挑戦 " です!
作曲 & 東京オリンピック・パラリンピック エムブレム応募
宇野先生は、「素人ながらに歌やデザインをするのが趣味」なのだそうです。
♪作曲♪
宇野先生は、文科省の学習指導要領にある「算数科の目標」に音程を付けて、曲(歌)を作られたそうです。「こういった『目標』は、教員採用試験などでも穴埋問題として出題されたことがあって、覚えておくと役立つのですが、いかんせん『大事だけれど覚えにくい』。だったら、音に乗せて歌にしてしまえば、覚えることができるかもしれないと思って・・・。私は本当に素人なんですけれど、歌にしたおかげで覚えていて、試験で助かった、という学生もいたので・・・。」先生は、照れながら、控えめにそう仰っていました。
確かに歌の歌詞だと、忘れにくいし、思い出しやすいですよね。
歴史の年号を語呂合わせで覚えるように、長い文章は歌にして覚える。ナイスアイディアです♪
★東京オリンピック・パラリンピック エムブレム応募★
宇野先生は、東京オリンピックとパラリンピックのエムブレムデザイン募集に応募されたそうです。
先生曰く、「デザインも全くの素人なのですが、スポーツ健康学部生を教えていますので、基礎セミナー1年生の教材に良いかな、と思って。『お・も・て・な・し』の文字を、菊や桜の花びらの枚数で表現して、2つ合わせると日の丸が1つになるデザインを考えたのですが・・・残念ながら落選しました(笑)」
歌にしろエムブレムにしろ、宇野先生は、日々、アンテナを広く張って、"学生たちの気付きや学び"に繋がる事柄を探したり作ったり、色々と工夫していらっしゃることが分かりました。
先のお話にあった『教材作り』を、先生ご自身が体現していらっしゃるのですね!
初等教育の教え方や教材作りについて先生とお話してみたい方、
先生の作曲された歌を聴きたい方、
是非、宇野先生の研究室を訪ねてみましょう!
新しい"気づき"のきっかけを、得られるかもしれませんよ!
次回の★Bridge★も、お楽しみに!
チョッパー子4