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2017年10月 4日
中期留学報告(マキーワン大学 高野 裕章)
カナダから帰国して2ヶ月が経った今、留学中に体験したことを私のその時の心情を踏まえながら振り返りたい。カナダに着いたばかりの頃は、これからの生活への不安で押しつぶされそうだった。海外経験の少ない私は空港で分からないことが多かった為、拙い英語で職員に尋ねたところ上手く通じず、あしらわれるような応対をされたことから、カナダの人に冷たい印象を覚えた。空港から寮に向かうバスの車窓から見える風景は私がこれまで楽しみにしていたものであったが、日本とは完全に異なる見慣れない景色は、より不安を掻き立てる一因となった。
たどり着いた寮は想像よりも遥かに大きく、マッキーワン大学の留学生だけでなく、国内に住む学生、そればかりか他大学に通う人や旅行客の宿としても使われていた。つまり、そこに住む人は英語が話せるのは当たり前で、英語を上手く話せない私達は様々な場面で不利に働いた。オリエンテーションでは上手くコミュニケーションが取れず、恥ずかしい思いをすることもあった。部屋のベッドにシーツや毛布は用意されておらず、土地勘もなければ言語も通じない為、マットレスのみで過ごす寒い夜が続いた。シャワールームの水漏れやトイレのレバーが壊れるなど、トラブル等に見舞われながらも、少しずつ問題を解決していくことで現地生活にも慣れていき、徐々に心にも余裕が出てきた。
学期が始まるまでの間、交換留学生それぞれに割り当てられたバディの人に買い物に連れて行ってもらうなど、寮の近くを散策して日用品を揃えた。ルームメイトは年上のネパール人で、学期が始まる頃に寮に到着した。互いの文化の違いからか、彼との共同生活の中で困惑することも多かったが、フレンドリーで気さくに話し掛けてくれた彼のおかげで、英語の上達にも繋がった。
実家暮らしの私は一切家事をしてこなかったので、毎日の食事の用意等も私にとって新しい体験であった。寮の近くには十分な数のスーパーがあり、30分ほどバスに乗れば屋内遊園地やプールまである大きなショッピングセンターがあり、そこでは日本からの輸入品も多く売っていて、日本の家族から送られてきた即席麺等に加えて、それらは慣れない生活をする上で大きな支えとなった。
私達がESLの授業を受ける校舎は、寮から少し距離があるのでバスで通うことになった。80分の授業が1日3コマ、週5日同じ時間割で行われた。1クラスの人数は20人ほどで、年齢や出身国も様々であった。私のイメージでは、同年代の留学生と授業を受けるものとばかり思っていた。しかし実際は、英語圏以外の国から移住して来て英語を学習する目的で通っている人が多く、他の国からの交換留学生はESLではなくレギュラーの授業を受けていることが後に分かった。教師と同年代の生徒が多く、母語訛りではあるものの私達より英語も話し、進んで発言するなど、授業に積極的に参加する人ばかりで新鮮だった。日本の授業とはかけ離れた、英語しか通じない環境で学習することは、私にとって良い刺激になり、上達に繋がるのを強く感じた。
授業はカテゴリーで3つに分かれていて、それぞれの授業ごとに学ぶ内容が明確で、偏りなく様々な側面から英語力を鍛えることが出来た。スピーキングとリスニングでは、テーマに沿ったグループでの議論やプレゼンをこなすことで、英語での自然な会話を身に付け、読み上げられた文を基に質問に答えることによって、聞き取りの力を高めることが出来た。また、リーディングとライティングでは、チャプターごとにテーマの定められた本文を読み取った後クラスで話し合い理解を深め、自分の意見を基に正しい形式に沿って文法を意識したエッセイを書くことを練習した。ボキャブラリーでは類語を使い、これまでよりも品詞や単複を意識し、自ら例文を作ることで質の高い学習をした。
私が留学中で学んだのは語学力だけではなく、授業以外の生活の中にも自分の成長に繋がったと感じる場面があった。私の20歳の誕生日の2日前、動物園に行った日の帰り道、定期券付きの学生証と寮の部屋の鍵をバスの車内に置き忘れてしまった。昔から私が物をよく失くすのは分かっていたので、ネックストラップにひとまとめにしておいたのが裏目に出た。拙い英語を使い、落し物を管理する事務所に何度も電話を掛け、直接出向いたりして必死に探したが、結局見つからなかった。再発行等に必要な出費のことを両親に伝えるのは心苦しかったが、叱ることなく許してくれた。友人においても、一緒に探すことを手伝ってくれるなど、とても心強く頼りになった。近くにいるのが当たり前だった両親と離れること、またいつもの友人と距離が近くなることで、普段と違う人との関わり方をし、繋がりの大切さを再認識することができた。それは人同士に限らず、国単位でも同じことで、日本であれば見つけた乗客が運転手に届けるなどして落し物が見つかることが多いと思う。カナダは比較的良い治安がと言われているにも関わらず、危険と感じる場面もあったので、日本の治安の良さを改めて実感した。これは日本に住んでいる頃は当たり前で意識して生活することもないので、海外で実際に生活してみてこそ気づかされる部分だと思う。
またESLの授業の他に、ボランティアとして日本語の授業に参加させてもらうことで、授業外でも日本語を教えて欲しいと頼まれたり、一緒にゲームをして遊んだり、現地の学生との交流が増える良い機会となった。日本について彼らから印象を聞き、私達が教える中で、私達にとっては当たり前のことが、他の国では珍しいということを学んだ。一度、いつもの日常から離れてみることは、今までの考えをもう一度見直し改めるのに役に立ち、それは自分の成長に繋がると思う。
上で述べたように、留学生活は様々な人種や異なった文化の人と接する機会がたくさんあった。ネパール人のルームメイトはもちろん、ESLや日本語の授業でのクラスメイト、それに限らず、カナダには移民が多いため、街には色々な人が住んでいる。今までに生きてきた時間や、国家や宗教の影響を受けるその背景が自分とは全く違う人と接することが出来たのはとても興味深く、良い経験になった。留学は語学の上達以外にも、その期間の過ごし方によって得られるものは人によって様々で、より多くのことを経験し、自分の糧にした人ほど、その留学は成功したと言えるのではないだろうか。
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