『現代社会学部主催シンポジウム 森から見た日本 -「山の日」を前に森との付き合い方を考える-』リポート
HABARI YA MCHANA!(=こんにちは!)※スワヒリ語
2005年の『愛・地球博』で初めて「スワヒリ語」を学んだ、
ESCサポーターの重松歩月(法学部法学科4年)です。
7月6日(水)、翼館4階・クラインホールで
が開催されました。
今年の8月11日に「山の日」が施行されます。
このシンポジウムは、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨とした
「山の日」が施行される機会に、世界有数の森林国である「日本」の森林との付き合い方を
考えるものです。
今回は、ESCサポーター重松歩月による、「『現代社会学部主催シンポジウム
森から見た日本-「山の日」を前に森との付き合い方を考える-』リポート」を
お送りします!
はじめに、シンポジウムの趣旨説明として、現代社会学部教授の今村薫先生が、
①「現代社会における日本の森の役割」についてお話しされました。
その後、鈴木和夫氏(株式会社東海木材相互市場代表取締役社長)による、
②「コンクリート社会から緑の社会へ-戦後の政策と日本の山」をテーマとする講演と、
畠山重篤氏(NPO法人森は海の恋人理事長/京都大学フィールド科学教育研究センター
社会連携教授)による、③「森は海の恋人 人の心に木を植える」をテーマとする講演が
行われました。
最後に、鈴木和夫氏と畠山重篤氏をパネリストに、今村薫先生が司会となって、
④「パネル・ディスカッション」が行われました。
①「現代社会における日本の森の役割」:今村 薫 現代社会学部教授
『世界有数の森林国である「日本」の森林は、
どのような役割を果たしているのでしょうか?』
近年、森林は、木材を生産する場のみならず、自然保護運動や森林ボランティアなどの
「市民」を巻き込んだ活動の場としても役割を果たしているそうです。
先生は、森林が森林浴や人間が自然と交流する「ハピネス創造の場」としても注目されている、
また、森林の樹木が、水系を通じて海を豊かにしているともおっしゃっていました。
②「コンクリート社会から緑の社会へ-戦後の政策と日本の山」:鈴木 和雄 氏
『国土面積の約7割が森林である「日本」の木材需給は、
なぜ、減少傾向にあるのでしょうか?』
住宅着工戸数の減少などを背景として、建築木材の需要が減少していることが原因である
そうです。
そのため、林業においては、昭和55年をピークに木材価格が長期的に下落傾向にありますが、
近年は下げ止まりの傾向にあるということでした。
『なぜ、木造建築が減少してしまったのでしょうか?』
昭和25年、衆議院で「都市建築物の不燃化の促進に関する決議」が採択され、
建築基準法が制定されたことで、官公庁が建築物の不燃化を促進したことで、
木材が用いられなくなりました。
これに追い打ちをかけるように、昭和30年、「木材資源利用合理化方策」が閣議決定
されたことで、国および地方公共団体が率先して建築物の不燃化促進と、木材消費が
抑制され、木材の需給率が低下してしまったそうです。
『しかし、最近は、建築物の木造・木質化が推進されています。
なぜでしょうか?』
平成22年に、「公共建築物等木材利用促進法」が制定され、低層の公共建築物は
原則として木造とすることが決まりました。
これ以降、木造関係基準の見直しや、名古屋城本丸御殿木造復元工事着手などが推進
されたことで、建築物の木造・木質化が積極的に推進されるようになったそうです。
『日本の森を守るためには、森で育てられた木々を、
積極的かつ大切に利用し続けなければ、
森を元気にすることができません。』
鈴木氏は、最後にこう結ばれていました。
私は「森の木々を利用することも、森を守ることである」と、学びました。
③「森は海の恋人 人の心に木を植える」:畠山 重篤 氏
『「ブナ」の木は、なぜ「橅」と表されるのでしょうか?』
ブナの木は、繊維が複雑に絡んでいるため、加工することが非常に難しく、
また、机や椅子などに加工したとしても、腐りやすく、カビが生えやすいため、
長持ちしないそうです。
そのため、ブナの木は、古くから「役に立た無い木」と呼ばれ、
「木」へんに「無」と書いて、「橅(ブナ)」と表されていると、
畠山氏はおっしゃっていました。
『しかし、ブナの木は、本当に「役に立た無い木」なのでしょうか?』
日本には、『白神山地』があり、ユネスコ世界自然遺産にも登録されるほどの、
「ブナの森」があります。
白神山地では、森とは無縁な漁師が大漁旗を片手に集まって、ブナの木の植林を
盛んに行っています。
森は、雨水や水系などを通じて、海に豊富なミネラルをもたらしています。
そのため、一見、山とは関係なさそうな漁師たちが、海を豊かにする森に感謝し、
これからも海に豊富なミネラルをもたらしてほしいという願いを込めて、
ブナの木の植林を盛んに行っているそうです。
『森と海は、切っても切れない「恋人」関係にあり、
森を守ることは、海の豊かさを守ることに繋がります。』
私は「森を守ることは、海の豊かさを守ることに繋がる」と、学びました。
④「パネル・ディスカッション」
『なぜ、日本の森林や山里の環境が大きく変化したのでしょうか?』
日本は戦後、内陸部を中心に、高速道路・一般国道・鉄道などを整備したことで、
森林や山里の環境が大きく変化しました。
その際、内陸部と沿岸部をつなぐ「モノ」が、あまり整備されてこなかったのは、
森や里山の「緑」が、海を豊かにするために、大きな影響を与えているという認識が
薄かったためだそうです。
しかし、近年では、「全国植樹祭」や、漁師のみなさんによる「ブナの植樹」などを
通じて、森の緑が、豊かな海をもたらすことが理解されるようになったとのことです。
シンポジウムには、現代社会学部の先生や学生のみならず、学外の方々の姿も
多くみられました。
日本の森を守るためには、森で育てられた木々を、積極的かつ大切に利用し続けなければ、
森を元気にすることができず、豊かな海をもたらすことができないと考えることができました。
みなさんも、割りばしや鉛筆一本をも大切にする「心」を持ちましょうね(笑)
それでは、ASANTE!(=ありがとう!)※スワヒリ語