★Bridge★No.18 皆川 誠 先生
学生さんと先生を繋ぐ連続企画★Bridge★、今回の先生は・・・
法学部 皆川 誠 先生です。
先生は、「国際法1・2」「国際機構法」などの科目を担当されています。
それでは早速、先生の"思い"をご紹介します★
■■■ どんな思いをもって、授業やゼミに臨まれていますか? ■■■
■学生さんたちに伝えたいこと
私は、学生さんたちが社会に出たときに、
社会の一員として受け入れてもらえ、しっかりと生きていける人間
になってほしいと考えています。
そのために何が重要か、ということを常に考えて授業をしています。
今の学生さんたちは、「個性を大切にする」という育てられ方をしています。
では、いざ社会に出たら、まず個性が注目されるのか?
私は、そうではないと思います。
「自分はこの人と仕事をしていけるか?」
「自分にとって迷惑になるような要素が無いか?」
人の話をきちんと聞く、時間を守る、メールでのやりとり・言葉遣い
...礼儀・常識の範疇に入ると思うのですが、社会では、
そういったことができるかどうかを1つの信頼の尺度として見る
と思うのです。
そこが入口ですので、その部分ができていないと、何ができるか、
どんなスキルがあるかということを見てもらえないんです。
個性が発揮できるのは、当たり前のことができてから。
常々学生さんたちにも伝えています。
「 "この会社で自分の個性が発揮できるか"と悩む前に、
社会に受け入れてもらえる前提を整えなさい。」
※ ※ ※
"社会の一員として受け入れてもらえ、しっかりと生きていける人間"とは、
どういうことでしょうか。
4つの視点から、皆川先生が学生さんに伝えたいことをまとめてみました。
<1>人から信頼される人間になってほしい
卒業して職につけば、大抵の場合は、人生の多くの時間を職場で過ごすことになります。
社会は、人の集まりです。その中で、どうしたら幸せになれるか?
まず大切なのが、「信頼」だと思うんです。
信頼を得られるということと比べると、何ができるか、どんなスキルがあるかは
次に考えればいいこと。逆に言えば、信頼を得るのに何か能力が必要であれば、
努力したらいいわけで、能力ありきではないと考えています。
なので、私は、人の信頼を失うような行動をとっていないか、ということに
常に目がいきます。
<2>公共性・社会性を考えられるようになってほしい
「個人個人が社会に対して責任を負っている」ことを自覚できる人間になってほしいと
考えています。
自分のしたいことをする、という感覚で動くのが人間ですが、みんなが自分のしたいこと
ばっかりしていたら、社会は成り立たないんですよね。
「自分の行動が社会にとって迷惑になっていないか」、「誰の為に行動するのか」
ということを、常に考えられる人間になってほしいですね。
そういったことを考えながら生活していくと、世の中に対して、
「こういうことはおかしい」という"義憤"が持てるようになるんですね。
世の中で何が正しくて、何が正しくないか、はっきり言えることは多くないと思うんです
が、公共性・社会に対する責任ということを常に考えれば、
「これは明らかに間違っている」という感覚を持てると思うんです。
間違ったことに対して、無自覚に加担することのないようにしてほしい。
そういう行動は、やはり信頼を失うことになりますし。
<3>バランス感覚を身に付けてほしい
自分が偏った考えを持っていないかということを、常に意識するようにしてほしいですね。
法律って「正義」「衡平」といったイメージが浮かんでくると思うのですが、権力を持った
人が法律を利用して統治・支配するという側面も、確かにあるものなんですよね。
私は国際法をやっていますので、特にこのことをよく考えます。
例えば、今の国際法は、元々は「ヨーロッパ国際法」と呼ばれていました。
つまり、ヨーロッパ発祥なんですね。
そういう意味では、ヨーロッパの人達に都合がいいように色々な法制度ができているという
面があります。彼らにとっては、「これが国際法なんだから、この法に従うべき」という
感覚なわけですが、非ヨーロッパ圏の人間にとって、それが必ずしも良い法制度かという
と、そうでない部分もあるんです。
「法律=正しいもの」と盲目的に考えるのも危険なんですね。
そういったことに気づけるよう、感性が磨けるような授業をしたいと思っています。
法律というのは「一定の時代の、一定の地域の社会の価値観」を反映しているものなので、
価値観が変われば法律も変わるんですね。
例えば、銃の所持について、日本では禁止されていますが、アメリカでは国民の権利です
よね。
これ1つとっても、ある国と別の国とが、同じ価値観で動いていないということがわかる
と思います。
こうやって違いがあったり変わったりするものだからこそ、自分たちが法の適用を受ける側
として、どんな内容だったら自分たちは受け入れられるのか、ということを、
自分たち自身で考えられないと、健全な社会ではないと思うので、自分でそういう感覚を
身に付けられるようになってほしいですね。
「世の中の流れはこうなっているけれど、本当にそれでいいのか?」という
疑問を持って考えられることが大事なんです。
「これは正しい」「こっちは間違っている」という「思い込み」で判断すると、
最終的には自分が損することになるのではないかと思います。
<4>謙虚であってほしい
学生さんたちには、謙虚であってほしいな、とも思います。
「自分が正しい!」と思い込むのは、結局、「謙虚でないから」なんじゃないかと
思うんです。
これは、自信を持って行動するな、ということではないんです。
自分の考えていることは正しいのか、自分の能力はこの行動を取るのに追いついて
いるかどうか、ということを謙虚に考えられないと、自分のためにもならないですし、
人に迷惑をかけることになるので。
私自身もそれを大切にしています。
※ ※ ※
■教育方針について
私の教育の方針は、「欠点を矯正する」というものです。
長所を伸ばす、誉めて伸ばす、という最近の教育風潮の中では、
少数派になっているのではないかと思います。
でも、私は、それは違うのではないかな、と思っているんです。
長所や得意なことって、他人から言われなくても伸びませんか?
好きなことって、ストレスもないですし、誰かに言われなくても自ら進んですると
思うんです。
世の中に出た時に、どんなことで失敗するかといったら、
欠点が顕在化した時ではないかな、と。
これはプロ野球の元監督である野村克也さんの受け売りなのですが、バットを振る
腕の力は、弱い腕の方の力しか出ず、強い腕の方の力は殺されてしまうそうです。
短所は、長所を殺してしまうことがあるので、そういう意味では、
短所・欠点を、教育を受けられる期間に減らしていくことが大切だと思うんです。
自分が得意ではないことに対して努力するということは、ストレスがかかりますし、
嫌なことですが、私は、人はその過程を経ないと成長しないと思っています。
人間って、ツラいときにこそ伸びると思うんです。
なので、積極的に自分を追い込むというか、自分が成長するチャンスにしてほしいですね。
私の好きな言葉の1つに、野村さんの
"『失敗』と書いて『成長』と読む"
というものがあります。
今のうちに、たくさん失敗しておくといいと思います。
※ ※ ※
■授業スタイルについて
基本的にはオーソドックスな授業スタイルです。
あるテーマを与えて、自分で文献の調査をさせ、それをレジュメにまとめて授業で報告
する、というスタイルです。オーソドックスな方法が、実力をつける一番の近道ですし、
調査・まとめ・報告発表という行動は、社会に出てからも同じように行うことだと思い
ます。
私の考える基準に達しない場合は、そこに達するまで何度でも繰り返し指導します。
私はしつこいですよ(笑)
法学部はまだ3年生までしかないですが、私のゼミ生は「こんなにピリピリした授業は、
他にはない」と言います(笑)
※ ※ ※
■気をつけていること
私自身は、学生さんのみならず、保護者の方に対しても責任を負っているのだという
自覚をもたなければ、と思っています。
また、彼らに輝いてもらうには、教員自身も輝いていないといけないとも思っています。
そのためには、教員も実力を持っていないといけないので、自分の研究に手を抜かず、
学生に信頼されるように努めています。
そういう意味では、学生さんたちと接する時は、いつも非常に緊張していますね。
■■■先生のお薦め本■■■
皆川先生からのお薦め本はコチラ↓
『ピースメイカーズ』
マーガレット・マクミラン著 芙蓉書房出版
第一次世界大戦の戦事後処理を話し合うために開かれた、パリ講和会議の内幕を扱ったお話です。
パリ講和会議は、当時の世界の大国の国家的指導者が半年もの間パリに集まって話し合った、世界史上稀に見る
会議で、ここで決めたことの中には、現在起こっている国際紛争の根本的な原因になっている事柄もあるのだとか。
集まった各国の指導者も、私達と同じ人間で、個々の性格の違いや能力的な限界があって、自らの限界に直面
した時に、そういう人達がどのような行動をとるのか、見どころの一つとのことです。
また、国家の指導者といえども人の好き嫌いはあって、それに左右されて世界的な決定がなされていたりする
ところも垣間見え、まるで実際にパリ講和会議を見てきたかのような臨場感があってとても面白いのだそうです。
学生のうちに、歯ごたえのあるものを読んでほしい、とのことで、ご推薦いただきました。
■■■今日の一枚■■■
今回は、先生の趣味に関する1枚です!
先生はマンガやアニメが大好きなのだそうです。
そして・・・この写真の先生がお持ちのイラスト、なんと、先生ご自身が描かれたものなのです!
一時は本気でその道に進むことを考えていらしたという先生。
その腕前は、プロが描いたかと見紛うほど。
写真だと、わかりづらいのがとても残念です!!
実物が見たい、話がしてみたいと、心くすぐられたあなた!
オフィスアワーなどを活用して先生の研究室を訪問し、イラストを見せていただきつつ、
お話しをしてみてはいかがでしょうか。
次回の★Bridge★も、お楽しみに★
チョッパー子