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2012年11月 5日アーカイブ

講座の概要

 

 10月17日(水),午後から経済学部主催の就職対策特別講座が開かれました。開催案内のビラにはキャッチコピー「おじけづくな,動きだせ!」の文字が躍り,なかなか刺激的です。講演者は,本学の卒業生(85E)でキイストン社を経営する細見昇市社長と,今年10月に東証上場の最年少記録を塗り替えた(21歳1ヶ月)話題のリブセンス社の村上太一社長。キイストン社は飲食業界に特化した総合人材採用コンサルティング,リブセンス社はインターネットメディア運営を事業とする会社です。

 会場は,約300人が入れる曙館201教室でしたが,開演前から多くの学生が最前列席を陣取り,開演時間にはほぼ満席でした。主たる対象者は,就職活動を控えた経済学部3年生というものの,「他学部生も歓迎」とアナウンスされていたことから,会場を埋め尽くしたのは学部・学年に関係なく,社会への関心が強い熱心な学生集団でした。司会は,このイベントを企画した経済学部の河原林直人准教授です。

 

キイストン社長細見昇市さんのメッセージ

 

 細見さんは,自身の学生時代を振り返りながら,これから就職活動に向う学生たちへのメッセージを熱く語ってくれました。人材採用コンサルティングを営む細見さんは,人を見ることが仕事です。幅広い人的ネットワークを抱え,日常的に多くの企業経営者と接しているプロの目から見た,「魅力的な学生像とは」が語られました。それは同時に,本学OBとして後輩達への厳しく温かい激励の言葉でもあったように思います。

 細見さんのメッセージは,次のようなものでした。

○学生時代は,学生でしかできないようなことをしよう。自分の学生時代には,インド旅行,アルバイト,ボクシング,テレビの公開放送出演などを果たし,それが自らの自信や他者との差別化につながった。

○自己アピールのためには,他人と違う何かを持とう。

○素敵な笑顔を持とう。素敵な笑顔を持ち人に好かれるにはどうするか。多くの人と会うことだ。様々な人と会い,それぞれを生きた時間にするためには笑顔が不可欠。

○ハングリーになろう。ハングリーでいるとモノの本質が見えてくる。

○人の倍働いてこそ,周囲から認知される。リクルートに勤務した頃には,ノルマの200%達成を目標にしていた。1日400社を訪問したこともある。これで1日5件の成約を得れば,トップセールスマンになるし,他人も認めざるを得ない。

 

リブセンス社長村上太一さんのメッセージ

 

 新進気鋭の青年実業家である村上太一さんは,すらっとした長身を仕立ての良い黒のスーツで身を包み,颯爽と登場しました。ノーネクタイは精神的自由人の表れか? ニコニコと微笑みを絶やさぬ童顔は,色白で,見るからに優しそうな好青年。この人が,今を旬と世間が注目する若手実業家か,と感じさせるほどの清潔感を醸し出していました。

 村上さんは,ベンチャー企業を始めた大学生時代やリブセンス社の経営哲学を,にこやかにそして爽やかな語り口で話されました。

 村上さんのメッセージは次の通り。

○ビジネスの要諦は,日常感じている不便や問題の解決にある。そこに新しいビジネスがある。だから,常に「こうなったら良いな」,「これが問題」というものに意識を馳せている。

○壁にぶつかったら原点に戻る。そのためには,やりたい事を「言語化」しておくと良い。そうすれば,辛い時にもすぐ見直せる。

○やりやいことを「言語化」しておくと,その延長にある未来のやりたいことも見えてくる。

○「やりたいこと」はできるだけ早く見つける方が良い。「やりたいこと」をやらないのが一番の後悔になる。

○人の幸せが自らの幸せ。それがリブセンス(Live Sense)社の会社哲学。

○目の前のことを全力でやる。それによって未来の視界が開けてくる。

○たくさんのことを経験しよう。自身の世界が広がるから。

 

会場の反応とその後

 

 お二人の講演の後,司会の河原林先生がフロアに質問や意見を求めました。すると,学生たちから次々と発言がありました。起業に重要なことは何か,リブセンスの会社哲学は自己満足ではないか,学生時代に何を考えていたか,etc.。

 意外に感じたのは,学生たちの「起業」への関心の高さです。幾つかの質問はその関連でした。もっとも,今回の講師二人はともに起業家であり,それに興味ある学生諸君が相対的に多く集まってきた,という事情もあるでしょう。教員たちの通説の中には「今の学生は,行儀が良くて大人しい」というのがありますから,そうでない学生たちを目の当たりにすることは,新鮮な驚きなのです。いやいやどうして,わが大学の学生たちも結構,気概溢れる若者ではありませんか?自ら会社を興そうというチャレンジ精神を持つ学生たちの,元気に発言する姿に「ほぉ~」となりました。

 講演会終了後には,わずかな時間でしたが,控室で細見さんと村上さんと懇談しました。お二人の話を聞き足りないと感じたか,あるいは我がヒーローにもっと接近したいと感じたのか,数名の学生たちが控室に訪ねてきて,追加質問をし握手をして貰っていました。細見さんの鑑定では,こういう積極性のある学生は「買い」だそうです。

 「お役にたてれば,次回もやりますよ」と講師の温かい言葉に,河原林先生はじめ関係者一同,深い感謝の念。企画運営にあたった経済学部やキャリアセンターの皆さん,ありがとうございました。 大盛況の講演会でした。

サミットの概要

 

 10月13日(土)の午後,本学日比野学舎にて,地域連携センター主催「全国学生カフェサミット」が開催されました。これは,本学の学生たちが運営する店「マイルポスト」の設立10周年を記念する行事として行われました。マイルポストは,2002年に瀬戸市の銀座通り商店街の空き店舗からスタートし,2007年に大学本部が名古屋市熱田区に移転すると,日比野商店街に新たに「カフェ&ベーカリー」のお店として再出発しました。発足当時から企画や運営に熱い情熱を注いできた経済学部の水野晶夫教授にとっては,さぞ感慨深いものがあったでしょう。歴代のマイルポスト店長と祝賀会を催したに違いありません。

 さて,学生カフェサミットです。当日は,全国から16大学の参加がありました(注)。会議場の日比野学舎301教室は,ほぼ満席で100人強の参加となりました。日比野商店街の近藤一麿理事長や敬和学園大学の趙教授,神戸松蔭女子学院大学の山科さんにもご参加いただきました。お忙しい中,どうもありがとうございました。

 第一部は6大学の事例報告と記念トークライブ。「私たちのカフェ自慢」と題した事例報告では,6大学が店舗の紹介と活動内容を各5分間という短時間でプレゼン。続くトークライブでは,「猿カフェ」を展開する「クリエイトワークス」「SARU」代表取締役の猿渡弘太さんの講演でした。

 第二部は,「次の10年に向けて―学生カフェの運営成果と今後の展開の方向性を問う―」と題したトークセッションです。猿渡さんにコメンテーターとして入って貰い,本学経済学部の井澤知旦教授の司会進行のもとに,各大学のカフェ代表者が本音を吐露する時間となりました。

 

それぞれのカフェ

 報告をした6大学のカフェはそれぞれ個性的でした。

 新潟県新発田市にある敬和学園大学の「まちカフェ・リンク」は学生と市民主体のコミュニティ・カフェを目指し,社会福祉の事業として運営されています。報告者の石田さんと川上さんのお二人は,いずれも人文学部共生社会学科の学生です。学んでいる社会福祉を実践に活かしているのでしょう。地域の特産品を扱った商品開発は,極めてもユニークです。

 一橋大学の「Caféここたの」は,年間売上額670万円と,今回参加カフェの中では圧倒的な収益力を誇ります。「ここたの」は「ここ楽しい」の略語だそうな。運営主体はNPO法人,ロケーションも商店街のアーケード内,営業は水曜日を除いて毎日,食事メニューは一般のカフェに劣らずとても豊富です。学生カフェとは思えぬ本格派。

 和歌山大学の「カフェWith」は,安達先生のゼミ生がゼミ活動の一環として運営しています。生きた経済と地域を学ぶのが狙い。その場所は,空き店舗からオープンカフェまでと多彩です。オープンカフェは,市内各所でイベントに合わせて開店します。

 広島経済大学の「Café Time」は,平日(月曜~金曜)に12:00~21:00まで営業している,これまた本格的なカフェです。運営組織も執行・広報企画・経理・商品開発・総務などの部を構成し,まるで会社組織。実際,商品開発には相当の労力を費やしているようで,オリジナルメニューに工夫の跡が伺えます。

 香川大学の「和カフェぐぅ」は,瀬戸内芸術祭が行われるアートと環境の島「直島(なおしま)」で展開しています。題して「直島地域活性化プロジェクト」。営業は,観光客が「直島」に訪れる土曜と日曜。学生たちは営業前日に食材を買い込み,船で直島に出かけ,閉店後にまた船で戻ってくる。だから,往復の交通費が嵩み利益は期待できない,という。それでも,このプロジェクトへの参加学生は65人と大所帯。

 そして,本学のマイルポスト。改めて紹介することもないでしょう。他大学に負けず劣らずの歴史と実績を誇ります。

 

猿渡さんのお話し

 

 猿渡さんは,名古屋で若者に人気の「猿カフェ」を展開している実業家です。カフェの運営にはプロ中のプロですから,猿渡さんの講演とコメントは,アマチュア経営者の学生たちには大きな刺激となったに違いありません。猿渡さんの講演とコメントから,興味深いメッセージを幾つか拾ってみましょう。

 ○客にとってカフェの魅力は,空間と自由な時間を楽しめること。だから,空間も接客も徹底的にお客さんの目線でサービスする必要がある。

 ○「猿カフェ」のテーマは,ちょっとした「非日常性」。ゆったりとしたソファ,一般家庭には置かないような調度品は,それを演出する小道具。

 ○営業や経営に大切なことは,情熱と継続。

 ○リーダーは饒舌であることが重要。

 ○愛される人間になろうとしたら,愛する人間になれ。

 ○人は人でしか磨かれない。だから,多くの人と接し磨きあうことが重要。

 ○夢を実現するにはコツがある。夢を掲げ,その夢の具体的状況を明確にし,そのために何が必要であるかをリストし,このリストを一つ一つ実現していくことだ。

 

対外試合の重要性

 

 全国学生カフェサミットは,マイルポストに参加している学生たちの対外試合でした。こういう対外試合をすることは,成長のために凄く重要です。何故か?それは,組織の中だけに意識が終始すると,ついと内弁慶で,独善的な「井の中の蛙」になりがちだからです。そうならないために,外部との交流が不可欠です。

 何でもそうですが,何事かを一生懸命やっていれば,必ず問題や課題が現れてきます。一人でやっていると,なかなか問題解決のための妙案も浮かびません。しかし,外部と交流することで,同業他者と問題を共有することができるし,上手くいけば自分では気がつかない解決方法を教えて貰うこともできます。つまり,対外試合によって,他の人も同じような悩み事を抱えているんだ,自分だけが悩んでいるのではないのだ,と問題を他者と共有し,一緒に解決策を探す友人を得ることができます。さらに,悩んでいた問題への対処法を教えて貰うこともできます。加えて,自分では気づいていなかった将来の発展方向や考え方さえ学ぶことができます。

 これは,教員が参加する外部の研究会や学会活動も同じです。なぜ,研究者は学会に参加するか?それは,自分の研究成果を世に問うことが第一の理由でしょうが,それを通じて自らの研究に対する他者からの評価や批判を聞き,さらに研究水準を高めるためです。そうでなければ,自己の殻に閉じこもった自慰行為と変わりません。外部を見,外部と付き合うことで,自らをより良く知ることができるのです。

 学内や仲良しサークルの内に留まっていては,自分自身を客観視できません。マイルポストに限らず,他の部活動やサークル活動を行っている学生諸君,あるいは学業で優秀な成績を誇っている学生諸君も,是非,様々な機会を利用して積極的に対外試合に臨んで欲しいと思います。闘う相手は狭い学内の人間ではなく,日本全国,そして広く世界の同業他者なのです。

 

マイルポストの関係者へ

 

 マイルポストの学生諸君にもお礼とお褒めを言わせて貰いましょう。マイルポストの運営には,サークル活動一般に共通する組織運営の難しさだけでなく,商売としての難しさも体験することでしょう。さらに,お客さんは内輪の友人だけでなく,外部の一般客も居ます。お客さんにとっては,運営主体が学生であろうが誰であろうが,お金を払って商品やサービスを買うのだから,マイルポストに対してもプロのサービスを求めます。そこで,貴方がたは社会の厳しさを体験します。そうして切磋琢磨の時間を持つのです。

 その成果の表れだと思います。全体司会を担当していた4年生の栁田亮平君も,マイルポストの代表としてプレゼンやトークショーに参加した3年生の山本美紗さんも,他大学の学生に気後れすることなく,見事にご自身の役割を果たしていました。あぁ,彼らは立派に成長しているなぁ,と感心しました。この活動で学んだことを,今後の就職活動にも,そして卒業して社会人になった後にも活かして欲しいと思います。

 また,日頃のマイルポストの活動や今回のイベントを支えてくれた学生諸君,彼らを支援している地域連携センターの教職員の皆様,本当にご苦労様でした。ありがとうございました。「猿カフェ」の猿渡さんと交渉し新機軸を拓いて頂いた立花さんに感謝。

 

(注)報告6大学:敬和学園大学,一橋大学,和歌山大学,広島経済大学,香川大学,名古屋学院大学。ポスターセッション参加10大学:北海道大学,青森中央学院大学,東北大学,横浜国立大学,松本大学,名古屋大学,滋賀県立大学,神戸松蔭女子大学,兵庫県立大学,九州大学。