2014年3月8日(土),午後2時から浜矩子先生(同志社大学大学院ビジネススクール教授)を講師に招いて,今年度最後の公開講演会をクラインホールで開催しました。浜先生の登壇は今回が2回目で,前回は昨年の3月8日でした。つまり1年ぶりの浜節を聞く機会となりました。
今回も,参加者の事前登録は講演会の案内を公開した即日に満杯となり,多くの方々の申し込みにお断りを言わざるを得ませんでした。応募したのに席が確保できなかった方々には,心よりお詫び申し上げます。
開演の前に
講演開始時間は午後2時。浜先生が名古屋キャンパスに到着したのはそれよりも1時間半ほど前です。時間的余裕を持って現地に到着するのが浜スタイル。今日も髪は紫,御召し物の色も紫です。全身パープルで,高貴なオーラがメラメラと燃えていました。
1年ぶりの再会に,懐かしさのあまり思わず握手。前回の講演会が昨日のことのように思い出されます。講演前には1時間余の雑談時間を持つことができました。これは主催者の特権で,講演テーマとは離れた四方山話を楽しむことができる時間です。もっとも今回は,グローバル時代における大学像に関する話題が中心でしたが・・・。
講演の内容
さて,講演内容です。今回の講演タイトルは「国々はグローバル時代をどう生きるか―国境なき時代への対応―」でした。前回の講演は,安倍政権が発足してから3ヶ月,「アベノミクス」という言葉も新鮮な響きをもっていた時期でした。それから1年が経過し,アベノミクスの実像も姿を現しました。そういうタイミングでの経済評論です。
以下は,講演内容のエッセンスです(文責:木船)。
(1)グローバル時代に咲く「あだ花」
ヒト・モノ・カネが国境を越えて動くグローバル時代にあって,従来では考えられない現象や行為が派生している。時代の「あだ花」である。仮想的世界から生まれたビットコインやリッチスタンがそれだ。ビットコインはネット上の仮想通貨,リッチスタンは仮想の「金持ち国」を示す。そこに住まう人間がリッチスタン人であり,彼らはキャピタルゲインにより巨額の富を持ち,租税回避地に住居を移して,既存国家に意味を見出さない。
(2)グローバル時代を生きる反解答
あだ花も生まれるグローバル時代に国々はどのように生きるべきか?その反面教師(反解答)として安倍政権の経済運営(アベノミクス,成長戦略)がある。何故,安倍政権の経済運営が反解答か?それは,①人間不在(人間に目が向いておらず)であり,②時代不適合(グローバル時代との親和性が欠如)であるからだ。
①人間不在:安倍政権の「成長戦略」は,経済効率ばかりを追求し,人間を後ろに追いやっている。経済活動は人間固有の営みであり人権の礎であるべきものなのに,安倍政権の「成長戦略」は人間と経済を対峙させている。
②時代不適合:安倍政権の成長戦略は,富国強兵,世界制覇戦略の思想が色濃い。グローバル時代は誰も(どの国も)一人では生きていけない時代であり,「淘汰と共生」が共存する時代である。そういう時代にあって世界一を目指す戦略は間違っている。
(3)グローバル時代を生きる模範解答
では,この時代に生きる国家の模範解答はどのようなものか?掲げる言葉は①「シェア(占有率)からシェア(分かち合い)へ」であり,目指す場所は②「多様性と包摂性(包容性,抱き合える力)」に富んだ世界だ。
①シェアからシャアへ:一昔前のように市場占有率を競い市場を奪い合うのではなく,互いに応分の負担や便益を分かち合う生き方を目指すべきだ。
②多様性と包摂性:目指すべき国家や地域の有り様は,多様性も包摂性も富んだ姿だ。X軸(横軸)に「多様性」,Y軸(縦軸)に「包摂性」をとって,国家の姿を類別してみよう(図1参照)。従来の日本は図1の第2象限にあったが,グローバル時代には図1の第1象限を目指すべきである。
講演を終えて
資料は何一つ持たない。聴衆を飽きさせないよう時折ジョークを入れる。でも理路整然としているから論理は追い易い。終了時刻はぴったり予定どおり。相変わらず,浜先生は超一流のスピーカーでありパフォーマーでした。
今回は,前回のアンケート調査結果を踏まえて,事前に質疑応答時間を20分間とることにしていました。予想通り何人かの質問者の手が上がり,それぞれの質問にも丁寧に答えて頂きました。参加者の満足度は,昨年にも増して高いものになったと思います。
講演終了後の雑談の中で,オフの過ごし方が話題になりました。浜先生のご趣味は,演劇鑑賞とのこと。芝居も経済も人間の生きざまを投影したもの。芝居にみる人間心理の読み解きは,人間が行う経済活動の謎解きと近いものがあるそうです。だから,両方面白い。きっと浜先生は,命ある限り経済評論をしているに違いないと思います。
今回も地域連携センターの教職員の方々には,準備段階から当日の運営までご尽力を頂きました。記して感謝申しあげます。ご苦労様でした。ありがとうございました。