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2017年11月 1日

中期(延長)留学報告(メンフィス大学 伊藤大希)

有機的な国

 この留学は、私が初めて海外で長期間滞在した経験であるとともに、初めての一人暮らしでした。そしてこの留学で私は、英語以上に多くのことを学びました。思い返すとこれらの経験は、今でも私の心に色濃く残っており、私の自信に繋がるような成功談から、今でも赤面するような失敗まで様々です。それらは全て。私の将来へ活かしていけるものでした。

 私の留学は、アメリカ テネシー州 The University of Memphis にて中期の公費留学でしたが、期間を延長し、約10ヶ月の長期となりました。生活は大学の隣の寮にて、4人で4つの寝室と1つのリビング・台所を共有する形でした。ルームメイトは学期毎に変わりましたが、日本人と一緒になることはありませんでした。

 食事は基本自炊でしたが、私が料理しているとルームメイトが私に声をかけてくるため、そこで色々なことを話しました。私がよく話したのが、父親の仕事の関係でスペインからアメリカに移住してきた、私と同年齢のルームメイトです。話の内容としては、ペパロニのピザが好き等のたわいもないおしゃべりでしたが、英語でのコミュニケーション能力を高めることができ、アメリカの文化の多様性を肌で感じました。その中で彼に聞いて驚いたのが、シーフードピザがアメリカにないということでした。

 当然国が違うと習慣や文化が違うため衝突が度々起こりますが、日本人がいないという事は、それを全部英語で解決しなければならないということです。英語を話さなければ生活できないという暮らしで、私の英語力は大幅に上がったと思います。同様に、外出し遊ぶことや、メンフィス大学との留学延長のやりとり、スーパーマーケットでの支払いのトラブル、クレジットカード紛失のやりとりも全て一人で解決してきました。これで英語力は当然ですが、一人で暮らしていくために自発的に行動し問題を解決していける力がついたと思います。この中で私は、多くの人に助けられました。大学の郵便局のお姉さん、留学担当の方々、授業を担当した教師の方々、Uberでタクシーに乗った時に気さくに話してくれた人々、そして同じクラスで学んだクラスメイトたちです。この人々とのふれあいで、アメリカという国が人あの温もりに溢れている、有機的な国でああると気づかされました。

 最も印象に残ったのは、IEI(語学留学生が在籍することになる大学内の組織)が週末に主催する食事会やパーティーです。私はどういうわけか日本人や文化の近いアジアの国の人とつるまずに、南米出身の友人とつるんでこの週末のパーティーに参加していました。この中で印象に残ったのが、なぜ留学に来たのかいう話題です。私は趣味でやっているスマートフォンのアプリ作成をする為には英語をどうしても使わなければならないから、語学留学で全世界を見渡す視点をつけ、なおかつ英語を学べるアメリカに来たと答えました。ちょうど、それを話していた友人の一人が、コロンビアで銀行関係のプログラムを組んでいたとのことでした。意気投合した私たちは、それから多くの事を語り合いました。彼の仕事のことや、お互いの家族の事、これから社会で必要とされる人材の事、そしてこれから社会に出て働く私の将来の事です。私は半分冗談で将来の夢はリッチになる事だ、と言いましたが、それに彼は大きく反対しました。それから30分ほど、他の人そっちのけで私達は話し始めました。彼が南米特有の早口の英語で喋り、私が必死こいて理解し、そして私は分からない単語で躓きながら、身振り手振りを交えて自分の考えを伝えました。私は彼との討論の中で話した内容以上に、母国語以外の言語を使って人に自分の思いを伝えるという事の楽しさを知りました。そして同様に、喋った言葉の真意を伝える事の難しさを知りました。日本語は主語を抜いて会話が成立する様に基本的に村社会、互いを知った上でコミュニケーションを取るという言語です。一方で英語は、大昔に商業のために作られた言語であり、知らない相手同士がやり取りをするという事が前提になります。私が冗談で言ったつもりでも、相手は大真面目に言っていると捉える場合もあります。私はこの会話で、今まで知識で学んできたことを肌で感じる事が出来たのでした。

 私がアメリカで最も苦労したのが、寮で共同生活するルームメイトとの生活習慣の違い、何が人の迷惑になるかと考えることの違いでした。私はアメリカ人とドイツ人と同じリビング・台所を共有していましたが、彼らは使った食器を片付けず、私のジャムや調味料、食器を勝手に使いました。これが単なる個人の問題か、それとも国民性の問題かは分かりませんが、どちらにせよ私にとって大きな問題でした。注意するにしても誰が使ったのかは分からず、冷蔵庫に張り紙を張り出すだけになり非常に歯切れの悪いまま帰国となりました。これ以外にも、リビングに友人を住まわせたりなど、「他人の迷惑を考えないのか!」と言いたくなりましたが、結局言う事はありませんでした。「沈黙はYesと同じ」という事は知識として知っていましたが、どうも人に強く求める事のできない私の悪い癖により、一人でストレスを抱え込む形になってしまいました。つまり、アメリカで生活する事の厳しさの洗礼を受けたということです。

 IEIの授業ではプレゼンテーションをすることと、小説を読める様になるが大きな目標であったと思います。レベルの低い授業の頃から、プレゼンテーションは何回も行われました。そしてプレゼントテーション後には、分かりにくかったところや質問者の興味のあるところに矢継ぎ早に質問が来ます。決して日本のように、プレゼンテーション後の質問時間でシーンとなる事はありませんでした。私も他の生徒に負けじと他人の発表をメモに取り、プレゼンテーション後の質問に参加しました。他人の発表に意見を持ち、それを投げかけるというのは為になり、非常に面白いと思った授業でした。リーディングの授業では、レベルが上がるごとに段々と読み物のページ数は増え、最終的に400ページほどの小説を読むようになりました。内容も比例して社会性のある小説に代わり、私の受けた最後の授業ではユートピアとディストピアについて議論するものとなりました。そしてライティングは、それについて数百字で自分の意見を述べ、文法は厳しくチェックされ、完全に文法的に正しい文章を書ける様にするというものでした。私は英語で文章を書くことは得意でしたが、厳しく鍛え抜かれ使える英語に成長したと思います。

 このように、私の10ヶ月あまりのアメリカ生活・留学は非常に充実したものでした。アメリカの風を感じ、有機的な人々の優しさに触れ、この国の良さを実感しました。

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