★Bridge★: 2017年7月アーカイブ
リハビリテーション学部 佐藤 菜穂子(さとう なほこ)先生です。
佐藤先生は、「生体工学評価論」「理学療法学研究法演習Ⅰ・Ⅱ」「運動学演習」「物理療法学演習」
などの科目を担当されています。
それでは、先生の思いをご紹介★
■■■ どんな思いをもって、授業(ゼミ)に臨んでいらっしゃいますか? ■■■
リハビリテーション学部の授業は、難しいというか、すごく専門的で、
学生は学年を追うごとに授業に着いていけなくなることも多いんです。
ですから、授業の中でよく学生と話すようにしています。
何につまずいているのか分からないと、教える側もどこを説明したらいいのか分からないので、
授業の中で分からないことを聞ける雰囲気作りを大事にしています。
「なになに、どこが分からないの?」と掘り下げて聞いていくと、一年生の最初で習った初歩が
分かっていなくて、その積み重ねで理解ができないんだな、ということが分かったりするんです。
リハの授業って、例えば1年次の「解剖学」や「運動学」で学んだ内容が、その後の全授業に
繋がっているので、最初でつまずくと、ずっと訳が分からなくなっちゃうんです。
わからないから、ひとまずテスト前だけ暗記して忘れて...っていう悪循環になってしまうので、
できるだけ理解できるようにと思って授業をしているつもりですけれども、ど、どうだろう?(笑
■佐藤先生のご担当科目について教えて下さい。
私が担当しているのは、「運動学演習」や、「生体工学評価論」といった科目です。
1年次「運動学」という科目があって、そこで習った内容について、実際にデータをとってみる
のが「運動学演習」です。例えば、"歩く時の人の関節はこうなっているんだよ"とか、"ここの
関節を動かなくしたら、こんな歩き方になるよね"ということを見て、患者さんの「動き」について
の理解を深めるんです。
「生体工学評価論」も同じような感じで、人の動きに対してどんな力がかかっているのか、
ということを学びます。
■分析をするときには、どのようにされるのですか?
大学の中にある設備...例えば"モーションキャプチャーシステム"を使って人の動きを撮ります。
すると、その動きが、ゲームで使われているスティック人形のような形で、3次元的にデータで
出てくるんです。そこから学生は、動きについて考察したり、関節の角度を計算したり、データ
を自分のパソコンで分析していきます。ほとんどグループワークですね。1クラス80人くらい
ですが、9グループくらいに分かれてグループ毎にデータを取って、みんなでレポートをまとめる
ことになりますね。
■もしかして、グループの中の誰かの動きをキャプチャーするのでしょうか?
そうそう、そうです! 被験者も全部自分たちでやるんですよ。
■ちょっと気恥ずかしいですね。
そうなんです。
動きを撮るときには、ピッタリしたスパッツとか穿かなくちゃいけなくて(笑)
モーションキャプチャーって、結果的には棒人間のような動きしか見られないんですが、
その人の動きの癖なんかもわかるんです。よく見ると「これは誰々だ!」って分かったりする
ので、そういうところを患者さんを診るときのヒントにしてほしいですね。
癖が分かるということは、動きを評価する時の鍵となりますので、
そういうポイントがちょっとずつ分かってくれたらいいなと思っています。
■面白そうですね。
面白いと思います!
机上で学んだことが、実際に目で見られるようになる授業ですから。
私自身の研究も同じようなことをしていて、モーションキャプチャシステムを使っています。
私は、すっごい、研究大好きなんですよ!(笑)
大好きなので、この面白さを伝えたいな、っていうのは、ありますね。
ただ、テストが難しくて、単位を落としてしまう学生が多い授業でもあるんです。
結局、「こういう動きをしていたら、どう考えますか?」ということを理論的に書く形式の
試験にしているので、ちゃんとした日本語で自分の考えを表現しなくてはいけません。
1年生の時は暗記でなんとかクリアしていても、ここでは理論的な文章での解答を求めます
から、それは学生にとってはすごく苦手なことなんですよね。
■先生の授業で、面白さにハマる学生もいるのでは?
そうですね。2年次に、先にお話しした授業がありますので、3年次の卒業ゼミ選択の際には、
こういった分野に興味のある学生が希望して来てくれますね。
■先生のゼミはどんなゼミですか?
私は、2016年9月までオーストラリアに長期研修に行っていたので、
2017年度からまたゼミをもつことになります。
私の専門が"スポーツバイオメカニクス"なので、
先ほどから話しに出てくるモーションキャプチャーシステムなどで
スポーツの動作について研究するゼミです。
今までの傾向だと、アクティブな子たちが結構多くて、
「じゃあ、とりあえずみんなで集まってスポーツやってみようか!」ということもあります(笑)
かなり活気があって、「スポーツのリハビリをやりたい」という学生も集まってきます。
私のゼミでは、培ってほしいことが3つあります。
① 何に対しても疑問に思うこと
② 自分の考えを持つこと
③自分の意見をいうこと
ゼミって、3・4年の2年間、10人程度で同じメンバーの小さなクラスですよね。
その中で自分の意見が言えなかったら、社会に出てからも言えないと思うんです。
ですから、失敗してもいいから、ゼミでこれらの能力を培っていこう、というのが
私のゼミのテーマというか、大事にしていることなんです。
■具体的には、ゼミはどのように運営されるのでしょうか?
基本は研究をしているので、例えばある学生が「こういう研究をやりたい」って持ってきた
研究テーマに対してゼミ生みんなでディスカッションをして、「これはどう思う」とか
「これはどうなっている」とか積極的に学生同士で話をする時間にしています。
■ご指導をされていて、学生が「難しい」と感じるところは、どこだと思われますか?
学生は、自分の意見を持ったり、人に意見を言ったりすることは、結構できるようになるんです。
でもやっぱり、「文章で書く」とか「自分の考えを論理的に言う」というところでつまずいている
と思います。
やはり研究ですから、先行研究があって、自分の取ったデータがあって、
その上で自分の行ったことの説明や自分の意見を述べないといけないので、「論理的に」っていう
ところがすごく難しいんですね。
それと、学生は、頭の中に色々な考えがあっても、頭の中だけで考えていて情報整理ができて
いないせいで、文章として理論的にまとめられずにいることも多いんです。
そんな時は、真っ白な紙を渡して、それにひとつずつ
「このような現象がありました」
「だからこうです」
というのを絵に描いて整理するように指導しています。
この絵をもとに、こういう順番で論文を書きなさい、と教えると、みんな比較的良くなりますね。
★おまけショット★
↑座り仕事の時は、バランスボールで体幹を
鍛えることも。腰痛対策にもGood!
■「これだけは学生に伝えたい」ということは何ですか?
「興味を持つ」ということをしてほしいと、すごく思いますね。
実は私、大学の頃はそんなに情熱をもって勉強していたわけではないんです。
でも、理学療法士として働き始めて、「あ、こんなこともあるんだ!」と興味をそそられることが
出てきて。興味を持った内容の研究のために大学院に入り直して、今に繋がっているんです。
興味が全ての原動力だと思うので、何かに興味を持ってほしい。
嫌々やってたら、勉強も全然楽しくないし、覚わらないですよね。
でもみんな、好きなゲームのこととか、すごくよく知っているじゃないですか。
それと同じくらい情熱をかたむけられるものが大学の時にあると良いと思います。
今まで自分のやってきたことと、これからやっていくことを結び付けられたらより良いですね。
■先生がこの分野にハマったきっかけは?
私は、大学時代からずっとヒップホップダンスをやっていて、
研究も「ヒップホップダンスの動きを知りたい」っていうところから始まったんです。
「ヒップホップの動きを知りたい」
↓
「じゃあ、動きを知るにはどうしたらいいか」
↓
「モーションキャプチャーだ!」
↓
「だったらスポーツをモーションキャプチャーで研究できる大学院に入ろう!」
...っていう感じです(笑)
私の場合は、こんな風に他の興味のあることからうまく研究に繋がったので、
学生も、理学療法の難しいことに興味を持つというよりは、
自分のやってきたことや趣味をうまく自分の研究と繋げて考えられるようになれば、
楽しく勉強できると思うんです。
ですから、ゼミでも、そんな「きっかけ」を提供できればいいな、と思っています。
スポーツの動作といっても色々ありますので、例えば、今までどんなスポーツをやってきたのか
聞いてみて、"その競技の上手な人と自分を比べた時に、動きにどんな違いがあるんだろうか?"
といったきっかけを提供して、興味のあることからテーマを引き出して研究に繋げるように
しています。
■お話を伺っていると、本当に楽しそうですね。
楽しいですね!
私も楽しんでいるから、多分学生も楽しんでくれているんじゃないかな、と思っています。
瀬戸の大学祭では、学生と一緒にヒップホップダンスを踊っていますよ(笑)
■■■ 先生のお薦め本 ■■■
今回は、" アプリ "のご紹介です!
Podcastで「バイリンガルニュース」を聴こう!
Podcastは、iphoneにはデフォルトで入っているアプリのようです。
Androidではデフォルト設定されていませんが、自分でPodcastを聞くためのアプリをダウンロード
することはできます。
「バイリンガルニュース」と検索すると、たくさん再生リストが出てきました。
お薦めポイントについて、先生はこんな風におっしゃっていました。
「再生すると、女性(日本語)と、男性(英語)の会話が流れてきます。
題材として研究が扱われていたり、 "こういう研究チームはこんなことを発表した"といったことを
ディスカッションしたり...日本語と英語で聞けるので、学生のみなさんが聞いたら楽しいと思います。」
まさに、大学生の英語学習にはもってこいですね。
是非お試しあれ。
■■■ 今日の一枚 ■■■
今日の1枚は、 " 先生の宝物 " です!
誕生日にゼミ生にもらった、名前入りの焼酎
佐藤先生はお酒がお好きなのだそうです。
自分の好きなものをゼミ生が覚えていてくれて、誕生日に贈ってくれたら感激ですね
(しかも名前入り!)。
もったいなくて開けられず、研究室に置いてあるそうです。
先生は、
「お酒を贈ってくれたゼミ生たちと、卒業後に集まった時に開けたいな。卒業式でもいいな。」
と嬉しそうにお話し下さいました。
佐藤先生は、とても明るく、前向きなオーラあふれる方でした!
何より、研究が本当にお好きで、お話を伺っていると、聞き手もその面白さに触れて
みたくなります。
履修生だけでなく、先生のように自分の情熱を傾けて研究がしたい方、ヒップホップや
オーストラリア(パース)に興味のある方は、一度先生の研究室を訪れてみては
いかがでしょうか。
次回の★Bridge★も、お楽しみに!
チョッパー子4年