★Bridge★: 2017年2月アーカイブ

★Bridge★No.33 野村 良和 先生

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学生と先生を繋ぐ連続企画★Bridge★、今回の先生は・・・


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スポーツ健康学部 野村 良和(のむら よしかず)先生です。

野村先生は、2017年3月現在、スポーツ健康学部の学部長をなさっており、「健康管理論」「こどもと健康」「こども研究教育論」「スポーツ中級Aテニス」「スポーツ実技(テニス、スキー)」など、健康やスポーツに関連する科目を担当・分担されています
それでは、先生の思いをご紹介します★


 どんな思いをもって、授業(ゼミ)に臨んでいらっしゃいますか? 


スポーツ健康学部は2学科ありますが、いずれの学科でも、スポーツや健康に関する知識をできるだけ多く得て、その知識を使って自分で考え、行動できるようになってほしいと思いながら授業を行っています。


最近は、学生もなかなか新聞やTVを見ないので、正しい情報が伝わりにくいのです。
Webで不確かな情報を得たり、友達から聞いたり、あまり客観的ではない"流行"のような情報に触れる事が多いです。スポーツや健康は、さまざまなメディアで取り挙げられる機会が特に多い。
健康でいえば、その時々でさまざまなブームが起こります。
スポーツでいえば、最近はオリンピックのことが色々取り挙げられています。でも、自分のやっているスポーツには興味があるけれども、他の競技のことは全然知らなかったり、関東圏が会場だからか、全般的にあまりオリンピックに興味がない学生も多い。
オリンピックは東京だけのものではなくて、日本全国の問題ですから、今後の日本を考える上でも大きな節目となる催しとして、学生にも正しい情報を得ると同時に自分なりの意見を持ってほしいと思います。


●流行の健康情報などを授業で扱うこともあるのですか?


例えば、私が担当する「健康管理論」の授業では、健康について基本的なことから実践的な内容まで扱っていますので、現代的な問題、あるいは、報道で取りざたされた情報などを積極的に取り挙げながら、できるだけ学生の興味に繋がるようにしています。


スポーツや健康といった分野は、一般に流布された情報を整理し、間違った情報は修正しながら取り入れていきますから、結果としてマスコミより早く授業で取り挙げるということはほとんどありません。健康情報はどんどん流れていってしまいますが、学生のみなさんには、新たな情報に出会った時に、それの良い所・悪い所、間違っている所などがちゃんとわかるように、そういう理解の仕方をしてほしいと思います。


なぜなら、全国的に、全世代で一番生活習慣が乱れているのが、だいたい大学生~30代くらいなんです。高校までは、家で親が朝食を用意してくれていたのが、一人暮らしをはじめて、朝ごはんは食べずに起きた瞬間動き出して・・・という生活が、独身時代30代くらいまで続く。家庭を持つようになれば家族との関係でこれが是正されていくのですけれど。NGU生に限らず、大学時代は、朝食を食べなかったり夜型の生活になったりと、食生活や睡眠など生活習慣が乱れがちで、一番よくない時期なんですね。ですから、大学時代にあまり生活が乱れず健康な生活が送れるように、授業内容にからめて色々話すようにしています。
社会全体の傾向ですので、授業や大学の指導ですぐに良くなるとは思いませんが、少なくともそれが良くないと気付いてほしいと思っています。


●基本に重点を置いて、プラスアルファの知識を得るために授業で実践していることは?


例えば、小学校では「早寝早起き朝ごはん」という標語で、昼型の生活にして朝ごはんをしっかり食べましょうという指導を行います。小さな子の場合は「先生が言うから」とか、「なんとなくそうしなくてはいけない」とか、"言って聞かせる"ところがありますが、大学生の場合は、「なぜそれが良いのか、それを止めたら悪いのか」・・・例えば、「睡眠は人間にとってどんな意義があるのか」「なぜ運動をしないといけないのか」など「なぜか」という理論的で科学的な根拠を示して理解してもらい、「言われるからやる」のではなく、自ら判断して行動できるようにしています。


また同時に、運動することによる、実体験としての感覚的な成果も必要だと思っています。
私は実技の授業も受け持っており、主にテニスを、あと集中講義でスキーも担当していますが、そういった授業の中で、できなかったものが「できた」という実体験をすることによって、運動に対する積極的な姿勢が維持できると思うんです。
高校までは、みんな結構運動をしています。大学に入っても、部活動をやっている学生はやり過ぎぐらいやっていますけれど(笑)
一方で、大学生になった途端、全く運動しなくなる人もいます。一旦運動習慣が途切れると、また始めるのは難しいので、なんとか運動をする感覚や、「できた」という実体験を、授業を通して体感させたいと考えています。


●先生ご自身は、どんなスポーツをなさっていますか?


テニスは昔からずっとやっていて、職場のサークルに参加したり、地元の大会に出たりしてきました。瀬戸キャンパスに勤務してからは、スポーツの授業も担当していますし、職員の方たちと週一回夕方にテニスをしています。1月初旬はとんでもなく寒かったですけれど、1時間半くらい楽しみました(笑)


●研究演習はどんな風に進めていらっしゃいますか?


仕組みは先述の授業と一緒ですが、大きく分けて、前半は関連する基本的なことを教えて自分の考えを作らせ、後半は、自分の興味関心のあることを掘り下げていきます。そこに、前半で得た知識をうまく使ってほしいと思っています。

自分で疑問を感じて、何かに取り組み解決することが得意でない学生も多いので、まずは何でも自分の関心のあることについて、問答形式で「なぜそれに関心があるのか?」を突き詰めていき、自分なりのテーマを見つけられるようにしています。


●以前、模擬遠足の授業を拝見しましたが、色々な先生が、1つの学部を全員で面倒見ている印象を受けましたが。


そうですね。こどもスポーツ教育学科ができたので、学部の雰囲気が大分変わりましたね。
幼稚園・小学校の教職過程を作ったので、非常勤の先生方も含めて国・数・社・理から音楽などの科目まで、全科目の色々なタイプの先生がいます。
また、以前も「人間健康学部」として、現在のリハビリテーション学部とスポーツ健康学部が1つの学部だったこともあって、福祉、心理なども含め、全然違う領域の先生が沢山いらっしゃるんです。
そんな学部をまとめるためには、皆が共通でできることを一緒にやろう、と考えました。


1年生の「基礎セミナー」を12クラスに分けて、教員2人で1クラスを担当しています。こどもスポーツ教育学科は2015年度新設で、新任の先生が多くて、いきなりゼミを担当するのが大変だったという事情もあって、従来から在籍していた先生と、こどもスポーツ教育学科の新任教員をペアにして12クラスに配当したんです。これが結構うまくいったので、今年も引き続きこの体制を続けてきました。今、学部の教員は26名在籍しています。原則は1人ずつで担当したほうがいいとは思うのですが、これを2人で担当すると、同じ時間帯にほとんどの学部教員が1年生を受け持つことになるんです。

同じ時間に全員が同じ方向を向いて授業を行うということは、学部としても良いチャンスだと思っているので、来年もこの体制でいけたらいいと思っています。

学生にとっても、何か不都合があって一方の先生に相談しにくい場合があっても、もう一人の先生に相談できるというメリットがありますし、今のところはうまくいっています。


学部教員の共通理解・協力体制をしっかり作りたいということで、学部教員で正月旅行を行っています。今年で3年目で、今までに下呂温泉や昼神温泉などに行きました。大勢の先生方が参加してくださいますよ。


●「これだけは学生に毎回伝えていること」は?


私は、「学校保健」という、子供たちの健康をどうやって維持増進させるかという領域の歴史研究が専門なんです。歴史研究の原点といいますか、歴史から学んで今後に活かすという、いわば"温故知新"といったことに興味があるので、学生には、「どんなことが起こって、どういう結果になったのか」ということをしっかり把握して、過去に学んで今に繋がる教訓を多く知り、今後同じことが起きないように役立てていくということを期待しています。


●今、「学生に伝えたいこと」は?


よく「ニュースの深堀り」と言いますが、表面に流れている情報の、一歩でも半歩でもいいから掘り下げる、その行動を自ら行う、ということをしてほしいですね。

人から答えを聞くのではなくて、自分で調べ、確認する。

解説してもらって理解することも大切ですが、自分で「なぜだろう?」と思って追究してみるということを、やってみてほしいです。


今年(2016年度入学)の1年生は、去年の夏に選挙で初めて有権者になったので、投票したかどうか、いろんな所で聞いてみたんです。
そうしたら、1年生は結構投票に行っているんですよ。
これは多分、「来年から選挙権が与えられるから」と高校で指導が行われていたり、社会で話題になっていたからだと思うのです。


ところが、この投票率が、2年生になるとガタッと落ちる。
全国でも傾向は同じで、投票率は18歳は高いが19歳は低いということが起きているんです。
せっかく18歳が関心を持っているなら、その関心を持ち続けてくれるといいと思うのですが。


これに付随して、厚生労働省がお酒と煙草の解禁年齢引き下げや、オリンピック関係で居酒屋を禁煙にする法案を作成しているので、このあたりの話題は身近なんじゃないかと思い、授業で取り挙げたり、ゼミで討論させたりしています。
ここでも、一歩踏み出して、自分から情報を掴む姿勢が欲しいですね。


●自分が欲しい情報に辿り着くために、指導していることがありますか?


3年生は、自分の興味関心のあることをネットで調べて学び、4年生になると卒論を書きます。ここでは、いわゆる一般の間違った情報も含めたプールではなく、研究情報に限って探してみるという取り組みをします。文献検索ですね。論文を検索します。ネット情報はあてにならなかったり、いつの間にか無くなっていたりしますから。


●学生のみなさんと接する時に大切にしていることは何ですか?


「学生を子ども扱いしない」ということです。

子どもなんですけれどね(笑)考えもいいかげんだったり、ちゃんと文章も書けなかったり。
それでも学生が大人なんだということを周りが認めてあげないと。そうしているうちに、学生も成長するのでしょう。
私自身、学生時代は変に子ども扱いされるのが嫌でした。自分が嫌だったことはしない。たまたま、私が育った環境では、それを認めてくれた方もいたので、必ず同じ社会人として対等だということを心掛けています。私も学生も同じ1票をもっている大人ですから。


色々な可能性があるのが学生時代です。
今のうちに幅広く色々な経験をして、社会に出た時に何とか太刀打ちできる力がつけばいいと思うんですよね。

授業だったら、1回授業をサボっても、テストを頑張れば挽回できて単位がとれたりするんですが、会社に勤める社会人だったらサボるというわけにいかないですからね。失敗してもまたやり直すということが学生のうちはできますから、今のうちに失敗を経験しておくといいと思います。



また、スキーは昔から色々なところでやってきたので、その中で得たことは学生に伝えたいと思っています。本学のスキー実習では、菅平高原スノーリゾート(長野県)や赤倉温泉スキー場(新潟県)に行きます。学部専門科目のスキー実習は、今年もバス3台で90人以上が参加します。スキーが全くできない学生も結構います。それを10人の先生で面倒見るんです。


授業で行くので缶詰状態なわけですが、今はスキーだけの為に山に行く人は少ないので、逆にできるだけこういう経験をさせたほうがいいと思っています。

「できないことができるようになる」、そういうきっかけを、スキーを通して伝えたいですね。



■ 先生のお薦め本 


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『オリンピックの身代金』 奥田 英朗  角川書店



先生は、推薦理由として、こんなお話をして下さいました。


「この本は、東京オリンピックを舞台にした小説で、随分前に友人に進められて読みました。ちょうどその頃、私は小説の舞台となった地のすぐ側に住んでいたので、当時の原風景が浮かんでくるような感覚で読んでいました。


この作品が、3年前にフジテレビでドラマ化されたので、学生にも「観ろ」と宣伝しました(笑)


なぜ薦めるかというと、この作品は、1964年オリンピック当時の警察資料などを参考に、経済的に発展し始める日本で、発展の裏側にある東京と地方の経済格差・健康格差が描かれていて、それが今度の2020年東京オリンピックとよく似た構図・流れになっていると思うからです。


これを読むと、今まさに2020年オリンピックで問題視されていることと全く同じようなことが過去に起こっており、繰り返されているのだとわかるんです。


主人公は、秋田出身で、東京の繁栄と地方の衰退の格差に矛盾を感じてテロリストになります。この物語の様にテロとまでは行かなくとも、東北の方でオリンピックに反対されている方々はいますよね。「東北を見捨てて東京に何兆円と投じてオリンピックを行うのか!」と。


震災のあった当時は、私も関東に住んでいましたので、家が被害にあったり、勤め先で倒壊した部分があって、復旧に何年かかかりました。


名古屋に来てみると、あれほど大きな地震があったことがウソのようですけれど・・・。逆に関東にいると、阪神・淡路大震災の実感があまり無いんですよね。ちょっと距離が離れると、実感が無い。ですが、今でも福島以北へいくと、震災当時のままという場所がまだ随分あるんです。


また、今、いじめも問題になっていますが、どこへ行っても新しい共同体内で差別化・序列化があるし、てんでばらばらに逃げて、住み慣れた故郷に戻りたくとも戻れない人が沢山いる。そんな中で、ウソをついて何兆円ものお金を動かしている人がいる。その格差というか、社会の抱える問題は、1964年のオリンピックの頃と全く変わらない。


過去に学べば、同じ轍を踏まなくて済むはずなのに、残念ながら全く同じことが繰り返されている。


ドラマの放送があった後、主人公役の竹野内豊さんの特集記事があって、その中で彼は『このドラマで演じてみて、考えさせられた』と仰っていましたね。ちょっと長いですか、じっくり読むと深みのある話です。」


本書(『オリンピックの身代金』)は名古屋学院大学の図書館にも所蔵されていますので、興味を持った方は、是非手に取って見て下さいね!


 今日の一枚 


今日の1枚は、 " 先生の宝もの " です!



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スキー指導者であるハンネス・シュナイダー氏の1930年来日が、日本でスキーが普及する発端となりました。


スキーがお好きな野村先生にとっては、2つとない宝物ですね!


名古屋学院大学がスキー実習でお世話になる菅平高原スノーリゾートは、氏の雪上セミナーの開催地の一つでした。今でも、「シュナイダーゲレンデ」「ハンネスコース」など、その名に当時の記憶が残り、記念碑も設置されています。NGU生も実習中に立ち寄るのだとか。





野村先生は、2016年オリンピック招致活動の際に、前任校で尽力された方でもあります。ここでは割愛しましたが、実はオリンピックの裏話などもお話しくださいました。オリンピックやスキー、テニス、学校保健に興味のある人は、是非研究室の扉をたたいてみて下さい。きっと面白いお話が聞けますよ!


次回の★Bridge★も、お楽しみに!


チョッパー子

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