教育学習センター: 2018年4月アーカイブ
学生と先生を繋ぐ連続企画★Bridge★、今回の先生は・・・
商学部学部 川﨑 めぐみ(かわさき めぐみ)先生です。
川﨑先生は、2018年4月現在「日本語表現」「日本語表現上級」などの科目を担当されています。
それでは、先生の思いをご紹介★
■■■ どんな思いをもって、授業(ゼミ)に臨んでいらっしゃいますか? ■■■
■自分の授業から得て欲しいことは?
言葉の学問は、実学と基礎研究の中間なんですよね。
実際のコミュニケーションに必要な"ツールとしての言葉"と、
ある言語の文法がどのような組み立てになっているか考える"基礎研究としての言葉"があって。
そもそも「日本語表現」という科目自体が、レポート作成や卒業論文作成といった大学生活に
必要な日本語や、今後の社会生活で必要になる日本語の表現方法を学んでいく授業ですので、
実学的な側面に焦点を当てることが多くなりますけれど、言語の面白さって、そこじゃない(笑)
文法と聞くと、「難しい」と思うかもしれませんが、実際にはパズルというか、
法則性を解き明かしていく過程が面白いんですよね。
特に、私の専門は"擬音語・擬態語"っていう未開拓分野なので、
未知の法則が明らかになっていくのは、本当に面白いんです。
言葉の組み立て方を学ぶことは、実生活には役に立たないかもしれませんが、
論理の基礎にもなります。
言葉は論理そのものですし、言葉そのものの仕組にも目を向けてほしいと思っています。
「文法は嫌だ。」って毛嫌いしないで、面白いと感じてもらえるようにしたいな、と
思っています。
■先生が、言葉の面白さに気づいたきっかけは?
学生時代に、方言の研究で卒業論文を書こうと思ったんです。
「どんな素材がいいかな?」と考えた時に、私の母親が変な言葉を使うと気づいて。
母は、やたら擬音語・擬態語を使うんです。
これを研究したら面白いんじゃないかと思ったんです。
いざ研究を始めてみると、方言の擬音語・擬態語はほとんど知られていなくて。
そんなきっかけで擬音語・擬態語という未開拓分野に分け入っていくことになりました。
それから、未知のモノに突入していく面白さに目覚めたというか(笑)
一方で、言葉の仕組みの面白さに気づいたのは、授業で使われた文法本がきっかけでした。
文法を詰め込むのではなく、自分で文法を発見するスタイルのテキストだったんです。
学校文法を当てはめていけば大体は説明できるけれども、それだけでは矛盾が生じる例を
扱って、その矛盾部分の文法にも説明がつく理論を考えていく、といった授業でした。
その法則性を見つけるのが、ものすごく面白かったんですよね。
音声学の授業も面白かったですね。
この音とこの音に挟まれた時に、真ん中の音が変化する、とか。
いくつかのパターンや法則をみつけて、その法則を最もシンプルに表すように記述をせよ、
といった問題が出るんですが、シンプルに、美しく説明できたときの快感といったら(笑)
数学の解き方に似ているかもしれませんね。
そんなキッカケがあって、言葉にのめり込んでいったんです。
■授業では、言葉の面白さに気づくような工夫をされているのですか?
それがなかなか難しくて。
2018年度は、なるべく学生が自ら考える形式のものにしようと考えています。
私の授業を履修している学生が「日本語表現の授業って、英語みたいだ。」と
言っていました。「国語の授業っぽくない。」と(笑)
高校までは、授業中に与えられたものを読み解くだけ、ということが多かったと思います。
県によっては、高校入試に国語文法が出題されないところがあるんです。
そうなると、まず中学の授業で文法はやらない。
読解のみで、しかも先生が黒板に書いたことを丸暗記すればテストの点が取れる。
「国語は暗記だ!」なんて仰る先生もいるくらいです。
そうなると、後々困るのは誰かというと、学生なんですよね。
大学までに学んでおくべき内容を補える授業になっていますが、できれば、
言葉の面白さを発見していける授業にできたらいいと思っています。
■授業は、どんな風に進めていますか?
今は、テキストに沿っての問題演習が中心です。
授業中に問題を解いて、基本的に全員に当てます。
前回当てなかった学生は今回優先的に当てる、という具合です。
作文は、2018年度は漢検協会が実施している文章検(文章読解・作成能力検定)の書き方、
考え方を取り入れて行っていく予定です。
大学では、トップダウン式ではなく、学生がお互いに添削しあうようなものがいいと
考えています。
隣の人のリアルな作文が見られることで、お互いに高め合えるんじゃないかと。
そのほうが気づきが多いだろうと思って、テキストを作っている最中です。
■川﨑ゼミはどんなゼミですか?
私のゼミは、言葉に関するものであれば、どんなテーマで研究してもいいということに
しています。
2018年度のゼミ生はコミュニケーション能力に興味のある学生が多いので、コミュニケーションに
焦点をあてて進めていこうと考えています。
例えば、店舗でのコミュニケーション...お客さんと店員の会話や店員同士の会話において、
言葉遣いがどう違うのか、とか。
先行研究はありますが数は多くないので、色々な事例を集めて「こうなっている」と理論的に
説明できれば、一つの成果になりますね。
それと、コミュニケーションが苦手な人が、どんなところに苦手意識を持っているのか明らかに
していけるといいと思っています。
どこにつまづいているのか、コミュニケーションの得意な人と苦手な人の会話はそれぞれどんな
特徴があるのか、言葉の使い方・タイミングはどう違うのか、といったことを観察できると面白い
ですね。
また、内省力を磨けるようにしたいですね。
内省力...自分のことを振り返るって、就職活動でも大切ですからね。
内省力の有無は、案外頭の回転の良さに直結してるように感じます。
自己評価が低い学生が多いので、まずは自己評価を上げてほしいですね。
私自身は、「ゼミ」に所属したことがないんです。
私が学んだ大学では、「研究室」という巨大な組織があって、留学生を含めて100人近くが所属
していました。
内容としては演習に近くて、毎週2・3人ずつ自分のテーマについて報告し合っていました。
学部生時代はほとんど訓練でしたね。
例えば、崩し文字を普通の文字になおして、その中から1つ言葉を決めて、
平安初期から現在までの辞書類や文学作品に使われている例を全て拾っていくっていう
訓練もしていました。
■今学生であるNGU生に伝えるとしたらどんなこと?
「考えろ」かな(笑)
ゆっくり時間を取って考えることができるのは、大学の時だけです。
「色々な物事に対して、じっくり、深く考えなさい。」と伝えたい。
授業の中に、様々な気づきが、絶対にあるはずなんです。
先生は、90分間ずっと話しているでしょう?
あれを文字にすると、とんでもない量になるんですよ。
「あーつまんないなー。」じゃなくて「何かないかな?」と、
普段から探求して考えるようにしてほしいし、そうでないと授業ってつまらないですよね。
最近思うのは、じっくり、深く、色々と発展させて考えているときは、
欲しい情報が向こうからやってくるということです。
たまたま手に取った本に、本当に必要な情報が書いてあることがある。
"セレンディピティ"って、聞いたことがあるでしょうか?
"偶然の幸運"と訳されるんですが、セレンディピティのやってくる確率が本当に上がるんですよね。
ですから、普段から興味を持って、自分の好きなことを突き詰めてもらいたいです。
あと、「授業で先生たちが使っている『カッコ良さげな言葉』は、どんどん使っていこう!」
変な使い方をしても許されるのは、大学生だけだから(笑)
大学は色々試してみる場ですし、知的な言葉のやりとりができる仲間がいますからね。
使うことによって使い方が身についていきますし。
先生から仕入れた、普段使わないような言葉を使ってみるといいと思います(笑)
■■■ 今日のお薦め本 ■■■
「日本語の科学が世界を変える」
松尾 義之 著/筑摩選書
「英語、英語」ともてはやされますけれど、日本語によって生まれる気づきがあります。
英語にはない発想によって、ノーベル物理学賞を受賞した京都大学の増川先生のお話です。
授賞式では、挨拶の初めに言った"I'm sorry, I cannot speak English."以外は、
全て日本語で喋ったそうです。
グローバル化の中で、そういう多様性ともいえる部分は無視されがちだけれど、
日本語にも目を向けてほしいなと思い、その意味でこの本を選びました。
日本語には漢字があって、その漢字の組み合わせで新しい概念を作ることができますよね。
そのおかげで、日本語だからこその気づき・概念があるんです。
日本語の文法は、室町時代から、俳句や歌の作り方といった視点から言葉の使い方が研究され
始めました。
"国学"とか"本居宣長"とか聞いたことありませんか?
その流れを汲んでいるのが私たち国語学の研究者です。
日本語学ではなくて、国語学という流れだったんですね。
もちろん英語、外国語にも同じことが言えて、英語には英語独特の発想があり、
言語学として研究発展してきました。
今、ちょうどそれが融合しつつあるというか、お互いに気づきを与えているんです。
世界では、日本語で書かれた論文は読まれないかもしれませんが、
日本語で書かれた研究の蓄積はものすごい分量なんです。
それを全部英訳したら、世界に対するインパクトはものすごいことになるはずなんですよね。
どちらか一方ではなく両方必要なんです。
韓国の釜山で日本語を教えていたことがありますが、韓国では、英語あるいは日本語を介してでないと、
なかなか研究ができないという分野もありました。
マレーシアなど東南アジアでは、「学問の言葉=英語」というような風潮があります。
研究に日本語はいらないという風潮になってきていますが、
普段から使っている言葉は心の底からにじみ出てきたものですから、大きな気づきになりやすい。
身近な言葉で研究できるということには、とんでもないメリットがあるんです。
ですから、「漢字、めんどくさい!」って思わないで、身近な物の価値に気づいてほしいです。
■■■ 今日の一枚 ■■■
今回は、" 猫グッズ "のご紹介です!
コミカル猫スタンプ&招き猫↑
先生は、猫がお好きなのだそうです。
よく見ると、先生の研究室は"にゃんだらけ"。
授業で使うプリントにも、このスタンプを使うことがあるそうです。
猫たちが、先生の忙しい日々を癒してくれているのですね!
身近でありながら、謎の多い"言語"という迷宮に興味がある!そして、猫に目が無い!という学生のみなさん。
素敵な笑顔の川﨑先生が、未知の世界へと優しく案内してくださるかも。
是非、先生の研究室の扉を叩いてみてください!
次回の★Bridge★も、お楽しみに!
チョッパー子