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瀬戸地域版の「地(知)の拠点整備事業」キックオフ・フォーラム

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 2014年2月8日(土),午後1時半~4時半で,瀬戸地域版の「地(知)の拠点整備事業」キックオフ・フォーラムを瀬戸市「瀬戸蔵」4階多目的ホールで開催しました。当日は,太平洋岸で40年ぶりとか70年ぶりとかいう積雪量を記録した大荒れの空模様でした。開会を待つ控室から窓の外を見ると,あたりは横殴りの吹雪。
 「こんな悪天候では,参加予定の人たちも,今日はお休み,となるだろうな」。空席だらけの会場では,講演者・パネリストに申し訳ないなぁ。ところが,会場となる多目的ホールを覗くと,開会時間前にほぼ満席。嬉しい誤算でした。100名を越える熱心な参加者を得てキックオフ・フォーラムが始まりました。

フォーラムの様子
 開会の挨拶は,急遽,参加となった増岡・瀬戸市長にもして頂きました。本学と若い学生たちの力に期待している,とのお言葉を頂戴しました。
 第一部の基調講演は,今回も東海テレビ・アナウンサーの高井一(はじめ)さんにお願いしました。演題は「地域の宝をまちづくりに生かす」。名古屋キャンパスでの講演(1月11日)後に,事前取材のために自ら瀬戸を歩き,この講演に臨んだそうです。確かに新たな映像が加わり,パワーポイントの画面も進化していました。名実ともに「地域の宝さがし」のプロです。これからは,高井さんを「リージョナル・トレジャー・ハンター」と呼ぶことにしましょう。
 第二部のパネルディスカッションでは,「地域の現状とまちづくりの課題」,「瀬戸市のまちの宝とは」といったテーマで討論が行われました。司会は曽我良成教授,パネリストは次の方々です。
    山田真司さん (瀬戸市交流活力部部長)
    水野教雄さん (陶芸作家)
    鈴木政成さん (中外陶園代表取締役,瀬戸まるっとミュージアム観光協会会長)
    後藤昭子さん (瀬戸市市民活動センター)
    木船久雄   
 山田さんからは,行政の立場から瀬戸市が目指す「自立し助けあって市民が力を発揮している社会」への取組みとともに,「お雛めぐり」「陶祖800年祭」「ハイキングツアー」など観光事業の一端を紹介して頂きました。
 鈴木さんからは,観光協会会長の立場から,まるっとミュージアムのほか,「招き猫祭り」「瀬戸アトリエ参道」「瀬戸めし広場」など各種イベントの説明に加えて,「他所者の力」必要としているという発言を頂きました。
 陶芸作家の水野さんからは,仲洞町にある「窯垣の小径」が観光拠点になった経緯や,まち興しの「できることは何でも村の住民でやる」精神の話を伺いました。
 後藤さんからは,市民活動の現状を紹介して頂きました。人口13万人の瀬戸市に,登録市民グループが221団体,1万人以上が参加しているそうです。活発な市民活動は,2005年の愛知万博のソフト面での遺産とも言えるようです。
 フロアに居た高井さんから「瀬戸の宝である瀬戸物を生かすには,もっと使い手の視点にたった工夫や仕掛けが必要ではないか」との意見が出され,しばし瀬戸物や観光振興に関する論議に花が咲きました。
 予定時間を30分以上も延長して,パネルディスカッションは終了しました。
 閉会の辞は,本学理事長の稲垣隆司が行いました。主催者を代表して,今回のフォーラムへの登壇者および参加者へのお礼とともに行政や住民の方々へ今後のご支援をお願いしました。

懇親会で―瀬戸物の今―
 夕方5時過ぎから,フォーラム登壇者への慰労を兼ねて懇親会を行いしました。そこで,たまたま私の右隣に座った鈴木さんから瀬戸物産業の現状について大変興味深いお話を伺いました。少し淋しい気もしますが,冷徹な現実を知らされた思いです。
 それは,日本の陶磁器産業に留まらず,世界の有名陶磁器企業も惨憺たる状況にある,今や,多くの企業が経営不振で金融資本の軍門に下っている,ということです。あのウェッジウッドもロイヤルドルトンも,ロイヤルコペンハーゲンさえも・・・。かつて,こうした欧州の王室御用達ブランドの食器類は,結婚し真新しい食器棚を据えた時,そこに飾り皿として並べておきたい品々でした。実際,我が家でも幾つかの絵皿やコーヒーカップを買い揃え,未使用のまま食器棚の絵になっています。
 調べてみると,ウェッジウッドは2009年に経営破綻し,ロイヤルドルトンやウォーターフッド・クリスタルとともにWWRD持株会社の傘下に入っています。このWWRD持株会社の親会社はKPSキャピタルパートナーズという投資会社です。また,ロイヤルコペンハーゲンは,金融持株会社のRoyal Scandinavia社に買収され,Royal Scandinavia社の筆頭株主(51%)は投資会社のAxel社です。一流有名ブランドたりとて,企業が生き延び続けることは大変なことなのだ,と改めて知らされました。
 鈴木さんの解説では,後発とはいえ日本が先進諸国に仲間入りした頃,日本人は所得増加に合わせて高級陶磁器を買い揃えてきた。ところが,現在の新興国の人達はそういう嗜好にない。だから,一流ブランドを持つ陶磁器会社も商売環境は厳しい。身売りを繰り返しながらブランドを継いでいくことになる,というのです。
 しかし,考えてみると,こうした現象は何も陶磁器産業に限ったことではないように思います。イブサンローランやカルティエ,ルイヴィトンといった有名ブランドが次々と買収対象にされてきたファッション業界。モノづくりの製造業でも似た話はたくさんあります。パナソニックに吸収される家電メーカーのサンヨー。自動車業界では,世界大で資本提携や共同開発・生産などが進められてきました。金融業界だってそうです。日本の都市銀行で,私が子供の頃と同じ名前を使っている銀行は今や一つもありません。
 企業経営には,社会の変化に合わせた迅速な対応が不可欠で,変わることを恐れてはいけない。変化し続けること,それが持続可能な組織や経営なのだろうな,と考えさせられた次第です。
 夜8時過ぎ,懇親会はお開き。既に吹雪は収まっていましたが,歩道には雪が残っています。転ばないよう,気を付けて帰ろう。

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