名古屋学院大学  教育学習センターで「赤楚」と一致するもの

 

今回は、以前Bridgeでご紹介した赤楚先生の、「英語学講義1」の

授業にお邪魔してきました!


さっそく、どんな授業だったかのぞき見してみましょう★

 



「英語学講義1」前半授業風景


講義の前半は、黒板を使っての英作文です。

学生さんは、先生に当てられた問題の解答を、前の黒板に書きに行きます。


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学生さん達の解答が出そろうと、赤楚先生は、1つ1つに訂正・解説を加えていきます。

英作文の解説だけでなく、「文章の中で出てきた地名がアメリカのどの辺りにあるのか」といったプラスアルファの知識も盛り込まれていて、とてもわかりやすいです。


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    「いつも言うてるけど、これしか答えが無い、というわけやないで。

     ここにある答えが唯一の答えやないからな。

     他の表現であってもかまわないし、自分の書いた文章で、

     『これでもええんちゃうか?』っていうやつは、言えよー。」


 


先生がこう言うと、学生さんからは、自分の表現が正しいか、質問が出ていました。


このように聞いてもらえると、自分が考えている文章が正しかったか、ちゃんと確認できますね。不安を残すことなく、すっきり後半に進めそうです。


 


「英語学講義1」後半授業風景




「それじゃあ、後半のシンタックス (syntax:統語論)に入っていくぜー。」



さて、授業の後半では、いよいよネイティブの脳内文法研究の歴史を追体験していきますよ!


 


まず最初に、先週までの内容の簡単な復習です。

詳しい内容は割愛させていただきますが、先週までの内容では、ネイティブの脳内には、文法的な文を作り出すボックス(SYNTAX)があり、単語ボックス(Lexicon)と協力し文を作っていること、


SYNTAX.jpg


さらに,


その文には、語順に関するルール(Phrase Structure Rules)が有り、このルールにしたがって、文が作り上げられていること、そのルールだけでは説明できない構文があることまで勉強しました。


                         ※ここでは特別に解説をつけます。

PRS.jpg

 

文法用語.jpg











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      「先週言ったけれども、日曜日辺りに、ノートを見直したか?

       見直してなかったら、1週間丸々頭の中が消えてるから、

       しっかり思い出さなあかんで。

       先週のノートしっかり見てな。

       では、今から言うフレーズの樹形図を書いて、

       どのPhrase Structure Rulesが使われているか考えてみて。」




履修者は、樹形図を書く練習問題を解きます。

問題に当たった学生さんは、黒板に答えを板書し、先生が全員にむけて解説をします。

前半の文法問題と同じ形式ですね。

 



さて、せっかくなので、ここからはみなさんも一緒に考えてみましょう!


 


(問)代名詞は、文の内外の先行詞を指し示すことができますが、以下の4つ文のうち、

ネイティブには代名詞=Tomと解釈できない英文が1つだけあります。

それは、どの英文でしょうか?



① Tom loves his mom.

② Tom's mom loves him.

③ He loves Tom's mom.

④  His mom loves Tom.



答えは決まったでしょうか?

授業では、どの文だと思うか、履修者に挙手で意見を聞いていました。




答えは、③です。




でも、なぜこの文の代名詞"He"="Tom"と解釈できないのでしょうか?

この問題を考えるために、Phrase Structure Rulesを使い、

樹形図を書いてみます。


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皆、作成できました。



さあ、ここから先は、今日新しく習う内容です。

研究が進んだ結果、新しく次の脳内ルールがあることが発見されました。



どんなルールかというと・・・




代名詞は、先行詞をC-commandしてはいけない


 


???

初めてこの授業を聴講したチョッパー子は、反射的に「難しそうだ、分からないかも」と思ってしまいましたが、そこに飛び込んできたのが、先生の言葉です。


 


      「難しいことやってるんと違うで。

       丁寧にやっていったら、誰でもできる。

      『難しそうなことをやっているから、もうやめとこう』

       と思って自分の頭を働かせることを止めたらダメだぜ。」


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自ら考えること。

考えることから逃げないこと。


Bridge★ の中でも、赤楚先生は、授業をするときに、このことを常に念頭に置いていると仰っていましたね。この授業でも、先生は、言葉を替え表現を替え、何度も話に織り交ぜて学生さんに伝えていました。


 


というわけで、難しそうではありますが、ここは我慢して、続きを見てみましょう!


 


まず、C-comandC統御)とは、何でしょうか。

樹形図を想像して下さい。


C.jpg



枝分かれしていく品詞のうち、図のCに注目して下さい。


Cは、1つ目の角より下にあたるDEC統御することができますが、上にあるAB C統御することができません。


このルールを、C-commandと呼びます。


 


ここで、先ほどの脳内ルールをもう一度見てみましょう。

「代名詞は、先行詞をC-commandしてはいけない」

これを、先ほどの4つの文に当てはめてみましょう。

授業では、当たった学生さんが、黒板に樹形図を書いて、先生に添削を受けていました。


1'.jpg


"his"からさかのぼって1つ目の角の下に、"Tom"はありません。

これはOKそうです。


2'.jpg


これも、"him"から逆のぼって1つ目の角の下に、"Tom's"はありません。


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おや?こちらは、"He"から逆のぼって1つ目の角の下に、"Tom's"がきてしまっていますね。代名詞が先行詞をC-commandしてしまっています。

ネイティブ脳内ルールでNGが出るパターンにあたります。

このせいで、③の代名詞は、Tomを指すと解釈できないのですね。



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こちらは、"His"から逆のぼって1つ目の角の下には、"Tom"はありません。


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この「代名詞は、先行詞をC-commandしてはいけない」という脳内ルールの発見に、30年という歳月が費やされたそうです。


 


さあ、今日の授業では、ネイティブの脳内では、Phrase Structure Rulesのような線形の考え方だけでなく、階層的な情報を頭の中で扱っているのではないか、脳の中では階層に係わる情報を利用しているのではないか、ということが分かりはじめたところまで研究の追体験が進みました。


どの言語が母語であっても、誰から教えられることなく、私たちは、こういった脳内ルールを持っているのだそうです。こうしたことが、研究の結果、1つずつ発見されていったのですね。


 


来週は、どのように研究が発展するでしょうか。



赤楚先生が仰っていたように、来週までにノートを見直して、今日の内容を忘れないようにしないといけませんね。


 



高校までの勉強と違い、大学では、自らテーマを決めて研究することが求められます。


文系の研究の追体験がしてみたい学生さんは、是非、赤楚先生の「英語学講義1」を履修してみてくださいね!


 


     


チョッパー子

























★Bridge★No.19 赤楚 治之 先生

|

学生さんと先生を繋ぐ連続企画★Bridge★、今回の先生は・・・

 


外国語学部 赤楚 治之 先生です。

 


先生は、2015年現在、学生部長であるとともに、「英語学概論1」

「英語学講義1」などの科目を担当されています。


それでは、先生の思いをご紹介★

赤楚先生の素敵な大阪弁を想像しながら読んでいただけると嬉しいです!

 

 どんな思いをもって、授業(ゼミ)に臨まれていますか? 


「大学生は頭を鍛える」―― 高校までの暗記中心の勉強やなくて、

「クリエイティブ」になるということやねん。

そう言うたらちょっと大げさなイメージを持つかもしれへんけれど、

要は "自分でものを考えていく力" を身に付けること――

これが、僕がゼミも含めた全ての授業で念頭においていることやねん。


よう授業でも言うんやけど、「人間」って、その誕生から長い時間かけて、

「知」を広げて文明や文化を築いてきたやん。


たとえば、「火」

火は、最初は神が創るもので、はじめの人間たちはどないして火(火事)

が起きるかなんかわかれへんかった。つまり、当時の人間の「知」をこう

表すと(下図)、「火」「知」の外にあったちゅうことやろ。


知と未知.JPGでも、今じゃ、「火」についての知識は十分わかってて、人間は自由に「火」

作ることができるようになってるやん。

それは、「知」の領域を広げていく中で、「火」はこの「知」の中に入って

いったわけやな。


そんな「知」の広がりの積み重ねが、科学の進展とか、人間の理解の進展

になってきたわけやねん。


広がる知.JPG

この「知」の部分はいままでかなり広範囲に広がってきたんやけど、それでも

やっぱりその外側の部分(=未知の領域)って、21世紀の今になっても

存在してるんや。

高校までは、分かっていること (つまり、「知」の領域) を学ぶ"勉強" 

やってきたわけやけど、大学生にとって大事なことは、そういった未知の部分

に足を踏み出すことやねん。


それは「勉強」やなくて、"研究" と呼ばれる行為やねん。

 


今ここでは、学問的な側面で話をしたけど、これは学問の世界だけの話やないで。

日常生活でも、会社に入っても、どんな局面においても、

人生って未知のいろいろな問題に出会っていくやろ。

そんな時に大事なんは、自分の頭で解決策を探っていくちゅーことやねん。

大学の時に、その大切さを学んでほしいなって、いつも思ってるんや。



何でも、「枠からはみ出して、新しいものを作っていくぜ!」っていう、

心をもっている若者って、見てて気持ちええやんか

未知の部分に飛び込んで、「面白い」ことにチャレンジする、そんな力が

「若さ」やん。


そんな学生を育てたいというか、成長の"きっかけ"を与えることが、

教師としての僕が目指していることやねん。

(せやから教師って職業は面白いねん。)

 

言い方換えたら、夢をもってほしいちゅーことや。

夢ができたら、どうしたらその夢リアライズ(現実化)できるか とか、

今の自分の力がココやったら、さらに高みに行くにはどうしたらいいんや、

そんなこと考えるやろ、頭働かせんとあかんやろ。


せやから、学生には、

大学で夢を見つけて、自分を広げる4年間を送ってもらいたい 

そう思ってんねん。

 

 

 

先生の授業・ゼミのスタイル


毎回の授業は、テクニカルな部分があるんやけど、そのテクニカルな部分

覚えろと言うんやなくて、その元になっている、「未知」の部分に切り

込んで行った視点(「クリエイティビティ」)の大切さというものを、学

生に分かってもらうのを目指してるんや。

 

例えば、「英語学講義1」の授業では、 "僕らの先人は、ヒトの脳内文法

にどのようにメスを入れていったのか"という認知科学の研究の歴史を学生

たちに追体験してもらうねん。


「英語学講義1」は90分の講義科目だけれど、集中力はそんなに長くもて

へんから、二部制に分けて、単調にやらないように工夫してんねん。

前半は、いわゆる和文英作で英語のスキルをあげることを勉強をして、

後半で、講義をやるんや。


講義って言っても、絶対に一方通行にならへんように、学生の反応にいつも

アンテナ張りながら、すすめてるで。


教え込んで学生に問題を解かせる、いわゆる「勉強」の部分もあるんやけど、

それよりも、先人がどのようにしてヒトの言語の解明に迫っていったのか、

とか、なんで今こんなことをやっているのかを全体の流れの中から見失わさん

ようにするのが腕の見せ所やねん。

 

見た目もそやけど、授業に集中させるタイプなんで、イメージがコワイとか

言われんねん(笑) 

せやから、逆に委縮させへんよう気を使ってるで。

若い時は、年齢も近いので、それだけで自然と緊張緩和になるんけど、

年齢が上がってくると、若い学生たちに教えるのはチャレンジングやなって

思うときも正直あるで。

いかに、若い時と同じように、学生たちと接することができるか。

これが僕の課題やな。

 

ゼミの時間も同じで、自分の頭で考えて、問題に切り込んでいくことが

できたら、僕のゼミでは合格や。

その為には、自分のエネルギーを注ぐものをしっかりと分かっとかなあかんよね。

嫌々卒業論文を書かなあかんと思ったら、頭働けへんし。

"好きこそものの上手なれ"で、自分が「コレやってみたい!」と思えるものが

見つかったら、「もっと良いものを出したいな」とか、「一度こうしてやって

みようかな」とか、頭が働くやろ。


学生はみんなひとりひとり、色々な考えを持ってるし、自分の関心のあること

や好きなことやったら、やっぱり一生懸命、いわゆる「勉強」できるんや。

そうして勉強すると、「ここまでは分かってる」「ここからは分かってない」

っていうことが自分でもわかってくるから、そこから未知の領域に踏み込んで

いくことができるねん。

「こういう問題がある、この問題を解くには、こうやったらええんちゃうか」

って、とりあえず自分でやってみるねん。うまくいく場合もあるし、あかん

場合もあるよ。

そういった試行錯誤をしながら頭のシナプス、ネットワークを広げていくんや

そのようなやり方って大学生にとってはめちゃ重要なことなんや


学生によって到達レベルは違うんやけども、みんなをその段階にもっていく

っていうのが、僕の目標やねん。

そのためには、問題意識を持ちながら大学生活を送るということやな。

問題意識は、何もアカデミックなことである必要はないんや。

人生のことでも、趣味のことでも、興味あることやったらなんでもかまへんのや。

 


今年で勤めて27年になるけど、やっぱ名古屋学院大学ってホンマに優れた大学や

思てる。

学生は、素直で、打てば響くからな。 

"伸び代"が大きい学生いっぱいおるで。

その伸び代を無駄にせんように、ちょっとでも動機や刺激を与えて、充実した

4年間を過ごして社会に出てもらうのが、教員の役割や。

しかもここの大学にはそう考えてる先生いっぱいおるもんな。

せやから、学生のみんなも名古屋学院大学を誇りに思ってほしい思ってんねん。

名古屋学院大学出てホンマによかったって言ってくれる卒業生たくさん見てきた

けど、みんなにもそう感じてほしいんや。


最後に一言。


みんなひとりひとりが誰にも負けへん宝もの持ってるんや。

あきらめたらあかんで。

夢、見つけや。

 

■ 先生のお薦め本 

 

     赤楚先生から学生さんに今、一番お薦めの本は・・・

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     『アメリカ』

     北村 崇郎 著  筑摩書房

著者は、既にお亡くなりになっていますが、本学で教鞭をとっていた北村先生のご著書です。

本学に外国語学部が開設された際、信頼のおける留学先を開拓するために、各地を奔走して

下さったのだそうです。

非常にユニークな先生で、その先生が"アメリカをよく知っている日本人"として書かれたのが

本書なのだとか。

世界の出来事や歴史、これから留学を考えている学生さんには、この本を是非にとのことで、

お薦めいただきました。


絶版になっている本ですが、本学の大学図書館にありますので、是非手にとってみて下さいね。

 

 今日の一枚 


         今日の一枚は "先生の宝物"!

IMG_8495.jpg

   『Hey!Say! JUMP の4/ 29発売の新曲シングル(サイン入り)』

このアルバムの中の「我 I Need You」という曲、なんと先生の甥っ子さんが

作詞作曲・編曲されているそうです。

よーく見てください、(甥っ子さんの)サイン入りなのですよ★

先生のお話にあったような、自分の夢を持って行動している方のお1人ですね。


※  ※  ※


自分の世界を広げたい学生さんは、是非、先生の研究室を訪ねてみて下さいね。

 

チョッパー子

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