2017年1月アーカイブ

★Bridge★No.32 山下 匡将 先生

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学生と先生を繋ぐ連続企画★Bridge★、今回の先生は・・・


先生お写真.JPG
現代社会学部 山下 匡将(やました まさのぶ)先生です。

先生は、ソーシャルワーク・リサーチや地域福祉が専門分野で、現在は福祉社会についての理論

を学ぶ「福祉社会論」、その実践方法を学ぶ「プロジェクト演習」などの科目を担当されていま

す。

その他にも、地()の拠点整備事業(大学COC事業)として、「熱田区孤立を生まない地域づくり

事業」などのプロジェクトリーダーをされています。

 


それでは先生の思いをご紹介します


 どんな思いをもって、授業(ゼミ)に臨んでいらっしゃいますか? 

僕の専門は社会福祉です。今担当している福祉社会論では、国家が責任を持って人々に福祉を提供するという姿勢から、国だけじゃなくて、地域住民や民間企業なども含めて、みんなで福祉の実現を目指しましょうという姿勢に社会が変容していくなかで、「では、それを実現させるためにはどうしたらいいのか」といった話をしています。

「福祉」という言葉には、「幸せ」という意味があります。その「幸せ」とは何か、どうやって実現していくべきか、みたいなことを考えていきます。「みんなは今、幸せですか?」なんて問いかけたら、怪しい宗教のように聞こえるかもしれませんが...(笑)

私の分野の専門家は、誰かの悩みや困りごとを聞いて、その人が力を発揮できるような環境を整えるといった手法で支援します。例えば、「人の繋がり」を生み出すとか。でも、新たな繋がりをつくることはすごく大変で難しいことなので、すでにある繋がりにまだ繋がっていない人たちをどう繋げるかとか、今まで活用されていなかった社会資源をどう活用するかとか、今ある資源の組み立て方を変えみることで新たな機能が生まれるんじゃないかと、"学生達と一緒に"社会資源の使い方について考えています。

この資源の使い方のお話しは、後半の先生の紹介本の話にも繋がります!)

 

 

 

先生の学生時代を通して

 僕は大学時代、勉強が好きなタイプではなかったですし、講義は一応出てたんですけど、ほとんど記憶になくって・・・(ニヤリ)。

福祉のコースで勉強していましたが、唯一覚えているのは、経済学の先生が毎週講義で「今週の僕のラーメンベスト」っていうのをただただ話していたこと。「1位!ラーメンてつや(店名)!」」みたいなことを言ってましたね。何故、「ラーメンてつや」が1位なのかを経済学の視点から説明してたのかもしれませんけど、全く覚えていません。

でも、僕がそうだったように、(授業に)まず興味を持ってもらうということができたら、万々歳かなと思っています。「最低限これを身につけろ」と言うよりは、ここ(名古屋学院大学)は福祉科もないですから、まず興味を持ってもらうことが第一歩だと考えています。あとは、教科書に書いてあることを単に教えるのであれば(教科書を)読むだけでも学べますが、大学という場では「自分で考える」ことをしてもらいたいので、読めば単純・簡単なことでも一回考えてもらうことをしてますね。

講義では、指名はしないけど、必ず意見を聞きます。さっきの授業も、ずーーっと「○○についてどう思う?」と聞いてました。沈黙が続きますけどね(苦笑)。学生から答え(考え)が出なかったら先に進まないんです。

 

チョッパー子:えっ!沈黙ですか!

 

はい。でも、その長い沈黙が続いた後、ポロポロっと答えが出てくるんですよ。

たぶん、今まで(高校まで)は、当てられないと発言しないとか、できる子や授業の進行の邪魔をしない子が発言するというふうに思っている子もいるんですよね。

僕は、スポーツ健康学部(瀬戸)に所属していたことがあるんです。スポ健の子たちは、質問すると「ハイハイハイハイ!」って、分かってなくても、ネタでも、とりあえず積極的に発言してくるんですよ。例えば、「少子化だけどどうする?」って聞いたら、「ハイハイハイハイ!僕が子どもいっぱい作るんで大丈夫です。10人くらい作るんで大丈夫です!」って言うんですよ。でも発言してくれたのは男子学生なんで、「大丈夫って、産むのは奥さんだろ!」なんて突っ込みながら、それでも「じゃあ、世の中の人が子どもを持たなくなった原因はどこにあるのだろう?」と話が展開していくんです。それで名古屋キャンパスに異動したら、まぁ全然答えが出てこなくって、シーンとしてましたね。「どうしたの?」って聞くと、「自分なんかが発言しても間違えるだけだから。意味ないと思う」みたいな返事があって驚きました。だけど研究って、自分のひらめきとかアイデアとか、最初の時点では真実(真理)かどうかわからないですけど、そのとっかかりとしては思いつきのようなレベルでも良いと思うんで、学生のそういうのを引き出したいというか、尊重できるような、講義であり演習にしたいと思っているんです。

 

チョッパー子:でも、それでも、どうしてもなかなかその一歩が出ない(発言ができない)学生も居ますよね?

 

「そこで一歩を踏み出す」っていうのが、僕が教える福祉の分野で必要なことなんです。福祉の専門職は、「言えない人の代わりに言ってあげる」とか、「出来ない人の代わりに動く」というのが大切な役割の1つなので、もし(福祉を)学んでもらうんだったら、やっぱりそこは、自分の意見が少しでもあるんだったら言うべきだし、分からないんだったら「わかんない」っていう言葉を出してもらいたいと言ってます。

 

チョッパー子:「わかんない」って言葉もなかなか言いづらいですよね。

 

そうなんです。そこを言えるようになってもらいたいって思って、極力、学生から何か言ってもらえるような機会を多めに作っています。それが嫌がられもするんですけどね(笑)。でもそこが、僕の(授業の)特徴かなとは思います。意見を待つ。求めると言うよりは「待つ」という感じです。




福祉は しさ? しさ?

福祉の先生って優しそうに思われがちですけど、実はすごく厳しい人も多いですよ。なんでかって、相手に自分で出来るようになってもらうことが支援の目標。僕らはあくまで支えているだけで、どこかの時点で支援なしにその人が一人でやっていくのが理想じゃないですか。そのためには、その人を引っ張っていくだけじゃだめですし、僕らがずっと居てはだめなんです。突き放すというか、厳しさが自立に必要な場合もありますから。優しさは必要ですが、ただ優しいだけではダメなんです。

 

僕の演習やゼミで言えることは、教員よりも学生優先。常に学生に意見や判断を求めて進めている感じです。問題や課題を前に、何が出来るかをまず学生に考えてもらい、それを形づくっていくという進め方でやってます。例えば地域からの依頼についても、「やるかやらないか」から学生に判断してもらいます。学生が「やる」と決めたなら、「どうやるか」を学生に決めてもらいます。その後、めっちゃ口出しします(笑)。もっとこうした方がいいんじゃないとか、こっちの方が伝わるんじゃないとか、こういう視点が欠けてるみたいなことを散々言います(笑)。でも、その意見を取り入れるかどうかの判断は、学生に任せています。




-◆-◆ ここで先生の過去のおもしろい活動をご紹介します。 ◆-◆-◆


  " カルピス の濃度 気持ち の濃度 "

男女共同参画社会の実現に向けて、行政は様々な取り組みを進めています。その中でも、カップルの間に起こる暴力である「デートDV」の実態について、瀬戸市役所の依頼を受けて、学生達と調査したんです。ただ、調査結果を報告して「はい、終わり」とするのではなく、「自分たちに何かできる事はないか」、「みんなにもデートDV問題に関心を持ってもらいたい」という学生たちの発言をきっかけに、瀬戸市役所との協働でデートDVの防止に向けた取り組みを企画・実施することになったんです。

 

Q:どうやって関心持ってもらおうか?

ただ話しても興味持ってもらえないね。

何か食べ物とかを配って興味持ってもらった方がいいんじゃない。

カルピスは使えないかな?

カルピスの濃い薄いでその人の「デートDV危険度(嫉妬深さ等)」を表現してみよう!

いいね!じゃ、危険度を計るアンケートを作って、それに答えてもらった結果で

その人その人のカルピスを作って飲んでもらおう!

 

例えば・・・

恋人を無視もしないし、過剰な束縛もしないおいしいカルピス

恋人に無関心すぎる →→→水のような薄~いカルピス

恋人に嫉妬深すぎる →→→原液そのままか!?濃~いカルピス

 

瀬戸市で実際に実施して、多くの人に、アンケートの結果を数値として見るだけじゃなく、結果を"飲んでみる"ことで「えっ、俺の嫉妬ってこんなに"濃い"の?」と実感してもらうことができました。今のゼミ生も、カルピスを使った手法とはまた違った啓発資材を開発しています。

 

 

 

 先生のお薦め本 

 域福祉を"デザイン"する先生が考え方のお手本にしている本のご紹介です!

本.JPG

デザインのデザインDESIGN OF DESIGN

岩波書店 原 研哉 著


"当たり前を見直そう"

僕がやっていることは地域福祉になるんですが、中身はデザイン事務所のようなことをやっています。

 

チョッパー子:あら!なんだかオシャレですね~

 

いやいや、おしゃれに聞こえますけど、男ばっかりで「男臭ッ」てなってますけどね(笑)

大学のCOC事業で「まちづくり」に携わっていますが、全国規模のフォーラムに行くとデザイナーの方が講演されていることが多いんです。そして「デザインとは...」を語るんですが、一見、地域福祉や地域貢献とデザインの世界って関係がないように思えますが、違ったんですよね。まず、今まで良しとされたものは何なのかを網羅して、そこに共通項を見出すことでそれをまず軸にするみたいな。

それで「福祉とデザインは似てるな」って思って、デザインに興味がわいて、本をいろいろ探したんです。

 

例えば、この本が言うのは、 "リ・デザイン-再構築-"ですね。すでに完璧にデザインされたと思われるものを、もう一回デザインし直してみる。今ある常識的なものを見直してみるといった項目があって、その一例にトイレットペーパーのデザインが挙げられています。

トイレットペーパーの芯って丸い(円柱)ですよね。それをリ・デザインしてみたら、四角い芯(四角柱)のトイレットペーパーができあがったんです。芯が四角だと、より多くのトイレットペーパーを段ボールに詰め込むことができるようになって、使用する段ボールの削減につながるだけでなく、使用する際に「引っ掛かり」を感じるようになって、トイレットペーパーの使用量の削減につながって、「エコ」という機能が備わっちゃったんです。

 

当たり前の概念から離れてみること、ゼロからイチつくるよりは、今までイチだと思われてなかったところを拾って、新たなイチをつくるみたいなところ。福祉もそうなんですよね。

社会のシステムがうまく機能してないな、じゃ、こっちをこれと繋げたらうまく機能するんじゃないかな、っていう風に今ある物を組み立て直すような視点をもっているので。だから、パズルのピースとなる資源は決まっていて、問題はそれをどう組み立てるかだけなので、それをゼロからどういう社会がいいか資源を創造するところからやれと言われたら無理だけど、今ある資源や使われていない資源を見つけて「こんな使い方があるんじゃないですか?」といった提案をしています。この本の考え方を参考にして。

最初に「福祉は幸せ」って言ったけど、みんなの幸せが実現できるように環境やシステムをリ・デザインしようとしていると捉えてもらえれば、わかりやすいかなって思います。


 


 今日の一枚 

今日の1枚は、 " 先生のコレクション " です!


フェスやライブのTシャツとタオルたち ~

フェスグッズ.jpg

写真に載っているグッズたちは全て、2016年に参加してGETしたものだそうです!

山下先生はキレッキレのかっこいいダンスもされるんですよ~。(最近はあまり出来ていないそうですが)過去には瀬戸の学生たちと一緒にも大会に出場したそうです。そんな先生は、フェスでもノリノリなんでしょうね、きっと!! 

先生の研究室には、学生たちとダンス大会に出場した時の写真も飾られていましたよ。

 

 

  お・ま・け

今回の取材時に、山下先生の下で福祉について学び、実践し、活躍している学生にもお話を伺いました。

経済学部 3年 髙木 雅成くん(写真左)

福祉を学び始めたきっかけは?

正直に言えば僕は経済学部だし総合政策学科だから、どっちかって言うと制度とか資本とかの考え方だけど、でも先生に出会っちゃったから。出会っちゃうと、知らない(福祉の)世界のことだし、妙に納得させられる部分があって。今までにない発見があるなと思って。


山下先生のデザイン事務所のような仕事って話にとてもうなずいていましたね?

はい。めっちゃやってます。でも、新しいものが元の形に戻るっていうのもあるんじゃないですかね。弱ってきてたとか、崩れかけてたものを、外から手を差し伸べることで、それが元に戻るという場合もあるし、ワンステップ上がるみたいなこともある。一概には言えないけど、福祉も「今あるものに違う視点でアプローチしていく」って感じです。アプローチして、何かしらいい方向に変化をもたらすということじゃないかなって思ってます。

 

* * * 

 

せっかくなのでお写真撮らせて頂きました。

先生と学生.JPG

 「どんなポーズする?」「これは?」「いやそれダサくね?」先生と学生との会話です。

きっと日ごろからこんな雰囲気であれこれ意見を出し合って、日々地域福祉について考えてくださっているんだろうなとチョッパー子は思いました!



次回の★Bridge★もお楽しみに!


チョッパー子



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